これで完璧!胆膵内視鏡の基本とコツ〜“うまくいかない”を解決する目からウロコのエキスパートの技

これで完璧!胆膵内視鏡の基本とコツ

“うまくいかない”を解決する目からウロコのエキスパートの技

  • 竹中 完/編
  • 2021年11月09日発行
  • B5判
  • 392ページ
  • ISBN 978-4-7581-1071-6
  • 9,900(本体9,000円+税)
  • 在庫:あり
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第2章 ERCP(胆管挿管をきわめる)

胆管挿管の重要知識
スコープポジションが胆管挿管に与える影響
「への字」と「しの字」,どっち?

竹中 完
(近畿大学病院消化器内科)

  • スコープポジションにどんな違いがあるのかイメージがわかない…
  • スコープポジションの違いがどのように胆管挿管にかかわるのかわからない…
  • スコープポジションで近接法か中間法どちらを選択すべきかが決まる!
  • 「への字」は中間,「しの字」は近接!

はじめに

ERCPにおいてあまり気にかけられない傾向がありますが,対峙した乳頭に対してどのようなスコープポジションをとれるか,あるいはどのようなスコープポジションしかとれないか,は胆管挿管に大きな影響を及ぼします.

スコープのストレッチ後に第2章-3で解説をした「乳頭正面視」を安定してキープできるスコープポジションは患者によって異なります.引き気味のスコープポジションがよい症例もあれば,プッシュ気味のポジションがよい症例も存在します.そして“それぞれのスコープの形で遂行可能な挿管方法,推奨される挿管方法が異なる”ことを理解できているか否かが胆管挿管成功率に大きく影響します.

適切なスコープポジション

胆管挿管法には「近接法」や「中間法」「遠距離法」などがありますが(第2章-7参照),「私は全例近接法で挿管を行う」「私は近接法が嫌いなので中間か遠距離でまずは狙うかなあ?」という考え方は筆者にはありません.もちろん,皆それぞれ得意な入れ方がありますのでその手法をメインに戦略を立てていくべきです.しかし,明らかに近接法ができないスコープポジション,明らかに中間法が成功しないスコープポジションでそれらを漫然とワンパターンで行うことは避けるべきだと思うのです.「対峙した乳頭に最も適切な胆管挿管法は何か」常にそれを考えるべきで,そこにはスコープポジションが胆管挿管に与える影響の理解が不可欠です.

図1は同一症例の異なる乳頭視野とスコープポジションです.図1Aはスコープが十二指腸内腔にぶらんと下がり,平仮名の「しの字」になっています.

一方,図1Bのスコープは少しプッシュ操作が加わり「くの字」のようになっています.この2つの違いがどの胆管挿管に影響するかを解説いたします.

1)「しの字」ポジションからの挿管動画1

十二指腸スコープをストレッチする際,多くの症例でスコープは一度乳頭を越えます.そこから乳頭を探すと,十二指腸スコープは後方斜視鏡であるため,多くの症例で,何も考えずに乳頭を捉えると「しの字」ポジションとなります(図2A).

このスコープポジションは十二指腸内でスコープがぷかぷか浮く形となりますが,これは十二指腸の呼吸性変動とスコープが同調しないため,安定した乳頭の内視鏡画像が捉えにくくなります.また,このスコープポジションからカテーテルを乳頭に挿入していくとカテーテルの軸は乳頭に対し垂直気味にあたりやすく,胆管軸と合わないことが多くむしろ膵管軸に向く確率が増加します.このポジションから胆管挿管を行うには,アップアングルを用いた「近接法」で行う必要があります.このポジションから乳頭と距離をとる「見上げ法」で胆管挿管することは難しいということを理解できているかが非常に重要なポイントになります(近接法と見上げ法については第2章-7参照).

2)「くの字」ポジションからの挿管動画1

一方,図2Bの「く」の字ポジションは,十二指腸内乳頭対側にスコープ屈曲部が接するため,十二指腸とスコープが一緒に動きます.すなわち呼吸性変動に同調する結果,安定した乳頭の内視鏡画像を捉えやすくなります.また,このポジションではカテーテルの軸と胆管軸が一致しやすくなりますので,胆管挿管に適していると考えられます.「しの字」ポジションから少しアップアングルをかけ,トルクをかけながら少しスコープを押し込むことで「くの字」ポジションをつくることが可能です.それでも見上げが足りない場合にはスフィンクテロトームなどを用いる,あるいはスコープを引いて,あえて「しの字」ポジションにしてから近接法を行うことを検討します.

3)「への字」ポジションが有効なとき動画1

ストレッチの後にまず「くの字」のポジションをつくれるかどうかを試すことが重要になりますが,難しい症例もあります.その場合,さらにスコープを押し込むことでスコープが「への字」に屈曲して乳頭正面視が可能になることもあります.「への字」スコープポジションはカテーテルの軸は胆管軸に見上げ気味に合うことが多く,乳頭正面視が難しい症例に有効なことがあり有用なテクニックの1つになります.しかしその反面,乳頭との距離が遠くなるためカテーテル操作がやや難しくなる弱点があることも理解しておく必要があります.

スコープポジションのまとめ

ここまでの内容を図3にまとめました.それぞれのスコープポジションの特性,長所,短所を認識し,対峙する乳頭形態,口側隆起から想定される胆管軸に対し,挿管時のスコープポジションから最適なストラテジーを構築いていくことが胆管挿管成功の重要なポイントになるのです.

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“うまくいかない”を解決する目からウロコのエキスパートの技

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