読み方だけは確実に身につく心電図

読み方だけは確実に身につく心電図

  • 米山喜平/著
  • 2022年11月25日発行
  • A5判
  • 259ページ
  • ISBN 978-4-7581-0767-9
  • 3,960(本体3,600円+税)
  • 在庫:あり
本書を一部お読みいただけます
※本Webサイト掲載にあたり一部改変しています

2章 心電図トレーニング 〜順番に読んでいけばなんとかなる

本章では,心電図を実際に読んでいってもらいます.冒頭に症例が示してあって,その心電図を見開きで提示しています.1章でご紹介した10ステップ判読法が右上にありますので(本webページでは割愛),その順番に沿って読んでいきましょう.そして,心電図から読みとれる所見,および予想される疾患を考えてみてください.

そうしたら,ページをスクロールさせて答え合わせをしましょう.

という流れで,本章では心電図トレーニングをくり返します.答え合わせでの解説では,重複部分や自明な部分などはどんどん省略していきます.逆に,1章ではカバーしきれていない波形の読みとり方が出てきたら,その都度補足,あるいは3章の該当部分とリンクさせています.とにかくくり返し読んで,読む流れを身につけることが大切だからです.

最初はなんだか腑に落ちないような,スッキリしない気持ちになるかもしれません.でも,慣れてくると気にならなくなる瞬間が必ずやってきます.読み方が身についてからの方が,原理や理屈が理解しやすくなる,というのも真実です.

では,さっそく1症例目に挑戦してみましょう.

では,答えあわせです.

症状がない患者さんの心電図です.10ステップ判読法の判読結果を以下に示していますので,あわせて見てください.

の心拍数は,RR間は整で5 mmマスが4個ちょっとなので70くらいで洞調律です.電気軸はⅠでマイナス,aVFでプラスなので右軸偏位です.移行帯はV4-5でQRSが下向きから上向きに変わっているので異常なし.P波は右房負荷なし,左房負荷なし.PQ時間正常.さて,異常Q波はどうでしょう.これはⅠ,aVLに異常Q波ありと読みます.Ⅰ誘導のQ波は小さいですが,R波も小さいのでR波の1/4以上の振幅となり,異常Qとなります.幅もこのくらいで異常Qと判定します(他の心電図所見とのかねあいで判断しますが).QRSは左室肥大なし.右脚ブロックなし.左脚ブロックもありません.STは正常範囲内です.冠性T波(左右対象性の陰性T)をV5,6に認めます.QTはRRの1/2に収まっており延長はありません.

亜急性側壁心筋梗塞の疑い,右軸偏位

異常Qは梗塞があったことを疑うのでしたね.そして,心筋梗塞の発症時期は,ST上昇が数時間前,冠性T波は数週間前と覚えておいてください.Ⅰ,aVLの異常QとV5,6の冠性Tから亜急性側壁心筋梗塞が疑われ(3章-参照),左回旋枝が閉塞した心筋梗塞を以前に発症したと考えられる心電図です.こんな心電図を見つけたら循環器医に相談したいと思えるようになってほしいです.

1週間前に安静時の胸部症状があった患者さんの心電図です.今回も以下の判読結果と照らし合わせながら見てください.

心拍数はRR間が5マス程なので60くらいで洞調律です.電気軸はプラス,プラスで正常軸です.移行帯はQRSが下向きから上向きに変わっているのがV4-5なので異常なし.P波は右房負荷なし,左房負荷なし.PQ時間正常.そして,異常Q波をV1,2,3,4に認めます.V2〜4にR波はありますが,R波の前にQ波もあります.そのQ波がR波の1/4以上なので,他の誘導と同様異常Q波と判読します.QRSは左室肥大なし,右脚ブロックなし.左脚ブロックもありません.STは正常範囲内です.冠性T波をⅠ,aVL,V1〜6に認めます.1章でaVL,V1,2の陰性Tは読まないようなことをいいましたが,連続性のあるときは読むようにします(3章-参照).QTの延長はありません.

亜急性前壁中隔心筋梗塞

冠性T波は数週間前の心筋梗塞を表します.異常QがV1,2,3,4にあり,その領域に冠性T波もあることから,数週間前に前下行枝が閉塞した前壁中隔心筋梗塞の可能性があります(3章-参照).なお,前下行枝が大きくて,前下行枝の根元で閉塞すると,Ⅰ,aVL,V5,6の側壁領域にも心電図変化が出ます.前下行枝と回旋枝の同時の閉塞ではありません.病歴からすると1週間前に心筋梗塞を発症したと予想できます.循環器内科医に相談しようと思ってほしい心電図ですね.

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読み方だけは確実に身につく心電図

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  • 米山喜平/著
  • 3,960(本体3,600円+税)
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