骨折治療 手術アプローチがよくわかる髄内釘・プレート固定

骨折治療 手術アプローチがよくわかる髄内釘・プレート固定

  • 渡部欣忍/編
  • 2024年02月29日発行
  • A4判
  • 303ページ
  • ISBN 978-4-7581-1268-0
  • 19,800(本体18,000円+税)
  • 在庫:あり
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第2章 上肢

2 上腕骨骨幹部骨折③ プレート固定:前方アプローチ(MIPO)

光澤定己
(神戸市立医療センター中央市民病院整形外科)

1.手技の特徴と適用

上腕骨骨幹部から遠位にかけての粉砕骨折が最もよい適応であり,架橋プレートとしての役割を果たす.螺旋骨折(図1)や斜骨折,横骨折にも対応可能であるが,骨折型に応じてラグスクリューを用いたり,骨片間圧迫をかけたりしてギャップを残さないことが重要である.髄内釘と異なり腱板を切開しないので,特に若年に有用である1)

図1◆上腕骨遠位螺旋骨折

2.手術体位

仰臥位とする.支柱のない手台を患側に設置し,上腕骨頭が透視できるように患者の身体を患側に寄せる.斜め頭側からCアームを設置する(図2).

図2◆手術体位

3.Surgical approach

上腕骨遠位部の皮切と展開

術前の計画と作図が必須である.触診と透視下で皮切の位置を決定する.遠位は鉤突窩の上縁から近位に5 cmの皮切とするが,骨折部を直視下に整復する場合は遠位の皮切を近位側に延長する.

清潔ターニケットを使用して遠位から展開を開始する.遠位の皮切をおいて上腕二頭筋を内側にレトラクトする.この時進入するlayerによって筋皮神経が上腕筋の表層を走行しているとき()と上腕二頭筋の裏面を走行しているとき()がある.

筋皮神経を同定後,損傷しないように上腕筋を中央〜やや外側でスプリットし,上腕骨前面に到達する.上腕筋は内側2/3 が筋皮神経支配,外側1/3 が橈骨神経支配である.肘を屈曲させると上腕筋の緊張が緩み,展開が容易になる.MIPO で行う場合は橈骨神経を直視せず,スプリットした上腕筋外側をクッションとして間接的にレトラクトする.

整復

絶対的安定性と相対的安定性のどちらのコンセプトを用いるかを術前に検討しておく.

絶対的安定性を得るためには,遠位の皮切を延長して骨折部を展開し,直視下の整復が必須である().骨折部周囲の筋肉の牽引力が強く,hairlineの整復を達成するのに難渋することがある.肘を屈曲すると肘屈筋群が緩んで整復しやすくなるが,術野が狭くなるというジレンマが生じる.骨鉗子での整復には内外側方向と前後方向からの2本の鉗子を要することが多い().

骨折部で粉砕を伴う場合には相対的安定性を選択する.側面像でのアライメントは,プレートに上腕骨を沿わせることでおおむね整復されるので,仮固定の段階では正面像での内外反と回旋に特に注意する.

スクリューの挿入予定位置を避けて外側から内側へとハーフピンを刺入し,創外固定を用いてアライメントを保持しておくことも有用である2).先に遠位骨片にプレートを合わせてしまい,その後にアライメントを保持しながら近位骨片を固定していくのもよい3)

文献

  • 上腕骨骨幹部骨折に対する前方MIPO:anterior MIPO for humeral shaft fracture【上肢9】
    https://www.youtube.com/watch?v=IWpGHzYzvEE
    → YouTube「S.Mitsuzawa」で検索
  • Kobayashi M, et al:Early full range of shoulder and elbow motion is possible after minimally invasive plate osteosynthesis for humeral shaft fractures. J Orthop Trauma, 24:212-216, 2010
  • Shin SJ, et al:Minimally invasive plate osteosynthesis of humeral shaft fractures:a technique to aid fracture reduction and minimize complications. J Orthop Trauma, 26:585-589, 2012
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骨折治療 手術アプローチがよくわかる髄内釘・プレート固定

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  • 渡部欣忍/編
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