書 評
瀬尾由広
(名古屋市立大学大学院医学研究科循環器内科学 主任教授)
本書『循環器内科医のための経食道心エコー』は,循環器内科医が経食道心エコー(TEE)を効果的に学び,臨床で活用するための優れた教科書である。構造的心疾患(SHD: Structural Heart Disease)治療が急速に進展する中,本書は初心者から熟練者まで幅広い層を対象とし,基礎から応用までを網羅的に解説している。
特に冒頭では,初心者向けにTEEの基本操作や解剖学的な基礎が丁寧に記載されており,入門者が安心して学びを始められる構成となっている。また,超音波装置の設定や操作方法についても詳細に解説されており,これからTEEを始める医師にとって実践的な手引きとなる。SHD治療の重要なツールとしてのTEEの魅力が,編者二人の教育熱心な姿勢を通じて伝わってくる。
第二章以降では,疾患別にTEEの応用が解説されており,左心耳閉鎖術,僧帽弁修復術,TAVIといったSHD治療における術中ガイドや評価方法が具体例とともに展開されている。著者らの豊富な経験をもとにした実践的なアドバイスや高解像度の画像を用いた解説は,初心者だけでなく熟練者にとっても大いに参考になるだろう。さらに,本書の特長として,動画や図表を活用した視覚的な工夫が挙げられる。臨床現場で役立つ具体的なシナリオをイメージしやすく,読者が効率よく情報を吸収できる構成となっている。さらに,文字数を抑えつつも内容が充実しており,多忙な医師にとって有効な時間活用を可能にする点も見逃せない。超多忙な筆者らの優しさや配慮が随所に感じられる一冊である。
本書はTEEを普段行わない循環器内科医にとっても,SHD治療や循環器病学全般を深く理解する上で貴重な視点を提供しており,是非一読をお勧めしたい。
著者たちの努力と情熱に深く敬意を表し,本書が多くの医師に手に取られ,日本の循環器診療のさらなる発展に寄与することを期待したい。