※本ウエブサイト上では一部図表を割愛しています
Chapter1
なぜ医療プロフェッショナリズムが重要なのか
John Frain
(University of Nottingham UK)
Overview
- 医療プロフェッショナリズムは,個人の尊厳を尊重することのうえに成り立つ.
- 各医療専門家,医療サービス提供者,専門機関,および規制機関は,患者に対して「first, do no harm(何よりも,害をなしてはならない)」.
- 現代のプロフェッショナリズムは,患者と専門家の安全および幸福(ウェルビーイング)を支える組織体系のなかにおける,患者と専門家のパートナーシップである.
- ケアの義務は,不平等な可能性がある医療提供者や医療専門家との関係から,患者を保護する.
- 医療における不作法で無礼な風潮は,医療専門家の不信感と燃え尽き感(バーンアウト)を助長し,患者ケアにダメージを与える.
- 医療プロフェッショナリズムは,安全な患者ケアの基盤であり,医療過誤の一因となるヒューマンファクターに対処するものである.
1はじめに
私たちは,皆,人間である.人間としてのあり方は,皆,同じである.すなわち,私たちは苦しみ,間違いを犯し,理想からかけ離れてしまうことがある.同様に,私たちは皆,偉大で優れた能力をもち,他人のニーズを自分自身より優先させることができる.私たち一人ひとりは唯一無二の存在であり,無視されることや奪い去られることが決してない価値がある.人生において私たちは,単に自分たちの時間をつぶすだけではなく,社会に参加して,自分に満足感をもたらす役割を果たすべきである.古代ギリシア人は,真の幸福を,卓越性に従い,自身の能力を十分に発揮することである,と定義していた(Box 1-1参照).これらの概念は,古代から支持されてきた.
私たちはコミュニティや社会のなかで協力している.なぜなら,そうすることが自分の利益になり,また自分が所属する集団の利益になるからで,つまり協力することによって相互利益になるからだ.私たちのなかには,苦しみを和らげ,他者を治療し,生活の質の改善や向上に努める者もいる.他者の生活に介入することは,責任を伴う挑戦である.このこともまた,はるか昔に認識されていたことであり,ヒポクラテスは「first, do no harm(何よりも,害をなしてはならない)」と述べた.
医療専門家によるこのケアの出発点は,ヒポクラテスの誓いのなかでより明瞭に示されている(p.63 Box 5-1参照).これは当時の医師たちに向けられたものではあるが,この誓いが象徴する原則は,現代のすべての医療専門家や医療機関の責務を反映している.さまざまな設定に合わせ,改変されてきてはいるが,その本質は基本的に不変である.21世紀に,欧米の専門機関が共同で策定した医師憲章は,ヒポクラテスの誓いにとって代わるものではなく,むしろそこから派生したものである(Box 1-2参照).加えて,規制機関もまた,各専門分野でこれらの概念を反映した価値観および実践の指針を策定している(参考文献・引用文献参照).
2専門職集団の形成とケアの義務
「専門職集団(プロフェッション,profession)」としての医療の概念は,中世後期に専門家のギルド(同業者組合)の形成によって誕生した.当初この言葉は,実践家自身の行動の基準と規範を含んだもので,本質的に医師中心のものであったが,やがて,他の競合する職業から医療行為を保護することと,医療行為の商業的実施を統制する規則によって,その概念はさらに進化することとなった.前世紀後半における医療サービスの社会化と患者中心の医療の発展の結果,プロフェッショナリズムは医師と社会との契約と説明されるようになった.この契約は,資金調達,資源配分,および消費主義の問題を取り上げているが,最も重要なこととして,患者自身の見解がさまざまな医療関係者のものよりも確実に聞き届けられるようにすることだとしている.これは,Engelが「患者の問題は何か」というだけではなく,「患者自身が問題だと思っていることは何か」であると述べたことに該当する(Engel GL:The need for a new medical model:a challenge for biomedicine. Science, 196:129-136, 1977).このように治癒のプロセスとは,単に病気を取り除くことだけでなく,患者が自己の力と潜在能力を十分に活用することを可能にすることでもある(Chapter 3参照).
患者と医療従事者とのパートナーシップは,次のように表現されている.
患者:私は苦しんでいます.
専門家:私は考えます.
患者と専門家:私たちで一緒に行動しましょう
(Skelton, 2002)
たとえ本当に患者中心であっても,このパートナーシップは依然として不平等となる可能性がある.患者は,専門家の知識と技能に頼り,それらを誠実に適用してくれると信頼するほかない.患者は,それを判断するのに十分な専門知識をもたない可能性があるため,医療専門家が正しいことを行うと信用するしかない.法律では,これは「ケアの義務」によって規定されている(Box 1-3参照).患者が医療を受ける手段と方法は個人と組織の両方によってコントロールされているため,両者とも患者に対するケアの義務を負う.
医療従事者の雇用条件と規制要件は,大部分が医療提供者と専門機関に委ねられている.専門家がその機関に自由にかかわることができるとしても,これらの機関が,雇用条件を設定し,その条件の適用をコントロールする.ここでも,個人は当該医療技術者によって公正に扱われ,自らの尊厳が尊重されるものとして,当該医療技術者を信用する.専門家はその役割にかかわらず人間であるから,ケアの義務は,「first do no harm(何よりも,害をなしてはならない)」に基づいており,これらの組織の文化にしっかりと組込まれているべきである.同様に,個人に期待される透明性と誠実の義務は,医療提供者,専門機関,および医療の提供に影響を及ぼすその他の組織によって実践されなければならない.
したがって,臨床プロフェッショナリズムには,社会的,倫理的,および法的な側面が存在する.これらの側面は,医療専門家に対する社会の期待,および臨床行為の範囲に関する制約を定義するのに役立つ(Chapter 9参照).私たちは,患者の安全を確保するための積極的な「美徳」として,医療プロフェッショナリズムを推進する(Chapter 7参照).規制の枠組みは,医療専門職の一員になるための必要条件,継続的な診療能力の監視,個人を医療専門家として登録するのが適切ではなくなる状況の特定について規定するためにも必要である(Chapter 11参照).規制の方法は,適切かつ思いやりをもって適用されるとき,患者だけでなく実践家の保護にも役立つことを理解することが重要である.このプロセスは,臨床現場において,ある場面で必要となることを反映している(Box 1-4参照).
3それでは,「医療プロフェッショナリズム」とは何か?
プロフェッショナリズムは,その欠如によって定義されることがあまりにも多い.「彼はあまりプロフェッショナルでない」というように,それが存在しないときによく使われる.しかしながら,専門家と患者との関係を,信頼によって保たれているパートナーシップ,および法律・規制上の枠組みのなかの専門家の患者に対するケアの義務とみなすと,医療プロフェッショナリズムはこのパートナーシップが最も保証される仕組みである.どんなスキルであれ,その獲得と適用には,個人と組織の自己規律が必要となる.さまざまな関係者間の共通した医療プロフェッショナリズムの定義は,現在作業が進められている.しかしながら,プロフェッショナリズムには,次のような一般的合意がある.
「公衆が医師に対して抱く信頼を裏付ける一連の価値観,行動,および関係性」
Royal college of physicians of London(ロンドン王立内科医協会),2005年
医療プロフェッショナリズムの範囲は世界中の専門機関によって定義されているが(参考文献・引用文献参照),一般市民自身の期待はどうであろうか?
4公衆の視点
医師の職業的属性に関する55項目の評価尺度に対し953人が回答したオンライン調査がある.この調査によって,一般の人々は患者との関係を重要と考えていることが見出された(Chandratilake M, et al:Medical professionalism:what does the public think? Clin Med (Lond), 10:364-369, 2010).医師は,個人および専門家としての生活全体にわたって,高い価値観,優れた行動,前向きな姿勢をもつことが期待されていた.これらの役割は,「クリニシャンシップ(臨床医としての技量)」,「ワークマンシップ(労働者としての技量)」,および「シチズンシップ(市民としての技量)」という状況において生じる(Box 1-5参照).公衆は,医師がどんな場面でも自信をもち,信頼でき,頼りになり,落ち着きがあり,説明責任をもち,献身的であることを期待している.個人の外観,身体的特徴,または社会的地位は,医師が「プロフェッショナル」とみなされるのにほとんど,または全くと言っていいほど関与しないだろう.これらの属性は,各専門家が役割に応じてさまざまな程度で行使するものの,すべての状況で重複し,相互作用する(図1-1参照).
ワークマンシップとシチズンシップの価値観は社会のなかの他の人たちとも共有されるものであり,「クリニシャンシップ」は他の医療専門家と共有されているものである.同僚との関係と同僚に対する尊敬は重要であると考えられている.ワークマンシップ,シチズンシップのどちらも,私たちが社会のなかの他の人々と同じであると定義されているが,特に「クリニシャンシップ」でもそのように定義されている.すなわちヒッポレギウスのアウグスティヌスの言によれば,「あなたといるとき私は労働者であり,市民である.あなたにとっては私は臨床医である」ということになる.医療専門家には地位だけでなく,責任もある.今日ではワークライフバランスに関する必要な議論があり,それはウェルビーイングに寄与するが,公衆は依然として,医療には天職的要素〔vocation(天職):「to call(呼び出すこと,召命)」を意味するラテン語vocareから〕があると認識している.これは,教師や警察官など他の役割にも共通する.そのことは,William Oslerが述べたように,私たち専門職集団というものは,労働者,市民,臨床医としての私たちの役割が,専門家としての生活と個人的生活の両方のなかでの私たちの考えと行動として示されるべき生き方であることを示唆している.確かに,私たちの個人的な幸福は専門家としての幸福を促し,その逆もまた然りである.
5学生は?
医療系の学生は,自分自身が「プロトプロフェッショナリズム」の立場にある(もはや公衆の一員ではないが,有資格医療実践家として登録されてもいない)ことを知り,医療提供の現実,つまり前述の3つの状況のなかで,どのようにプロフェッショナリズムを行使するのかという,プロフェッショナルとしての自己の発達に関する独自かつ価値のある視点をもつことが大切である(Chapter 2参照).確かに医学部在学中に学業上および(または)個人的な問題と並行して,職業上の問題に直面することがある.医学部在籍中の問題は将来の能力の問題を予測するものであるため,トレーニング中に問題を生じている学生を特定し,サポートすることは,患者,学生,およびこの専門職集団にとって重要である(Papadakis MA, et al:Disciplinary action by medical boards and prior behavior in medical school. N Engl J Med, 353:2673-2682, 2005).英国の医事委員会(General Medical Council)は,その指針「適正診療規範(Good Medical Practice)」を医学生の状況に適応させた.プロフェッショナルとしての能力の形成は,トレーニングの最初の段階からはじまり,周囲の状況に依存している.この周囲の状況とは,多くはトレーニング時の臨床教員や医師とのやりとりのことである.医療系のカリキュラムでは,テーマとしてプロフェッショナリズムを反映することが増加しており,評価ツールも開発され,その有効性も認められている(Chapter 10参照).
6ロールモデリング
専門家としての価値観の獲得は,学生のトレーニング環境と,特に低学年で出会った医療従事者による影響を大きく受ける.ロールモデルは臨床教員であることが多い(Box 1-6参照).ロールモデリングは学生トレーニングの状況で言及されることが多いが,資格取得後にも当てはまり,学際的である.若い世代が誰かをロールモデルとするだけでなく,若い世代がロールモデルとなることもあり,また個人と組織の間でロールモデリングが行われる.
通常,学生は理想主義者としてトレーニングを開始する.公式・非公式な教育で学生が教えられることと,実際に起こっていることの観察の間に違いがある場合がある.これは特に,行動,態度,信念,および価値観(プロフェッショナリズムのすべての側面)に影響を及ぼす.学生は,教員やロールモデルの観察によって,自己の専門家としての行動を身につける.教員が言っていることと実際に行っていることが異なると,トレーニング中の学生の苦痛の大きな原因となる.したがってそれは,専門家としての行動の不適切な基準が,学生と臨床医との間に固定化してしまうことにつながる.
学生は,病棟で「利他主義,責任,正直さと誠実さ,敬意」を,また,教育/学習環境で「卓越性,リーダーシップ,および知識とスキル」が臨床教員から示されることを高く評価している(Karnieli-Miller O, et al:Which experiences in the hidden curriculum teach students about professionalism? Acad Med, 86:369-377, 2011).肯定的行動と否定的行動のどちらにおいても,臨床教員はロールモデルとなる(Box 1-7および1-8参照).
7プロフェッショナリズムからの逸脱
期待される行動の基準を遵守できない,または満たすことができないと「逸脱(lapse)」となる.個別的であるが逸脱の重要な事象は多くの理由によって発生し,継続的な個人的・専門的プロフェッショナリズムの形成には自己診断が必要であり,専門職集団全体の支援も必要である.学生は,履修課程のなかで逸脱を目にすることがある.逸脱を起こすのは,学生仲間や,臨床教員のこともあるし,事務スタッフの場合もある(図1-2参照).その結果,理想が侵食され,トレーニングと医療に関するシニシズム(冷笑主義)が増大する(Box 1-9参照).このシニシズムは,トレーニングの最初の1年以内にはじまり,医学領域では臨床1年目(通常3年次)の間に加速する.そして,専門職集団のなかで年長者として理想的状態に近づいていく前に,実際に診療をはじめた早期にシニシズムはさらに深まっていく.
逸脱の性質は,ライフスタイルや働き方の変化とともによって変わってきた.医療系の専門職集団は,インターネットを早期に導入しており,これには疑いようのない利点が確実にある(Chapter 5参照).米国の外科スタッフを対象にした研究において,下級医師の64%と上級医師の22%がFacebookの自分のページをもっていた.これらのページのうち,50%は一般にアクセス可能で,アクセス可能なページの31%に仕事関連のコメントが含まれ,14%が特定の患者状況,または患者ケアに言及していた(Landman MP, et al:Guidelines for maintaining a professional compass in the era of social networking. J Surg Educ, 67:381-386, 2010).ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を頻繁に使用することは,医療プロフェッショナリズムのスコア,特に公正さに悪影響を及ぼす可能性がある.
8医療の文化
学生は,ほぼ間違いなく理想主義者としてキャリアを開始し,彼らが働くことを熱望するその環境において,プロフェッショナリズムの浸食を受ける(Chapter 6参照).模範的な患者中心のケアを提供する個人と組織は多数あるが,患者のケアと患者をケアする個人にダメージを与える有害な要素もある.この毒性には多くの要素が含まれるが,不作法,無礼,軽蔑的な意見は,ユーモラスであろうとなかろうと重要である.これらの逸脱は,学生に最も大きな苦痛を与える.軽蔑的なコメントは,通常は(少なくとも患者の)耳に入らないところで,患者および同業者に向けられることが最も多い.ほとんどの人はそのような意見が無礼かつ非人間的であることを認めるが,同時にプレッシャーを受ける環境で働いている限りやむをえないと見なされる.航空業界は,医療におけるリスク管理のモデルとして引用されることが多い.確かに,航空業界は医療における不作法・無礼の影響の明白な例となる(Box 1-10参照).
患者安全運動は,診療とシステム設計の技術的側面にいくらかの影響を及ぼしたが,スタッフ間の関係性要因と患者ケアへの影響に関する研究は限られたものしかない.新しく資格を取得した看護師については,対人関係の争いが出勤拒否症およびスタッフの確保に大きく影響した.対立の解決に関するトレーニングを受けたことのある者,またはそのような出来事の後に事情を報告された者はほとんどいなかった(McKenna BG, et al:Horizontal violence:experiences of Registered Nurses in their first year of practice. J Adv Nurs, 42:90-96, 2003).英国のフランシス報告書によると,スタッフの態度の悪さは,患者の有害アウトカムの一因となる.模擬新生児集中治療室において無作為化比較試験を行い,軽度の無礼が診断・処置業務に及ぼす影響を検討したところ,無礼があった群となかった群における処置義務のアウトカムの差の12%は,無礼に付随するさまざまな要因ではなく,無礼そのものが原因であった.情報共有と支援を求めることを考慮して分析すると,そのアウトカムの差は増加した(Riskin A, et al:The Impact of Rudeness on Medical Team Performance:A Randomized Trial. Pediatrics, 136:487-495, 2015).
安全な患者ケアには,礼儀正しさと敬意が,どんな物質的または技術的なものに劣らず重要な要素であり,十分すぎるほどにもち合わせていなくてはならない.臨床指導者は,礼儀と配慮が実践されたときには,特に医療安全に関する医療スタッフの危険認知機能が向上する,という礼儀と配慮から生じる肯定的利益をより促進するようにすべきである(Chapter 9参照).
9職業上のバーンアウトと自殺
2016年にThe Lancetは,医療従事者の間でバーンアウト(燃え尽き症候群)が「流行」と呼べるほどの割合に達したと報告している(West CP, et al:Interventions to prevent and reduce physician burnout:a systematic review and meta-analysis. Lancet, 388:2272-2281, 2016).医療従事者が自分自身の仕事によってダメージを受けているというエビデンスは,十分に確立されており,これは憂慮すべきことでもある(Chapter 4参照).技術的な進歩にもかかわらず,医療サービスについては主たる提供方法がいまだ人から人であり,その持続可能性には疑問がもたれている.医療従事者の自殺率は,一般人口よりも数倍高く,苦情や規制調査に携わる人ではさらに上昇する.患者を治療する人の安全性も優先事項とならない限り,患者は完全に安全ではあり得ない.
ウェルビーイングとレジリエンス(回復力)は,単にバーンアウトと自殺念慮がないことではなく,「自分の得意とする能力を,命のある限り最大限に発揮すること」,すなわち,患者のケアを安全に,成功裏に行うことである.家族の機能を果たしていない家庭の両親が子どもたちに落ち着くように指示できないのと同様に,レジリエンスを強制することはできない.しかしながら,私たちは,個人,同僚,リーダーとして,患者,専門家に対するやり方と同様に,レジリエンスを促し,サポートすることはできる.バーンアウトを減らすための介入についてのWestの系統的レビューでも限られた数の戦略しか特定されなかった.しかし,成功した介入は個人中心と系統的・組織的の両方であることは明らかであり(Box 1-11参照),このことは,医療専門家は組織に従うだけの存在ではなく,組織と同等のパートナーとして働くべきであることを意味している.
苦情に巻き込まれている人(これはいずれかの段階での私たち全員を意味する)は,バーンアウトや自殺に特に脆弱である.このことは,システムと組織の構造のなかで考慮されるべきである(参考文献・引用文献参照).責任があれば責任を負うべきではあるが,認識された個人の欠点だけに焦点をあてると,その人の個人的・専門家としての孤立を招き,時には,その結果が本人,その家族,友人にとって甚大な影響を与えるものとなることもある.個人だけに注意を集中すると,臨床的過誤に影響するシステムまたは組織の問題を見落とす場合があり,したがって再発の可能性が高くなる(Reason J:Human error:models and management. BMJ, 320:768-770, 2000).
10おわりに
臨床医と患者との関係は,依然として医療を提供する際の重要な要素である.ケアの義務は,患者との相互作用があるところに発生するが,専門家同士の関係および患者にサービスを提供する者と医療機関との関係のあり方においても生じる.礼儀正しさと敬意は,臨床プロフェッショナリズムの基本原則であり,患者の安全性の向上に不可欠である.それらが欠如するとシニシズムとバーンアウトにつながり,これらはすべての人にダメージを与える可能性がある.臨床指導者は患者ケアの最善の利益を目的として専門家の卓越性に沿った能力を発揮するために人中心であるべきであり,またこれらの目的のために動機づけされるべきである.
参考文献・引用文献
- ABIM Foundation,ACP-ASIM Foundation,European Federation of Internal Medicine:Medical professionalism in the new millennium:a physician charter. Ann Intern Med, 136:243-246, 2002
- Chandratilake M, et al:Medical professionalism:what does the public think? Clin Med(Lond), 10:364-369, 2010
- Papadakis MA, et al:Disciplinary action by medical boards and prior behavior in medical school. N Engl J Med, 353:2673-2682, 2005
- Karnieli-Miller O, et al:Which experiences in the hidden curriculum teach students about professionalism? Acad Med, 86:369-377, 2011
- Landman MP, et al:Guidelines for maintaining a professional compass in the era of social networking. J Surg Educ, 67:381-386, 2010
- Riskin A, et al:The Impact of Rudeness on Medical Team Performance:A Randomized Trial. Pediatrics, 136:487-495, 2015
- West CP, et al:Interventions to prevent and reduce physician burnout:a systematic review and meta-analysis. Lancet, 388:2272-2281, 2016