ⓐ 抗菌薬治療なしでも改善する場合がある, ⓒ 1,500 mL の水分摂取量増加は膀胱炎の再発予防に有用である 膀胱炎についてのtips 1)膀胱炎は水を飲めばOK? ここでは膀胱炎についてのtipsについてそれぞれ見ていきましょう. 膀胱炎はそもそも自然治癒するということをご存じでしょうか? 成人の単純性膀胱炎患者に対してプラセボを投与した群,すなわち抗菌薬なしでも約半分は軽快したという研究があり2),軽快した場合,自然経過だったのか,抗菌薬が効いたのかわからない場合があります.また,近年の薬剤耐性の影響で抗菌薬の代わりにNSAIDsを用いた研究などがありますが,総じて抗菌薬治療よりは効果が下回る結果でした3). 以前からよく膀胱炎患者に行われる説明として「よく水を飲みましょう」とありますが,1日1,500 mLの水分摂取量増加で再発予防できたという研究があります4).水分摂取量が少ない人,心臓の問題がない,など飲水増加の影響がない人は,500mLのボトルを食事間に1本飲んでもらうように説明すると再発予防によいかもしれません. 2)選択すべき抗菌薬 膀胱炎では,最も頻度の高い原因微生物である大腸菌の耐性化が進んでおり,抗菌薬選択が難しくなってきています.2017年 JANISのデータによる日本全体での大腸菌の耐性率によると,キノロン系抗菌薬の頻用,およびESBL産生大腸菌の増加もあり,尿路感染症で頻用されているレボフロキサシンの感受性率は東京都で58.8%まで低下しています(アンピシリン 44.8%,セファゾリン 59.1%,セフトリアキソン 72.0%) 5).またこれまで頻用されてきたキノロン系抗菌薬の重大な副反応(稀ですが重篤なものとして腱炎・腱断裂,QT延長・不整脈,低血糖・高血糖,大動脈瘤など)が判明しており,米国泌尿器学会はChoosing wiselyの1つに「女性の単純性膀胱炎の治療に,他の経口抗菌薬選択ができる状況であれば,キノロン系抗菌薬を使用しない」をあげています6). そのため,教科書やガイドラインなどでキノロンが第1選択となっている場合もありますが筆者はキノロンを避け,ST合剤,および第2選択のβラクタム系を選択しています(引用しているNEJMの総説ではキノロンは第2選択) 1).妊婦およびその可能性のある女性の場合,ST合剤は妊娠初期の神経管欠損,および新生児核黄疸との関連が指摘されており例外を除いて避けるべきとされています. 処方例 スルファメトキサゾール・トリメトプリム(バクタ®)1回2錠,1日2回,3日間 セファレキシン(セファレキシンカプセル)1回500 mg,1日3回,3〜7日間 引用文献 Hooton TM:Clinical practice. Uncomplicated urinary tract infection. N Engl J Med, 366:1028-1037, 2012 ↑review article.まとまっており,どれか一編論文を読むならこれがおすすめ. Christiaens TC, et al:Randomised controlled trial of nitrofurantoin versus placebo in the treatment of uncomplicated urinary tract infection in adult women. Br J Gen Pract, 52:729-734, 2002 ↑成人の単純性膀胱炎患者に対してNitrofurantoin 投与群(n = 40)とプラセボ(n = 38)を比較した研究.Day7の症状改善率はNitrofurantoin 投与群:88 %,プラセボ群:51 %. Kronenberg A, et al:Symptomatic treatment of uncomplicated lower urinary tract infections in the ambulatory setting: randomised, double blind trial. BMJ, 359:j4784, 2017 ↑成人の急性単純性膀胱炎に対して抗菌薬 vs NSAIDs のRCT. Hooton TM, et al:Effect of Increased Daily Water Intake in Premenopausal Women With Recurrent Urinary Tract Infections: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med, 178:1509-1515, 2018 ↑12カ月間の膀胱炎の再発頻度についてのRCT.水分摂取群で1.7 回,対照群は3.2 回であり,12 カ月で1.5 回再発回数が減少. 厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS).公開情報2018 年1 月~12 月 年報(全集計対象医療機関) 院内感染対策サーベイランス 検査部門[入院検体](2020 年2月閲覧) ↑厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)からのデータ.参考になります. American Urological Association. choosing wisely(2020 年2月閲覧) ↑米国泌尿器学会の choosing wisely. (2021/04/08公開) 戻る この"ドリル"の掲載書をご紹介します 抗菌薬ドリル 実践編臨床現場で必要な力が試される 感染症の「リアル」問題集 羽田野義郎/編 定価:3,960円(本体3,600円+税) 在庫:あり 月刊レジデントノート 最新号 次号案内 バックナンバー 連載一覧 掲載広告一覧 定期購読案内 定期購読WEB版サービス 定期購読申込状況 レジデントノート増刊 最新号 次号案内 バックナンバー 定期購読案内 residentnote @Yodosha_RN その他の羊土社のページ ウェブGノート 実験医学online 教科書・サブテキスト 広告出稿をお考えの方へ 広告出稿の案内