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第3章 運動器系(下肢)
3 下肢の筋
- 下肢の各筋の起始・停止を暗記する
- 体表から,筋の起始・停止を指で指し示すことができる
- 各筋の働きを,身体を使って表現することができる
1大腿前面の筋(図2,表1,2)
- 大腿前面の筋は,主に股関節の屈筋と膝関節の伸筋から構成される.
1腸腰筋 (図1)
- 腸骨筋と大腰筋を合わせて腸腰筋という.
- ①
腸骨筋 :腸腰筋の外側部を構成する筋である.腸骨窩の広い領域から起こって下内側へ走行し,大腰筋と合して大腿骨の小転子に付着する. - ②
大腰筋 :腸腰筋の内側部を構成する筋である.起始領域は浅頭と深頭に区分され,その間を腰神経叢(⇨p.161)の枝が走行する.また,大腰筋の表面を覆う筋膜は上部では肥厚して内側弓状靱帯となり,横隔膜の起始部となる.
- ①
2小腰筋
- 第12胸椎・第1腰椎から起始し,大腰筋の前方を下行して薄い腱膜となり,腸恥隆起の付近に停止する.日本人では約60%で欠如する(そのため,腸腰筋には含まれない).
3恥骨筋
- 平坦な四角形の筋で,しばしば浅層と深層の2層に分かれる.大腿神経と閉鎖神経の前枝からの二重神経支配を受ける.
4縫工筋
- 大腿前面の最浅層を走行し,股関節と膝関節を越える二関節筋(⇨p.144 Point)である.細長い形状をしており,人体の中で最も筋線維が長い(固有背筋の最長筋が「最長の筋」ではない).停止部では半腱様筋,薄筋とともに
鵞足 を形成している.
5大腿四頭筋
- 大腿の前面と側面の大部分を覆う筋で,大腿直筋・外側広筋・内側広筋・中間広筋から構成される.非常に強力な膝関節の伸筋であり,
拮抗 筋であるハムストリングスの3倍の張力を発揮することができる. - 遠位部では4つの筋の腱は合流し,大腿四頭筋腱を形成する.また,その延長部は膝蓋靱帯となって膝蓋骨を脛骨粗面につなぐ役割をもつ.
- ①
大腿直筋 :大腿四頭筋で唯一の二関節筋であり,膝関節伸展に加えて股関節屈曲の作用をもつ. - ②
外側広筋 :大腿四頭筋のなかで最も大きい筋で,大腿の外側面を覆う筋である. - ③
内側広筋 :大腿の内側面を覆う筋である. - ④
中間広筋 :大腿直筋の深層で,外側広筋と内側広筋の間にある筋である.
- ①
6膝関節筋 (⇨図3B)
- 大腿四頭筋の深層にある小さな筋束で,中間広筋の一部が分かれたものである.大腿骨体の前面下部から起こった後に,膝の関節包と膝蓋上包に付着している.
- 膝関節筋は膝関節を伸展する際に関節包を上方に引いて,膝蓋骨と大腿骨の間に
挟 まれることを防ぐ役割をもつ.
大腿の筋区画(コンパートメント)
大腿の筋は厚く強靱な大腿筋膜(下肢の深筋膜)に覆われており,筋間中隔によって以下の3つの筋区画(コンパートメント)に分かれている(⇨3章-4図2も参照).
①前区画(前部コンパートメント):主に膝関節の伸筋群から構成され,大腿神経支配の筋が多い.
②内側区画(内側コンパートメント):主に股関節の内転筋群から構成され,閉鎖神経支配の筋が多い.
③後区画(後部コンパートメント):主に膝関節の屈筋群から構成され,脛骨神経支配の筋が多い.
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