第5章 在宅医療の運営
4 機器・物品管理① 豊田地域医療センターの機器・物品管理
溝江 篤
(藤田医科大学/豊田地域医療センター 総合診療科)
- 検査機器と中材物品の管理について当院で行っている管理方法と定期チェックの方法を紹介する
- 患者へ不利益が生じないようにするため,細かなバックアップ体制にするなどの工夫をしている
- 多職種でチェックすることで算定漏れがないようにする
はじめに
訪問診療では検査機器や中央材料室物品(中材物品)を使用することが多いと思います.管理なしには診療は回らず,各施設で工夫がなされていると思います.本項では豊田地域医療センター(以下,当院)でどのように検査機器・物品管理を行っているかを紹介します.
当院在宅部門で所有している検査機器
- 携帯型超音波画像診断装置〔ポータブルエコー,(Vscan:2台,SonoSite:1台)〕
- 耳鏡,電子耳鏡
- 眼底鏡
- 心電図(12誘導)
- 血糖測定器
すべての機器が1カ所に集約されており(図1),使用するときに持ち出します.使用後は決まった場所に返すことで紛出しないようにしています.在宅で最も使用するものはポータブルエコーです.超音波検査(US)では重さと解像度で使用する機器を選択しています.個人的にはVscanは持ち運びしやすく,SonoSiteの方が解像度がいいと感じています.スクリーニングの際にはVscanを使用し,より詳細な画像検査をしたい場合にはSonoSiteを使用しています.超音波検査施行後は電子カルテ上で「腹部超音波検査」などの処置オーダーを記録として残します.また当院独自の「訪問診療・US実施連絡票」(図2)に必要項目を記載し,事務へ提出し,画像の取り込みをお願いしています.
当院在宅部門で管理している中材物品
当院で使用する中材物品として13 cm有鉤鑷子,外科剪刀があります.これらは定数が決められ管理されています.
訪問診療で中材物品を使用すると中材物品ボックスへ回収します.そして月・水・金の9時に中央材料室へ物品を持っていきます.その後中材物品は洗浄・乾燥された後,機器に不備がないかを確認し,不備があれば廃棄します.不備のない物品はパッキングされ,オードクレーブにより滅菌を行います.滅菌した日から6カ月間が有効期間となり,6カ月後の日にちが包装に印字されます.15時30分までにこの工程が終わり,在宅部門のスタッフが中央材料室に回収に行きます.回収された物品は棚に返却され,訪問診療バッグで使用されるたびに補充されます.また物品の個数は在宅部門と中央材料室で使用頻度から数を決めています.
薬剤物品について
当院における薬剤物品としては薬液セットと点滴・輸液セットがあります(中身の詳細は3章1 表1を参照).医師は帰院後に訪問診療で使用した薬剤物品があるケースやタッパーがあれば机の上のタッパー置き場に返却します(図3).事務が物品の中身がわかるラミネートとケースの中身を照合して,足りない物品があれば薬剤部に発注をかけて補充を行います.補充自体は機械的に行われますが,返却の際に「ラシックス使いました,補充をお願いします」などの声がけをすることで後の作業が行いやすくなります.些細なことですがちょっとした声かけが管理の隙間を埋めると感じています.
機器・物品のチェック頻度
1)訪問診療ごとのチェック
訪問診療が終わるたびに使用物品の確認を行います.中身については図4のような一覧がラミネートされて物品準備台の近くに配置されていて,何が足りないかをいつでも確認できるようになっています.
2)定期チェック3カ月
3カ月に1度(3月,6月,9月,12月)の頻度ですべての訪問診療バッグの物品の有効期限を確認しています.このチェック日に血糖測定器の有効期限も確認することになっています.現在当院で使用している訪問診療バッグは12個あります.12個の物品の有効期限を表に書き出し,次の定期チェックまで有効期限がないものは中央材料室へ回します.そのことで必ず有効期限切れがないようにしています.
算定漏れを防ぐために
訪問診療・US実施連絡票の記載がない場合には事務から主治医へ連絡が行くようになっています.また主治医による電子カルテへの検査記録入力がない場合には医事課から報告があり,主治医へフィードバックがかかるようになっています.
おわりに
検査機器・物品管理について記載させていただきました.自分たちが行う作業には必ず前工程と後工程があります.医師が現場でいつも同じように物品があるのは,その前工程で事務側が物品チェックをしているからです.また後工程がスムーズになるよう医師も事務への情報共有が明確になる工夫をしています.当院の物品管理は多職種がお互いのことを考え,前工程と後工程を意識することで診療の質が高くなるよう努力しています.