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第7章 運動系
1 筋力
藤井 克則
(千葉大学大学院医学研究院小児病態学)
1考えかた
手足の動きは日常生活をするうえで重要であり,どの筋がどう動かないのか,反射があるのかないのかを知ることは診断上不可欠である.そのための最低限の診察法は心得ておきたい.
2検査のタイミング
- 手足の動きが正常でないと感じるとき.
- 歩行がぎこちなかったり,手指巧緻運動が適切でないとき.
-
症状が持続して,日常生活に不自由を感じるとき.
- 手足の筋力を3徒手筋力テストの順番に従って診察する.
3徒手筋力テスト(MMT)
- 四肢の筋力を6段階で評価する方法である(表1).
- 主観的な検査だが,臨床でよく用いられる.
- MMT3以下の場合に「障害あり」と判定する.
A) 上腕二頭筋
【検査法】- 被検者の上腕を伸展位から屈曲させて,検者の伸展させようとする力への抵抗をMMTで評価する(動画1).
- 障害がみられる場合,脊髄中心レベルはC5である.
B) 腕橈骨筋
【検査法】- 被検者に手首を伸展位から屈曲させるように指示し,検者の伸展させる力への抵抗をMMTで評価する(動画2).
- 障害がみられる場合,脊髄中心レベルはC6である.
C) 上腕三頭筋
【検査法】- ①被検者に肘を屈曲させた状態から前腕を伸展させる(動画3).
- ②検者は前腕を屈曲させる力を加え,その抵抗力をMMTで評価する.
- 障害がみられる場合,脊髄中心レベルはC7である.
D) 大腿四頭筋
- 座位と背臥位で評価できるが,座位の方が評価しやすい.
- ①被検者をベッド際に座らせる(動画4).
- ②被検者に下腿を水平に挙上させるように指示し,検者がそれを押し下げることで大腿四頭筋筋力を測定する.
- ①下肢を伸展させた姿勢のままその位置を保つように指示する(動画5).
- ②検者は左手で膝を保持し,右手で被検者の動きに打ち勝つように押し下げることで大腿四頭筋筋力を判定する.
- 障害がみられる場合,脊髄中心レベルはL4である.
E) 大腿屈筋群
- 座位と背臥位で評価できるが座位の方が評価しやすい.
- ①被検者をベッド際に座らせて膝を屈曲させる(動画6).
- ②被検者に下腿を屈曲させたまま保持させてそのままの位置を保つように指示する.
- ③検者は下腿を上方に向けて力を加えることで大腿屈筋群筋力を測定する.
- ①下肢を屈曲させた姿勢をとったまま保持させてそのままの位置を保つように指示する(動画7).
- ②検者は上方に下腿を押し上げることで大腿屈筋群筋力を判定する.
- 障害がみられる場合,脊髄中心レベルはS1である.
F)腓腹筋
【検査法】- ①足関節を背屈した状態にしておき,底屈させるように指示する(動画8a).
- ②検者は背屈する方向に力を加えることで前脛骨筋の筋力を判定する.
- 障害がみられる場合,脊髄中心レベルはL4である.
G)前脛骨筋
【検査法】- ①足関節を底屈した状態にしておき,背屈させるように指示する(動画8b).
- ②検者は底屈させる方向に力を加えることで腓骨筋の筋力を判定する.
- 障害がみられる場合,脊髄中心レベルはS1である.
H)上肢Barré徴候
【検査法1:立位】- 90度方向に上肢を挙上し,下がれば筋力低下と判定する(動画9).
- 45度方向に上肢を挙上して,下がるかどうか観察する.
- 障害がみられる場合,脊髄中心レベルはC5である.
I)Mingazzini徴候
【部位】- 主に腸腰筋の筋力を判定できる.
- 被検者を背臥位にして,下肢を水平位に挙上させる(動画10).
-
異常がみられる場合,障害レベルはL2である.
- Point被検者の努力が必要なため,4歳以上が適応になる.
J)下肢Barré徴候
【部位】- 大腿屈筋群(ハムストリングス)の筋力を判定できる.
- 被検者を腹臥位にして,下肢を90度挙上させる(動画11).
- 異常がみられる場合,障害中心レベルはS1である.