第1章 基礎・準備編
3 基本画像とオリエンテーション
庄司詩保子,野村 実
(東京女子医科大学医学部麻酔科学教室)
プローブの種類
TEEのプローブは,振動子の回転によりシングルプレーン,バイプレーン,マルチ(オムニ)プレーンの3種類に分類される(図1).シングルプレーンは0度,つまり体の横断面のみ,バイプレーンは0度と90度,横断面と縦断面の観察が可能である.マルチプレーンは振動子が0〜180度まで回転し,任意の角度での画面を得ることができる(第1章-1「プローブの選択と安全な挿入法」参照).
プローブの動き
プローブの動き(図2)には,①前進/後退(advance/withdraw),②前屈/後屈(anteflex /retroflex),③左屈/右屈(flex to the left/right),④左回転/右回転(turn to the left/right),⑤振動子の回転(rotate forward/back)がある.大きいノブを動かすことでプローブは前屈/後屈をする.小さいノブは,シングルプレーン,バイプレーンでは,側屈(左屈/右屈)であるが,マルチプレーンのプローブの場合,側屈(左屈/右屈)の動きと振動子の回転のどちらかとなる.小さいノブが側屈の場合,振動子の回転のボタンが,操作部の近辺にある(図3).実際に使用する前に動かしてみよう.これらの動きを組合わせてさまざまな画面を描出することが可能となる.
食道,胃との位置関係
心臓と食道は接しているため,画像を得ることは容易である.しかし食道内に挿入して得られる画面が,どこの位置か理解するためには,挿入の深さと心臓の関係を知る必要がある(図4).
ASE/SCAの基本画面
ASE/SCAの推奨している基本画面を示す(図5).2013年ガイドラインが改訂され8画面が加わり,基本11画面を含む全28画面となった.
画面の名称は,①プローブの位置,②主に見える構造物,③短軸像,長軸像などで構成されている.例えば,16.経胃基部短軸像はTG basal SAXであり,TG:経胃,basal:心基部,SAX:短軸像を意味する(図6).
28画面のうち,シングルプレーンで観察できるものを赤,バイプレーンで観察できるものは赤と黄色,マルチプレーンで観察できるものを青で囲っている.破線で囲まれているものは,観察できる場合もあるが,正確に観察するには,マルチプレーンが必要となるものである.
まずは,0度の画面を見よう
基本画面では,まず0度の画面をよく観察しよう.
図5の28画面のうち赤で囲っているものの多くが0度で観察できる.
0度の画面は,体の横断面の画面で,プローブに近いものが画面の上に描出される.例えば,“2.中部食道四腔像”では,画面の上が背側で左心系は右側に描出される(図7).ASE/SCAの基本画面の0度の画面のうち,中部食道上行大動脈短軸像,中部食道四腔像,経胃基部短軸像,経胃中部乳頭筋短軸像,深部経胃五腔像を頭側から並べて考えてみよう(図8).これらの画面は,前進/後退の動きだけでなく,前屈/後屈や,側屈などの動きを駆使して観察することができる.
90度の画面
0度の画面を理解したら,次は,90度の画面である.
90度の画面は,体の縦断面で,画面の右側が頭側,左側が足側となる(図9).90度の画面を理解するには中部食道上下大静脈像を理解することが近道である.中部食道上下大静脈像は中心静脈ライン挿入時のガイドワイヤーの確認や心房中隔の観察,上下大静脈のカニュレーションの位置確認などに用いる(図10).
マルチプレーンで見えるもの
0度,90度の画面の理解ができたら,はじめて振動子を回転させよう.0度の画面で,観察したい構造物をプローブのシャフトを左右に回転させ画面の中央にする.その後振動子を回転させ,さまざまな角度で観察する.振動子の回転を理解するには,大動脈弁の解剖を理解することが近道である.大動脈弁は,体の水平面に対し,30〜45度右下方向に傾いている.このため,振動子の回転を30〜45度にすると大動脈弁の短軸像が描出される.大動脈弁の短軸像から,さらに90度振動子を回転させると,大動脈弁の長軸像になる(図11).
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