書 評
髙橋 周
(東あおば整形外科 院長)
2人の編者によって,明日からの運動器エコー診療に大いに役立つ素晴らしい書籍が完成しました.
中島祐子先生は日本初の運動器超音波医学講座を広島大学に開設し,第33回日本整形外科超音波学会の会長として心温まる素晴らしい学会を開催されています.中瀬順介先生は金沢大学のスポーツ整形外科研究室のチーフそしてツエーゲン金沢(J2)のチーフドクターとして活躍され,日本の膝関節のエコー診療のトップエキスパートです.
この2人の編者が画期的な新しいスタイルで運動器エコー診療のエッセンスを書籍化してくれました.
今までは,編者が著者に内容を指定して執筆を依頼し,原稿を集めて書籍化することが通例でしたが,この書籍はここ数年で急速に発達したWebシステムを駆使して,エキスパートの先生と編者と若手医師がWeb座談会を行い,日常診療での疑問やちょっとしたコツを直接聞きながら内容をまとめています.まさに読者が日常の運動器エコー診療で感じる疑問,困りごとなどを解決するため2人の編者がよい仕事をしています.
エコーを使った運動器診療は,今までエキスパートしかできなかった診断や治療(注射)の多くを誰でも安全・正確・確実な診療へと変えてくれます.しかし,豊富な症例の経験から得る真実やちょっとした工夫はなかなかエキスパートから聞くことができないため,運動器エコー診療は本当の意味での普及とはなっていません.
この書籍は,エキスパートによって疾患の概要が章の最初にまとめてあり,豊富な症例の紹介,エコーと他の画像診断モダリティとの比較,適切かつ簡潔な解説,重要なポイントの提示,文献紹介,と,エキスパートの診療を読者が明日からの診療に活かすことができる運動器エコー診療のエッセンスがぎゅっとまとまっています.