「バーチャルスライド組織学」導入事例紹介:薬学部

オンライン実習に最適.
自己学習力の向上にも役立つ

中舘和彦(明治薬科大学薬学教育研究センター基礎科学部門)

導入前の講義状況

明治薬科大学では,薬学に必要な生命科学を学ぶ基礎科目として,1学年約360名に対し,座学として生物学入門(80分を15回),基礎生物学(80分を15回),解剖学(80分を15回)を前期に行っている.また,前期に生命科学実習1として1グループ60名とし,計6グループに分け,実験器具の使用法,解剖学実習,脳実習,組織学実習,血球観察実習,DNA抽出実習などを行っている.実習は約3〜4時間で週3回(火曜日から木曜日)実施している.

組織学実習では,1名につき1台の光学顕微鏡を用いて,血球観察やHE染色を施した臓器標本を観察し,評価課題は観察する対象を見つけ,スケッチの提出としている.

導入した理由

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,本学では早々に全講義がオンライン配信になることが決まり(2020年4月),実習に関しても実習数を減らすことを決定した.しかし,学生が,主体的に取り組める実習ができないかと考え,さまざまな候補を選定していった.

光学顕微鏡を用いた顕微鏡実習では,学生が見ている像の中で疑問に思っている対象物を教員やTAが把握することが難しく,顕微鏡にCCDカメラとモニターを付けることを検討していたが,予算上,現在まで設置できていない.

本学で作製した標本からバーチャルスライドファイルを作製したが,1ファイルが1GB近くになりサーバー容量の制限から,学生に自由に閲覧可能にすることができなくなった.また,海外の大学医学部で無料公開されている組織標本を用いることを考えたが,専門用語を学んでいない学生に英語での標本閲覧は困難と考えた.

そこで,本書の標本を使用させていただけないかと羊土社問い合わせをした.

学生の声
  • バーチャルスライドの実習が、まるで本物を見ているようで勉強になった
  • 現在の状況下での最高の実習だったと思う

講義での使用方法

実習はオンラインで行い,本学サーバーより資料を配布し,説明した後,各自でバーチャルスライド(VS)を用いた実習を行い,課題提出させた.説明は2部構成とした.まずは,組織学実習を受けるための基礎知識をつける説明を行った.次に,実際にVSを使用して,各組織における観察ポイントなどを説明した.

使用した標本は,昨年度まで行ってきた観察部位と同じ,血球,骨格筋,心筋,平滑筋,消化管(小腸),肝臓,腎臓,肺とした.

課題は説明時に提示し,各実習期間内に本学サーバー上にアップしてもらう方法をとった.

学生の声
  • 先生と同じものを見ているので、説明されるときにわかりやすかった
  • 自分で動かして目的の部分を見られたので良かった
  • 自分が見たいところをゆっくり見られたので良かった

本書の評価

サーバーのアクセスや画像の閲覧が遅延なくでき,非常に使いやすかった.また標本も細部まできれいに撮影されており,学生実習を行うにあたり,教員としては非常に助かった.

使いにくい点はなかったが,学生の自宅環境,閲覧する機種(パソコンではなく,スマートフォンの場合)によっては画面が小さい,色映りが見えにくいようなことがあったようで,顕微鏡のようにコントラストや明るさの調整が可能になるとさらに良くなると思う.

来年以降の活用について

来年度も今年度と同様に,対面実習が難しい場合にはお願いしたいと考えている.対面実習が可能となった場合にも説明の際や自己学習力の向上のため,使用できればと考えている.

学生の声
  • 復習がしやすくて良かった
  • 実際に体験している感覚になれて楽しかった

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