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第4章 咽頭:観察と拾い上げのポイント
3 咽頭・喉頭の観察法
1.効率よい観察の手順とコツ
- :解剖を理解したところで,観察について説明しましょう.この部位は解剖学的に屈曲や凹凸が多く,複雑な形態をしているから観察が難しい場所です.
- :しかも,げーげーしたり,ごっくんしたりして,うまく観察できへんで困っています.
- :コツは観察法のルーチンを決めて,短時間で効率よく観察することです.あと,呼吸や発声をうまく使うことも重要です.
- :声を出してもらうんですか?
- :発声してもらうことにより視野が展開する場所が2つあります.ひとつ目は中咽頭の軟口蓋のあたりで「あー」と言ってもらい,口蓋弓,口蓋垂を挙上させるところ(Fig. 1,),ふたつ目は下咽頭で「えー」と言ってもらい,披裂と輪状後部を挙上させるところです(Fig. 2,).
- :挿入時と抜去時のどっちで咽頭を観察したらええですか?
- :原則は,スコープ接触などの影響が少ない挿入時に観察することです.
- :せやけど,げーげーが始まると観察できませんよね?
- :そうですね.一度,咽頭反射が始まるとまず落ち着きません.そのときはひとまず食道に挿入して,抜去時にもう一度観察しましょう.
- :それと,唾液って邪魔じゃないですか? 見にくいこともあって困ります….
- :咽頭麻酔前にうがいをしてもらうと唾液が少なくなります.検査中も唾液をやさしく吸引して観察します(Fig. 3).送水ボタンで送水をして,その水と一緒に唾液を吸引することも有効です.もちろん,鉗子口から水を流すと,気管に入ってしまうのでダメです.
- :鎮静剤,鎮痛剤はどないしますか? 使った方がええですか?
- :反射が強い人は,鎮痛剤で咽頭反射をおさえてあげると楽に検査ができます.がん研ではペチジン塩酸塩35 mgを静注しています.オピオイド系の鎮痛剤であるペチジン塩酸塩は延髄のオピオイド受容体に作用して,咽頭反射や咳嗽反射を抑制します.なお,呼吸や発声で患者さんに協力してもらうことがあるので,鎮静剤(ミダゾラムなど)は使わないか少量がいいと思います.
- :観察する順番も,いつも行き当たりばったり感があるんですけど….
- :咽頭の観察って,どんくらい時間かけたらええですか?
- :咽頭癌のリスクが高い人は1分ぐらいかけて観察したいけど,リスク因子がなくて反射が強い人では,反射を起こさない程度に簡単な観察でも問題はありません.患者さんを苦しませると,二度と検査を受けてくれなくなります.ここは柔軟に対応しましょう.咽頭癌は梨状陥凹が好発部位なので,この部位はできるだけ観察するようにしてください.
観察は言葉や静止画だとわかりにくいので,動画でみてみましょう().
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