書 評
論文を書こうとしたけどパラグラフライティングって何?と思った人が最初に読む本
舩越 拓
(東京ベイ・浦安市川医療センター 救命救急センター)
そもそも論文を書きたい,書かねばならない,医師は数多くいると思われます.専門医取得等のために論文が必要とされ,研究を主たる業務としていなくても論文執筆が求められたり,珍しい症例を経験し学会発表をした後に「せっかくだから論文にしてみようか」と声をかけられたりすることもあるかもしれません.
しかし論文執筆はいきなりできるわけではありません.論文を書く側からは,ひとまず書いてみようと言われても,何から手をつけていいのか,どのような構成にしていいのかがわからず,序盤で挫折する人も少なくないでしょう.指導者側の目線からは,とりあえず書いてみてと言ったものの提出されたドラフトの完成度に愕然とし,どうやって手直ししていくか,どうやって助言すればよいのか途方にくれることもあります.最近は論文の書き方に関する参考書も多く出版され,IMRAD(論文の主要な章立てであるIntroduction, Methods, Results, and Discussionの頭文字をとったもの)といった基本的な構成と各章でどのようなことを書くべきかといった情報へのアクセスは充実してきました.しかし,それらの章で必要な内容を「どのように書けばいいのか」という情報は驚くほど少なかったのです.
本書はその「どのように書けばいいのか」を解決するキーワードとなるパラグラフライティングを詳細に解説した良書です.パラグラフライティングは読み手に誤解を与えず自分の主張を理論的に伝える文章を書くために,1つの段落をどのように書けばよいのかに関する基本的なルールです.本書はこのルールを細分化して詳細に解説しています.例えば,”One topic, one paragraph”ルール(1つのパラグラフで扱うトピックは1つにすること),トピックセンテンスとサポートの関係性などがあげられます.さらに,例文が豊富にあげられており,推敲前後の文章を比較することによって,どのような点を改善すればよいパラグラフとなるのかがわかりやすくなっています.これにより初学者が陥りやすいピットフォールを追体験することができ,イメージが湧きやすい構成になっています.
本書を初学者が読めば,論文執筆の最初のガイドになるでしょうし,指導者が読めばどのように文章を書けばよいのかの指導のヒントになります.論文執筆にかかわるすべての人におすすめの一冊です.