実験医学:どうして自分だけ狙われる?選択的オートファジー〜既成概念を覆す分子機構と生理作用
実験医学 2021年8月号 Vol.39 No.13

どうして自分だけ狙われる?選択的オートファジー

既成概念を覆す分子機構と生理作用

  • 小松雅明/企画
  • 2021年07月20日発行
  • B5判
  • 139ページ
  • ISBN 978-4-7581-2546-8
  • 2,200(本体2,000円+税)
  • 在庫:あり

概論

選択的オートファジー:狙われる理由の解明が進む
Selective autophagy

小松雅明
Masaaki Komatsu:Department of Physiology, Juntendo University School of Medicine(順天堂大学医学部生理学第二講座)

栄養飢餓誘導型のオートファジーは無作為に細胞質成分を分解すると考えられている一方,ある状況下でのオートファジーは特定の分解標的をオートファゴソームが選択的に認識,隔離,分解する.後者は選択的オートファジーとよばれ,特定の可溶性タンパク質,超分子複合体,液-液相分離した液滴,異常・余剰なオルガネラ,病原性細菌を分解することで細胞の恒常性維持に貢献している.つまり,オートファジーはユビキチン-プロテアソーム系と同様にその選択性を介して多様な生命現象を厳密に制御することを意味する.本特集では,急速に解明が進む“選択的”オートファジーのメカニズムを取り上げる.

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キーワード オートファジー,選択的オートファジー,液−液相分,受容体,Atg8ファミリー

 はじめに


オートファジーは,その発見以来,栄養飢餓に応答して著しく誘導される非選択的な自己成分分解システムであり,自己成分を壊してアミノ酸をはじめとした構成要素を供給する真核生物の究極的な生存戦略とみなされてきた.しかし,2005年にユビキチン化タンパク質がオートファジーにより選択的に分解される機構が提唱されると,酵母のCvt経路(オートファジー分子機構を利用した液胞酵素の輸送経路)やミトコンドリア選択的分解(マイトファジー)の分子機構と相まってオートファジーの選択性に注目が集まってきた.選択的オートファジーの理解を容易にするために,まず基本的なオートファゴソーム形成分子について簡単に説明したい(詳細については,参考図書として挙げたような優れた日本語総説が本誌増刊や他誌にあるので参照いただきたい).オートファジーは小胞体近傍で形成される隔離膜が伸長し,細胞質の一部分がオートファゴソームに隔離され,リソソームへの輸送を経て分解されるシステムである.オートファゴソームの形成にかかわるタンパク質は“コアATGタンパク質”とよばれ,6つの機能ユニット(図1),①ULK1タンパク質リン酸化酵素複合体,②ATG9小胞,③ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ複合体Ⅰ(PI3K複合体Ⅰ),④ATG2-WIPI複合体,⑤ATG12-ATG5-ATG16L複合体,⑥ATG8ファミリータンパク質-ホスファチジルエタノールアミン(PE)結合反応系で構成されている.オートファジーが誘導されると,これらの機能ユニットは,オートファゴソーム形成の場に集積し,pre-autophagosomal structure(PAS)を構築する.オートファゴソーム形成の場は,出芽酵母では液胞と小胞体の近傍,哺乳類では小胞体上(特にミトコンドリアとの接触部位)で起こるとされている.この6つの機能ユニットが連続的に作用して隔離膜形成が起こる1).特に,選択性に大きく寄与するのはULK1タンパク質リン酸化酵素複合体のコンポーネントであるAtg11(酵母)・FIP200(高等生物),そしてAtg8ファミリーである(図1).

狙われる理由のメカニズム

❶ カーゴの多様性

前述のように,ある特定の物質(カーゴ)をオートファゴソームが取り囲み,リソソームと融合することによりカーゴのみを分解する過程を,選択的オートファジーとよぶ.カーゴの種類により,アグリファジー(カーゴ:タンパク質凝集体),マイトファジー(ミトコンドリア),ERファジー(小胞体),リソファジー(リソソーム),ヌクレオファジー(核膜),ゼノファジー(細菌自体や細菌を取り囲んだエンドソーム),ペキソファジー(ペルオキシソーム),リポファジー(脂肪滴),グリコファジー(グリコーゲン顆粒)等に分類される.

❷ ユビキチン結合型受容体とカーゴ局在型受容体


通常のオートファジーと選択的オートファジーにおけるオートファゴソーム膜形成の分子機構は共通であると考えられるが,選択的オートファジーではストレスに応じた「各カーゴの標識」や「受容体(あるいはアダプターともよばれる)」により選択性が担保される.「各カーゴの標識」とは,カーゴのユビキチン化や受容体のカーゴへの局在化を意味する.一方,「受容体」は,カーゴとATGタンパク質に結合するタンパク質群を指す.受容体は,カーゴのユビキチン鎖を認識するユビキチン結合型受容体と,分解カーゴ上に直接局在するカーゴ局在型受容体の2つに分けられる2)3)図2A).出芽酵母の選択的オートファジーにおいては主にカーゴ局在型受容体が,高等生物では両タイプの受容体が存在する.

カーゴ局在型受容体による選択的オートファジーは,受容体の発現量や局在により制御される.これはマイトファジーやERファジーのカーゴ局在型受容体に当てはまる(千野・水島の稿).ERファジーのカーゴ局在型受容体は複数存在するが,それらはシート状あるいはチューブ状小胞体への異なる局在や飢餓やERストレスによる異なる発現誘導がある.マイトファジーにもカーゴ局在型受容体は複数存在し,飢餓や低酸素など発現制御の違いがある.

一方,ユビキチン結合型受容体による選択的オートファジーの場合は,ユビキチンリガーゼによる基質のユビキチン化が主要な制御ということになる.最も解析が進んでいるのはParkin- PINK1による脱分極したミトコンドリアのミトコンドリア外膜タンパク質のユビキチン化である(松田の稿).また,リソファジーにおいてはTRIM16,SCFFBXO27,UBE2QL1といった複数のユビキチンリガーゼがリソソームあるいはエンドソーム膜タンパク質をユビキチン化し(中村らの稿),ゼノファジーにおいてはRNF213 29),LUBAC 30)などが直接にバクテリアをユビキチン化することで受容体をリクルートするようである.

❸ 選択的基質の認識は1対1から1対複数へ


この3年間で特に刷新された選択的オートファジーの概念図を,酵母アミノペプチダーゼ1(Ape1)と高等動物p62の選択的オートファジーを例に示す(図3).選択的オートファジーは,特に可溶性タンパク質の分解は隔離膜,オートファゴソーム膜に局在するAtg8ファミリータンパク質と基質との結合による1対1分解と考えられてきた.しかし,オートファゴソームは巨大な細胞小器官であり,このような分解モードではきわめて効率が悪い.そこで,液−液相分離による基質分子の濃縮(液滴化)は効率的な選択分解を可能とする.現在までに,Ape1複合体4),Ede1-dependent endocytic protein deposit(END)5),P-顆粒6),ストレス顆粒7),p62顆粒8)といった液滴が,選択的にオートファジーにより分解されることが判明している.さらに,液相分離したカーゴ表面への受容体の繋留4),液滴の適切な液体度(ゲル化度)6),液相分離したカーゴと隔離膜との間のウェッティング効果9)が選択的分解に必要であることがわかってきた(能代・野田の稿).また,ERファジー関連受容体の小胞体局所における高次会合体形成が,小胞体断片化,それに引き続く分解に寄与するモデルが報告されている10)11)千野・水島の稿).

❹ 隔離膜がカーゴ上で形成されるメカニズム

これまでオートファゴソームがカーゴを特異的に取り囲む決定的な要因は,受容体とAtg8ファミリータンパク質との結合と考えられてきた12).しかし,酵母の選択的オートファジーの場合,受容体はAtg8のみならずAtg11(高等動物のFIP200に相当)とも結合する(中戸川の稿).このAtg11の機能によりカーゴに限局したAtgタンパク質の繋留,オートファゴソーム形成が可能となると考えられる.一方,代表的なユビキチン結合型受容体であるp62,NBR1,Tax1BP1,NDP52,Optineurin(コアユビキチン結合型受容体)はULK1タンパク質リン酸化酵素複合体のコンポーネントであるFIP200 13)〜16)と,OptineurinはATG9とも結合する17)松田の稿,千野・水島の稿).ER-phagyのカーゴ局在型受容体CCPG1やTEX264もFIP200と結合する.さらに,FIP200と結合するユビキチン結合型受容体同士(p62とNBR1やTax1BP1とNBR1)の結合18)〜20)やTax1BP1,NDP52,Optineurin間でULK1タンパク質リン酸化酵素複合体のリクルート能力の差があることもわかってきた21).カーゴ上で受容体が相補的に働き上流因子をリクルートし,隔離膜形成を促すことが想定される.ただし,そのような相互補完的に機能する受容体でも,Parkin-PINK1依存的なマイトファジーのように複数の受容体が働く場合に,コアとなる受容体(NDP52,Optineurin)が存在する場合もある22).驚いたことに,Atg11とは異なり,FIP200は受容体のLIR(後述)を介してLC3と相互排他的に結合するようである23).受容体はリン酸化・脱リン酸化により結合が制御される.特に,出芽酵母で同定されている受容体のリン酸化はAtg11との結合を高める(中戸川の稿).

❺ ATG8ファミリーの重要なポイント

受容体とAtg8ファミリー(LC3A,LC3B,LC3C,GABARAP,GABARAPL1,GABARAPL2)とは直接相互作用する.結合に使われるアミノ酸モチーフは酵母の場合Atg8 family- interacting motif(AIM),LC3結合型の場合LC3-interacting region(LIR),GABARAP結合型の場合はGABARAP-interacting motif(GIM)と名付けられている.受容体は隔離膜の内側に存在するPE修飾されたAtg8ファミリーとカーゴの両方と相互作用するため,隔離膜はカーゴに沿って伸長すると考えられる24).AIM,LIR,GIMのコアモチーフは[W/F/Y]0- X1-X2-[L/V/I]3からなり,[W/F/Y]0と[L/V/I]3がAtg8ファミリーのN末端のαヘリックスとユビキチンフォールドの間隙およびユビキチンフォールド内に生じる2つの疎水性ポケットと相互作用する(図2C).受容体とAtg8ファミリーとの相互作用には,受容体のリン酸化も関与している.受容体LIR,GIM,AIMコアモチーフあるいはそれらのN末端側のリン酸化はAtg8ファミリーとの相互作用を増強する.また,Atg8ファミリー(少なくともLC3とGABARAPファミリー)間で疎水性ポケットに差異があり,それぞれ取り込む基質が異なる可能性がある25).Atg8ファミリーのPE化に必須なATG3を欠失した細胞でもオートファゴソーム形成が確認され26),哺乳動物Atg8ファミリーをすべて欠損した細胞においてもミトコンドリアを隔離したオートファゴソームが観察される27).一方,オートファゴソーム膜上においてAtg8ファミリーとp62顆粒との相互作用を阻害すると,p62顆粒を取り囲むオートファゴソームが減少する9)28).つまり,受容体とAtg8ファミリーの結合は,カーゴ周辺で形成される隔離膜の伸長方向の決定に働くと考えられる.Atg8ファミリーがなくとも受容体がULK1タンパク質リン酸化酵素複合体やAtg9をカーゴ周辺にリクルートすれば隔離膜が形成され,効率が悪くとも無作為にカーゴを取り囲むことができるのであろう.

選択的オートファジーによる細胞機能制御

酵母の液胞酵素Ape1の前駆体proApe1は液−液相分離により液滴(Ape1複合体)となりcytoplasmic-to-vacuole targeting(Cvt)小胞(オートファゴソームに相当)により取り囲まれ,液胞に輸送される(図3).Ape1複合体には,それ自身に液滴形成能がないタンパク質群(クライアント)が含まれ,Ape1複合体とともに液胞に運ばれる.これらクライアントの液胞への輸送は,不要酵素の分解といった生理作用をもつ(中戸川の稿).高等生物の場合には,受容体分子を介した多様なシグナル伝達分子の分解機構が存在することから,さらに複雑である(山本の稿).例えば,p62顆粒は,ストレス下のユビキチン化タンパク質の増加に応じて形成される液滴であると考えられるが,この液滴に含まれるクライアントKeap1は転写因子Nrf2のユビキチンリガーゼであり,p62液滴に取り込まれ,オートファジーにより分解されると,Nrf2が活性化,抗酸化タンパク質の遺伝子発現が誘導される31).また,細胞内侵入ネズミチフス菌がK63鎖のユビキチンを付加されると,ユビキチンのN末端メチオニンを介する直鎖状ポリユビキチン鎖を生成するユビキチンリガーゼ複合体LUBACがリクルートされる.LUBACによる直鎖状ユビキチン鎖の形成は,受容体であるOptineurinとNEMOの転移を促し,それぞれオートファジーによるネズミチフス菌除去(ゼノファジー)とNF-κB活性化を惹起,ともに細菌の増殖を抑制する30)32).このような選択的オートファジーと共役した生体防御機構はリソファジーにも存在する.損傷リソソームに対応して,ESCRT複合体による膜修復,リソファジーによる隔離・分解,転写因子TFEB活性化によるリソソーム生合成の誘導が順次起こる.これら複雑な機構を紡ぐ機構が見えてきた(中村らの稿).

選択的オートファジーと疾患の関連

主に神経変性疾患において,ヒト疾患の原因となる選択的オートファジーにかかわる遺伝子の変異が見つかっている.マイトファジーのユビキチンリガーゼParkinとその制御キナーゼPINK1をコードする遺伝子はともに常染色体潜性若年性パーキンソン病の原因遺伝子である.疾患関連変異によって,Parkin-PINK1依存性マイトファジーが障害される(松田の稿).ユビキチン介在性選択的オートファジーの受容体p62をコードするSQSTM1は筋萎縮性側索硬化症(ALS),前頭側頭葉変性症(FTLD)や骨パジェット病33)34)の,OptineurinをコードするOPTNはALS 35),原発開放隅角緑内障の原因遺伝子として同定されている36).p62とOptineurinはTANK-binding kinase 1(TBK1)によりリン酸化されるとユビキチン鎖との結合が増強されるが,TBK1遺伝子変異もALS,FTLDで同定されている37).これら変異が選択的オートファジーに欠損を示すのか,それとも他のALSやFTLDの原因遺伝子産物と同様に液滴形成に異常を示すのか,その両方であるのかは解析が待たれる.一方,ERファジー受容体であるFAM134B,ATL3をコードする遺伝子変異が,遺伝性感覚神経障害において見つかっている38)39)

また,がんとの関連も報告されている.オートファジーの生理機能は大きく分けて2つ,“細胞内品質管理”と“細胞への栄養供給”であり,前者の障害は細胞の腫瘍化を引き起こし,後者の異常活性化はがん細胞の代謝要求性を満たすと考えられる.しかし,がんにおけるオートファジーの役割は,がん種や進展状況に応じて異なることや,がん微小環境を構築する宿主の非がん細胞(星細胞や線維芽細胞)のオートファジーががん細胞の増殖を支えることも明らかになりつつある.これらの複雑性の少なくとも一部は,選択的オートファジーによるシグナル伝達制御や抗腫瘍免疫抑制により説明できる(山本の稿

選択的オートファジーモニター系

オートファジーの活性評価はアイソトープ標識した長寿命タンパク質の分解測定や電子顕微鏡観察が主であった.2000年に隔離膜・オートファゴソームに局在するLC3が同定されると,蛍光標識したLC3を利用し,オートファゴソーム観察が行われるようなった40).また,酸性下で蛍光が消光するGFPと酸性化でも比較的安定なmCherryあるいはRFPを直列に融合させた蛍光タンパク質を利用することで,細胞質のLC3とリソソームに運ばれたLC3を区別できる.つまり,レシオメトリックなオートファジープローブとなる41).このようなタンデムGFP-mCherryをカーゴに局在させることで,マイトファジー42),リソファジー43),ERファジー44)などの活性を蛍光強度の比により定量でき,制御因子のスクリーニングにも利用されている.さらに,宮脇グループが開発したリソソーム内外のpH差を検出するプローブKeima 45),さらに,リソソーム環境に耐性をもつ蛍光タンパク質TOLLESと耐性のないYPetを用いたプローブSRAI46)が開発され,それらをミトコンドリアにターゲットさせることで生きた細胞標本(Keima,SRAI)および固定標本(SRAI)でマイトファジー活性が測定できるようになった.当然,他の選択的オートファジーにも利用できると考えられる(片山・宮脇の稿).

おわりに

選択的オートファジーの理解はどこまで進んでいるのであろうか? オルガネラの選択的分解を駆動する分子機構の理解が進む一方で,可溶性タンパク質については,①どのようなタンパク質がいつ,どの細胞・組織で,どのようにオートファジーの選択的基質となるのか,②それら基質に沿ったオートファゴソーム形成を促す受容体はどのようなものであるか,そして,③それら分解の生理的意義とは何なのか.まだまだこれらの全容解明は程遠い状態である.①に関してはコアユビキチン結合型受容体分子の網羅的結合分子解析47),②に関してはAtg8ファミリーの網羅的結合分子解析48)が行われているが,限られた条件の培養細胞レベルで行われていることから,どのくらいの基質,受容体が存在するかもわかっていない.当然,個々の基質の選択的分解の意義もほとんど手つかずの状態と言ってよい.

本特集では,主にマクロオートファジーによる選択的オートファジーを取り上げたが,マクロオートファジー以外のオートファジー,すなわちリソソーム/液胞膜が陥入して基質を取り込むミクロオートファジーや,基質がリソソーム膜を透過する膜透過型オートファジー(シャペロン介在性オートファジーを含む)にも従来知られていない多様なメカニズムや基質(タンパク質だけでなくオルガネラや核酸など)が存在することがわかってきた.そして,受精卵などの特殊な細胞で時期特異的に展開されるエンドサイトーシスを介した細胞膜分解(細胞成分のリソソーム分解という点で広義のオートファジーに該当)やリソソームとオルガネラが直接融合する直接融合型オートファジー(従来のクリノファジーを含む)が,個体発生において重要な働きを担うことが示唆されている.さらに,これらすべてのオートファジーが選択性を有し,時空間的に制御されたタンパク質(相分離した顆粒や凝集体の状態を含む),核酸,オルガネラなどの選択的分解に貢献する.多様な経路で実行されるオートファジーやそれらによる選択的基質分解(マルチモードオートファジーと定義)は相互に関連し,細胞の環境適応,恒常性,分化などの幅広い細胞機能を制御すると考えられる.マルチモードオートファジーを統合的に討議するには時期尚早であるが,数年後には実験医学で再び特集を組める大きな領域となっていると確信している.

謝辞

本総説記載にあたり貴重なコメントをいただいた森下英晃博士,一村義信博士,松田憲之博士,野田展生博士に感謝申し上げる.

お前もなのか Ufm1

2002年だったか,流しのタンパク質科学者Nにユビキチン活性化酵素にホモロジーのあるFLJ23251(現在はUba5とよばれている)の結合タンパク質の質量分析をお願いした.Nの技術は凄まじく,直ちにBM-002,CGI-126,KIAA0776というタンパク質を同定してくれた.これらは,現在,Ufm1,Ufc1,Ufl1とよばれ,ユビキチン様タンパク質結合系Ufm1システムを形成する.筆者はメンターTの目を盗んでは,Ufm1システムの解析を進め,Ufm1システムが造血や神経発達に必要なこと,Ufm1システムをコードする遺伝子変異がヒトの遺伝性発達障害を引き起こすことなどを明らかにした.私のUfm1研究は,加熱するオートファジー研究で疲れた心を癒やしてくれる一服の清涼剤であった.2020年,「Ufm1システムがシート状小胞体のオートファジーを介在する」旨の内容が報告された44)千野・水島の稿).Ufm1,お前もオートファジーか.(小松雅明)

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参考図書・ウェブサイト

著者プロフィール

小松雅明:1972年新潟県新潟市生まれ.2001年順天堂大学大学院医学研究科(指導教員:木南英紀教授)にて博士号を取得.研究者としての修行期間は,ユビキチン-プロテアソームの大家である田中啓二研究室でオートファジー研究に集中.’10年東京都臨床医学総合研究所・タンパク質分解プロジェクトプロジェクトリーダー,’14年新潟大学医学部生化学第一講座教授,’18年より順天堂大学医学部生理学第二講座教授.高等動物における選択的オートファジーの分子機構および病態生理的意義の解明をめざしています.Ufm1もやってます.

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