忙しい人のための代謝学〜ミトコンドリアがわかれば代謝がわかる
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忙しい人のための代謝学

ミトコンドリアがわかれば代謝がわかる

  • 田中文彦/著
  • 2020年03月30日発行
  • A5判
  • 157ページ
  • ISBN 9784758118729
  • 定価:3,520円(本体3,200円+税)
  • 発行済
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人間はもちろん動物ですが、もし次の世にもう一度生まれ変わってもよいと神様から許されたら、あなたは動物と植物、どちらに生まれ変わりたいですか。

ずいぶんいろいろな人に聞いてみましたが、9割以上の人が次の世も動物に生まれ変わりたいと答えました。動物はどこへでも動き回って好きなことができ、植物より自由でよいと思うからでしょう。確かにそれも一理あります。動物は動ける(can move)と捉えると、地面に縛りつけられている植物よりもずっと好ましいように見えますが、でも動物は動かなくてはいけない(must moveまたはshould move)と捉えると、大地にずっしり根を張っているだけで生きていける植物よりも厳しい生き方にも見えませんか。…

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時間に追われる臨床・研究の現場で必要な「代謝」の知識を,身近な例えでわかりやすくまとめました.「代謝は苦手」「覚えることが多すぎて難しい」――そんな印象をがらりと変える,学び直しに最適な1冊!

目次

はじめに

第1章 植物と動物

もし生まれ変われたら

植物と動物の本質

植物と動物の決定的な細胞内小器官

葉緑体とミトコンドリアの起源

電子伝達系は細胞の発電所

酸化反応と還元反応の定義

生体のエネルギー通貨:ATP

第2章 動物エネルギー産生

血液中から細胞内に取り込まれたグルコースはまず解糖系へ

各代謝産物に含まれる炭素原子数は必須知識

解糖系では1分子のグルコースから2分子のATPが得られる

解糖系からTCA回路への受け渡し

TCA回路の脱水素反応

ATP産生の総決算

動物のATPは3つの化学反応以外では産生されない

第3章 肉食動物の場合

ライオンはパンで生きるにあらず

糖新生における最大の難関

リンゴ酸はシャトルに乗って

アミノ酸からの糖新生

アミノ酸からの糖新生にはアミノ基転移反応が必要

糖新生を介した肝臓と筋肉の協調

腎臓は有力な糖新生臓器

第4章 補助燃料タンク(グリコーゲン)

食物は常にあるわけではない

グルコースは細胞内の囚人である

グリコーゲンを貯めて絶食に備える

肝臓と筋肉ではグリコーゲンの利用法が異なる

グリコーゲンを利用できない糖原病

第5章 補助燃料タンク(中性脂肪の分解)

中性脂肪とは

グリセロールは糖新生へ

脂肪酸はβ酸化でアセチルCoAを経てTCA回路へ

脂肪酸のβ酸化だけではTCA回路が空焚き状態になる

糖尿病の本質

トランスポーターとチャネル

糖尿病とは細胞内飢餓である

第6章 補助燃料タンク(中性脂肪とコレステロールの合成)

中性脂肪分解はミトコンドリアの内、合成は外

クエン酸もシャトルに乗って

脂肪酸は分解も合成も炭素2個ずつ

肥満対策はまず運動

コレステロールもアセチルCoAが原料

脂肪やコレステロールの特殊運搬車リポタンパク質

第7章 ビタミンB群の関与

ビタミンとは何か

支離滅裂なビタミンB

かつては国民病だったB1欠乏症の脚気

B2とB3は酸化還元反応の立役者

コエンザイムAの部品となるB5

その他のビタミンB群

第8章 アミノ基転移反応とアンモニアの処理

トランスアミナーゼの働き

酸化的脱アミノ

尿素回路でアンモニアを無害化

尿素回路は二酸化炭素でスタート

肝門脈がなければ人は即死する

肝臓のさまざまな機能を支える構造

肝硬変の危険性

アンモニアは生体に必要な素材でもある

グルタミンとグルタミン酸

第9章 ヘムの合成

ヘモグロビンの構造

ヘムはミトコンドリアの中で生まれる

ヘムはミトコンドリアの外で成長する

なぜ胎児期の造血は肝臓と脾臓でなければいけないのか

ヘムは再びミトコンドリアに帰る

ヘムはミトコンドリアの中で鉄と出会う

第10章 赤血球の代謝と機能

赤芽球の脱核とは

解糖系だけが赤血球の命綱

赤血球の解糖系の特殊性

ヘモグロビンの酸素解離曲線

酸素解離曲線の右方移動

赤血球は自己犠牲の健気な細胞

第11章 素材としてのグルコース

燃料にならないグルコース〜五炭糖経路

五炭糖経路の産物

第12章 代謝各論

解糖系しか使えない細胞もある

赤筋と白筋

代謝は脳が最優先

がん細胞は解糖系優位

終章 ミトコンドリア・イブ

索引

おわりに

書評・感想
  • とても興味深く、一度生化学を学習した者にとっては良書だと思います。

    私立大学薬学部講師

  • 講義の参考にと思って軽く手にとってみたのですが、面白くて一日のうちに読み切ってしまいました。

    著者の田中文彦先生の「膨大な代謝の知識を徹底的に圧縮して、一つの全体像として提示する」という目標が見事に具現化されていると思います。簡素化された説明の中にも十分な説得力があり、ぐいぐいと引き込まれる力を感じました。概ね見開きで完結する体裁と、解り易い図もページをめくる手を加速させてくれています。

    国立大学医学部教員

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