書 評
佐藤宏行
(東北大学病院 循環器内科)
「心電図検定を通じて自分のスキルアップを図りたい」
「基本はおさえているつもりだけど,心電図検定1級・マイスターを本格的に目指したい」
「専門職種として初めて心電図検定を受けるので問題形式でトレンドを確認していきたい」
日本の資格・検定AWARDS 2020(https://jpsk.jp/articles/award2020/)において「注目の資格・検定ランキング部門1位」を受賞した日本不整脈心電学会認定の“心電図検定”※.職種を問わず,小学生でも心電図に興味をもつすべての方が受検できる,素敵な検定試験です.今年10周年を迎える心電図検定ですが,私もはじめて申し込んでいたので,よいタイミングでこの名著を拝読させていただきました.
著者は国内有数施設で研鑽を積んできた臨床最前線に立つaround 40世代の不整脈専門医の2人.萬納寺先生は,心電図検定を志す誰もが憧れる,全国73名のみに与えられたマイスター(1級最優秀成績合格者)の1人.矢加部先生は,私とは札幌・手稲渓仁会病院の後期研修医で苦楽をともにし,論文を物凄い勢いで多数執筆されている先輩です.2人は互いが大学同期の仲であり,大学・市中病院の双方を経験しながら,若手医師・メディカルスタッフを教育し,不整脈に留まることのない豊富な臨床経験を積んで来られたという2人の共通点が,本書ならではの“深み”を与えています.
心電図検定では,不整脈のみならず,虚血・心筋症・先天性心疾患・電解質異常など幅広い病態に加え,ノイズ・電極付け間違い,気胸など稀ながら判別しなければならないマニアックな問題も出題されます.あらゆる臨床現場の側面を知り尽くしている2人が織りなす本書は,心電図読影の難易度にあわせて習得すべき話題・知識はもちろん,それに加えて3つの出題パターン〔即診断(Snap),精読,応用〕に分けた検定試験を乗り切るためのPitfall & Tipsが詰め込まれています.アブレーション・デバイスを日常的に診療している視点で心内心電図も知り得ている2人が贈る,不整脈に関する初学者向けのわかりやすい解説(PVC, Kent束, ペーシング波形など)も一読の価値ありです.
Bayés症候群, Peguero基準, crista supraventricularis pattern, Spodick徴候, dagger-like Q wave, Crochetage, Katz-Wachtel現象…
マイスターを狙う皆さま,上記のパワーワードをもしご存知でなければ,ぜひ本書を手にとってみてください.専門医の私もはじめて知り得ることができ,大変勉強になりました.
そして,心電図をこよなく愛する全国の皆さま,この“名著”を片手に心電図検定でまたお会いしましょう.最後に,著者の2人の心電図に対する熱意と愛情に心から敬意を表します.この度は名著のご出版,おめでとうございます!
※日本不整脈心電学会認定 心電図検定の詳細は下記をご参照ください
URL:https://new.jhrs.or.jp/recognition/kentei/