本書を一部お読みいただけます
第3章 膝関節
1 変形性膝関節症
中瀬順介
(金沢大学大学院医学系研究科 整形外科)
1疾患の概要
2典型的な症例
人工関節置換術を施行した症例です.エコー検査での膝関節前方(長軸像)では,膝蓋骨の骨棘と関節水腫を観察できます.また,膝関節内側(長軸像)では,内側側副靭帯浅層の直下に骨棘と内側半月板を観察できます.骨棘は大腿骨と脛骨から大きく張り出しています(図1🅑*).
変形性膝関節症において,単純X線検査と比べてエコー検査にメリットはありますか?
身体所見だけではわかりにくい膝関節水腫の確認や膝関節内外の注射のときに利用価値があります.
3鑑別疾患
症例 3膝関節血腫
- 66歳,女性.
- 転倒後の左脛骨高原骨折による血腫(図8)である.膝蓋上嚢に変形性膝関節症による水腫よりも高エコー像を認め,新鮮血腫が貯留していることがわかる.
症例 4関節リウマチ
- 42歳,女性.
- 関節リウマチによる水腫の貯留(図9)である.膝蓋上嚢に変形性膝関節症による水腫よりもやや高エコー像である.
●膝関節の腫脹および膝蓋跳動が陽性のとき
膝蓋上嚢をエコー検査で観察すると,貯留液の性状を鑑別でき,ある程度の疾患予想が可能になる.
症例 6大腿骨内顆骨壊死(脆弱性骨折)
大腿骨内顆骨壊死例における内側半月板の逸脱は何を示していますか?
内側半月板フープ機能の破綻を示します.内側半月板後根断裂などが合併していることが多いです.MRI検査で精査してみましょう.
症例 7大腿骨内顆軟骨損傷
前述のように変形性膝関節症においてエコー検査の診断価値は低い.また,私自身も図18のエコー像で初診時に指摘できる自信はない.しかし,エコー検査を用いることで,注射をさまざまなポイントにエコーガイド下に安全かつ正確に打つことができる.そのため,私にとって形性膝関節症の診療におけるエコー検査は変必要不可欠なツールとなっている3).
特に,Wadaらが提唱している膝関節内注射の方法は確実に関節腔内に薬液を投与することができる方法である4).
文献
- Yoshimura N, et al:Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis, and osteoporosis in Japanese men and women: the research on osteoarthritis/osteoporosis against disability study. J Bone Miner Metab, 27:620-628, 2009
- Yoshimura N, et al:Prevalence of knee pain, lumbar pain and its coexistence in Japanese men and women: The Longitudinal Cohorts of Motor System Organ(LOCOMO)study. J Bone Miner Metab, 32:524-532, 2014
- エコーガイド下インターベンション.「膝エコーのすべて」(中瀬順介/著),pp148-163,日本医事新報社,2020
- Wada M, et al:The Isometric Quadriceps Contraction Method for Intra-Articular Knee Injection. JBJS Essent Surg Tech, 9:e16, 2019