脊椎保存療法のリハビリテーション〜豊富な画像とイラストで「何をすればいいのか?」がわかる!

脊椎保存療法のリハビリテーション

豊富な画像とイラストで「何をすればいいのか?」がわかる!

  • 河重俊一郎/編
  • 2024年06月27日発行
  • B5判
  • 357ページ
  • ISBN 978-4-7581-1004-4
  • 6,160(本体5,600円+税)
  • 在庫:あり
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第2章 代表的な脊椎疾患に対するリハビリテーション

2 腰部脊柱管狭窄症

河重俊一郎
(医療法人全医会あいちせぼね病院 リハビリテーション部)

間欠性跛行に対する評価と介入:姿勢成分

姿勢成分である腰椎の前弯増強と,動作成分である腰椎屈曲可動性の低下に対して評価・介入を行っていくこととなる(図17).

姿勢成分については,腰椎の前弯増強に対する評価と介入を行う.

歩行時の腰椎前弯を助長する要素としては主に以下の3つがあげられる(図18).

①腰背筋の過緊張

②股関節伸展可動性の低下

③腹筋群の機能不全

1)腰背筋の過緊張図19

既知の通り,腰背部の筋肉は腰椎を伸展させる作用をもつ.これらの過緊張や意図しない収縮により,歩行時の腰椎前弯が助長される可能性がある.腰背部の筋肉のなかでも特に脊椎に対する伸展モーメントが大きい15)腸肋筋や最長筋といった表層外側に位置する筋肉に加え,過緊張を起こしやすい多裂筋の緊張をとるためのマッサージ,ストレッチを紹介する.

介入:腰背部の筋肉に対するマッサージ(図20
  • 基本的には,各筋に対して垂直に押圧することでマッサージを行う.筋と筋の間に指を挿し入れ,筋腹を左右に揺らすように行うのも効果的である.比較的脂肪が厚く,皮膚の遊びも大きい部位であることから,表面を擦るようなマッサージでは緊張を十分に落とすことは難しい.
  • バイブレーターやマッサージガンを用いるのも効果的であるが,機器によっては有害事象の報告があるため注意が必要である.
  • 筆者は母指球や肘を用いて行うことが多いが,筋肉のボリュームが小さい場合や棘突起・腸骨稜の直近に対して行う場合は母指の指腹を用いるとよい.
図20 腰背部の筋肉に対するマッサージ
腰背筋のストレッチ①(右側への介入,図21

①患者は背臥位.セラピストは股関節・膝関節を十分に屈曲させる.

②一側の手で患者の肩を押さえ上体を固定し,もう一側の手で骨盤を抱えるように腰椎を手前に回旋させる.

③【1~2秒ほどストレッチ→少し緩める】を5回くり返す.

  • 股関節を十分に屈曲させて回旋を行うことで,腰椎の屈曲を引き出し,筋肉を伸張することができる.患者やセラピストの体格によっては難しいが,セラピストの大腿部で患者の下肢を支えると安定して実施することができる().セラピスト自身の身体をうまく使用して行うことで最低限の力で行えるよう練習するとよい.
図21 腰背筋のストレッチ①
腰背筋のストレッチ②(右側への介入,図22

①患者は対象側を上にした側臥位となり,上側の股関節・膝関節を屈曲する.

②セラピストは右前腕で患者の上体を押さえ,左手は指先を多裂筋に引っかけるようなイメージで置く.

③右腕による上体の固定を緩めないよう注意しながら,左の手と前腕で腰椎~骨盤を手前に回旋させる.

④回旋させた状態を3秒ほどキープし,元の位置に戻す.3秒×7~8回くり返す.

⑤患者がストレッチに対して抵抗するように下体を回旋させ,収縮を行うことでリラクセーション効果を得ることも可能.

  • 上体を右回旋,下体を左回旋させることで多裂筋を伸張している.
  • 患者に十分近づいて実施することで,最低限の力で行うことができる(ベッドの高さによっては覆いかぶさるようにするとよい).
図22 腰背筋のストレッチ②
介入:椅子に座って行う腰背部のストレッチ(図23

①椅子に腰かけ,腹の前に大きめの枕やクッションを置く.

②頭方から順に身体を前に丸めていく.

  • 大きめの枕などを腹部に置くことで支点を作り,よりストレッチを行いやすくするとともに椎間板をはじめとした構造への負担を減らすことができる.
図23 椅子に座って行う腰背部のストレッチ

2)股関節伸展可動性の低下

股関節の伸展可動性は歩行時の前方への推進力に大きくかかわっている.

いわゆる正常歩行のためには立脚相後半において20°程度の股関節伸展が必要とされている16)が,股関節伸展制限を有する場合,制限側の立脚後期に骨盤の前傾トルクが高まることが予想できる.骨盤前傾は,腰椎を伸展させ,前弯を助長する(図24).

評価では,股関節伸展可動域の計測に合わせて,制限因子となる筋肉を個別に評価したい.

股関節伸展を制限する筋肉は,いわゆるヒップフレクサーとよばれる股関節屈筋群=腸腰筋・大腿直筋・大腿筋膜張筋の3つを評価する.

介入では伸張性が低下した各筋肉に対してストレッチを行うことで伸展可動性を改善させる.

肢位の変更をすることなく各筋肉のストレッチが可能で,代償も制御しやすいことから側臥位で行うことを勧めている.

図24 股関節伸展制限による骨盤前傾
評価:腸腰筋(Thomasテスト,図25
  • 腸腰筋の伸張性を検査する.

①患者は背臥位になり,セラピストは片側の股関節を十分に屈曲させる.

  • 反対側の下肢が浮き上がる場合,腸腰筋をはじめとした股関節屈筋群の伸張性低下を疑う(詳細は第2章-4参照).
図25 Thomasテスト
評価:大腿直筋(Elyテスト,図26
  • 大腿直筋の伸張性を検査する.

①患者は腹臥位になり,検者は片側の膝を屈曲させる.

  • 膝関節の屈曲に伴い同側股関節が自動的に屈曲しお尻が持ち上がる場合,大腿直筋の伸張性低下を疑う.
  • 大腿神経伸張に伴う下肢症状が出現する場合もあるため,椎間板ヘルニアなどの患者においては注意が必要.
図26 Elyテスト
続きは書籍にてご覧ください

文献

  • Lin YH, et al:Geometric parameters of the in vivo tissues at the lumbosacral joint of young Asian adults. Spine (Phila Pa 1976), 26:2362-2367, 2001
  • 「観察による歩行分析」(Kirsten GN/著,月城慶一,他/訳),医学書院,2005
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脊椎保存療法のリハビリテーション〜豊富な画像とイラストで「何をすればいいのか?」がわかる!

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