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I 疾患
3 不整脈
- 徐脈性不整脈
- 頻脈性不整脈
- 伝導障害
- 不整脈症候群
定義
- 正常洞調律以外の調律と定義される
- 心臓内の一連の電気的流れ(刺激伝導系)に異常が生じていることを意味する
- 危険な不整脈は心臓突然死の主たる原因である
分類
- 心拍数によって徐脈性と頻脈性に大別される
- 広義で不整脈を取り扱うときは,伝導障害と不整脈をきたすおそれのある疾患(不整脈症候群)までもが含まれる
1徐脈性不整脈
a)洞(機能)不全症候群
- 次のように3つに細分化されⅡ群以上で危険性が高いと判断される
- Ⅰ群(洞徐脈),Ⅱ群(洞停止/洞房ブロック),Ⅲ群(徐脈頻脈症候群)
b)房室ブロック
- 次のように細分化され,Ⅱ度房室ブロック以上で危険性が高いと判断される
- Ⅰ度房室ブロック,Ⅱ度(Wenckebach型,Mobitz Ⅱ型,2:1型,高度,発作性)房室ブロック,Ⅲ度(完全)房室ブロック
2頻脈性不整脈
a)心房細動
- 発作性・持続性・永続性(慢性),孤立性(心疾患に起因しない),非弁膜症性(弁膜症に起因しない)などに分類される
b)心房粗動
- 通常型〔心電図で鋸歯状波(F波)あり〕と非通常型(同なし)のように分類される
c)発作性上室頻拍
- 複数のタイプがあるが,次の2つが全体の約90%を占める
- 房室結節リエントリー性頻拍:房室接合部二重伝導路が関与
- 房室回帰性頻拍(WPW症候群):副伝導路(Kent束)が関与
d)心室期外収縮
- 単源性・多源性・2段脈・2連発・散発性・頻発性・R on T型などに分類される
e)心室頻拍
- 持続性(30秒以上)・非持続性(3連発以上で30秒未満),特発性(心疾患に起因しない)などに分類される
原因
1徐脈性不整脈・伝導障害
- 主な原因は加齢に伴う刺激伝導系の細胞変性である.これ以外に薬物,心筋の虚血または炎症,副交感(迷走)神経の緊張などが関与する
2頻脈性不整脈
- 原因なく発生することも多い.心筋の虚血や伸展,神経体液性因子(心不全・高血圧),交感神経の緊張など,さまざまな要因が関与する
- 心房細動では,自律神経活動アンバランス(副交感または交感神経優位)も原因の1つである
3不整脈症候群
- 先天性QT延長症候群とBrugada症候群では,遺伝子異常(変異)が主な原因である
病態生理
1徐脈性不整脈
- 機能的もしくは器質的障害による刺激生成能の低下,伝導遅延,伝導途絶のいずれかで生じる(図1)
- 刺激生成能の低下:生理的な電気の発生源である洞結節においてみられる.洞不全症候群の発現に関与する
- 伝導遅延と伝導途絶:洞結節領域と房室接合部領域(房室結節およびHis束)においてみられる.洞不全症候群または房室ブロックの発現に関与する
2頻脈性不整脈
- 旋回興奮(リエントリー),もしくは局所巣状興奮(異常自動能亢進または撃発活動)のいずれかで生じる(図2)
- 頻脈性不整脈が持続性の場合:そのメカニズムはリエントリーである
- 頻脈性不整脈が単発性または非持続性の場合:そのメカニズムは異常自動能亢進または撃発活動である
症候
- 脈の結滞感,乱れ感
- 動悸
- 胸痛
- めまい(眼前暗黒感)
- 失神(意識消失発作)(II検査・診断-1参照)
診断法
- 不整脈が疑われるものの体表面心電図で診断できない場合:ILRや電気生理学的検査の適応を検討する
- 危険性が高い不整脈と判断した場合:特殊心電図解析などを利用して心臓突然死の可能性について吟味する
診断ポイント
- 病的意義の判断:次の場合は低いとする
- 徐脈性不整脈で安静時心拍数が40~50回/分
- 頻脈性不整脈で安静時心拍数が100~110回/分
- 医療面接:めまい・失神などの症状(Adams-Stokes発作)の有無を確認する
- 原因の探索:二次性に不整脈を生じている可能性があるので,同時に進める
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