書 評
武藤 真祐
(医療法人社団 鉄祐会 祐ホームクリニック)
新型コロナウイルス感染症の流行が始まってから,はや数年がたったが,その間,皆さんの患者さんの中にも,外出を控えたことにより老化現象が進みすっかり足腰が弱ってしまった方が増えたのではないだろうか.
コロナ下で高齢者のフレイル有症率が増加したという調査結果もあるが,フレイルと骨粗鬆症には密接な関連があると言われており,今後,高齢者の骨粗鬆症患者の増加が予想される.
骨粗鬆症によって起こる代表的な骨折である大腿骨近位部骨折や椎体骨折は,骨折後の介護リスクだけでなく死亡率も高めることが知られており,骨粗鬆症の予防および適切な診断と治療が,超高齢社会を迎えたわが国において重要な課題である.
本書では,まず第1章で「骨粗鬆症の治療の始めかた」と題して,骨密度はもちろん,患者さんの年齢や過去の骨折歴,併存疾患の有無や生活環境(運動習慣の有無や栄養状態など)を含め包括的に評価し,骨粗鬆症の治療が必要かどうか診断する方法について解説している.
続けて,骨粗鬆症の治療では,近年新たに使用可能となった薬も含めて非常に多岐にわたる薬剤の中から,患者さん一人ひとりに合った治療薬の選択が必要であるが,第2章〜第4章で,各治療薬の特徴や使い分け,効果不十分な場合の切り替え,合併症が生じた時の対応などについて,かかりつけ医の視点でわかりやすく解説されている.
さらに,予防はもちろん治療においても欠かせない運動療法および栄養療法についても,第5章において,骨密度の維持改善に役立つ実践しやすい運動の例や,必要な栄養素の解説がしっかり示されている.
また,骨粗鬆症の予防や早期発見のための第一歩は,骨粗鬆症検診を受けて自分の骨量を知ることであるが,全国的に検診受診率は低く,国としても「健康日本21(第三次)」目標の一つに『骨粗鬆症検診受診率の向上(目標値15%以上)』を挙げて取り組んでいる.本書でも検診の現状と今後の展望,骨粗鬆症リエゾンサービスなどについても紹介されており,骨粗鬆症診療の現状についても知ることができる.
高齢者の患者さんの中には,通院が難しく訪問診療を利用されている方も多い.地域の医師と看護師,薬剤師,リハビリテーションスタッフなどのメディカルスタッフがチームとして連携をとりながらかかわっていくことで,一人でも骨粗鬆症そして寝たきり患者さんの減少をめざしていくことが期待される.本書はそのために非常に役立つ実践的なガイドブックとなるであろう.私も在宅医として本書より学びたい.