近年，OCT（optical coherence tomography）ならびにOCTアンギオ（OCTA）は眼科の日常診療において，臨床的に多くの情報が得られる重要で必須の検査のひとつになっている．そのため，その検査所見を十分に理解し読み解くことは，網膜疾患を正確に診断し治療方針を構築する上で必要不可欠なスキルといえる．

「網膜診療クローズアップ（メジカルビュー社）」をはじめとして，評判の高い網膜疾患に関する専門書をこれまで執筆してきた著者が，今回OCT/OCTAに関する専門書を執筆したと知らせを受け，興味津々に本書を手にした．これまでの専門書とは，切り口が違い，斬新な構成であることに感銘を受けた．網膜疾患だけでなく，緑内障についても解説されていることは本書の特徴のひとつだろう．

本書は，病名ごとに症例が提示されているだけではなく，日常診療でよく遭遇するような患者のOCT/OCTAの所見を中心に症例が提示されている．また，各症例の検査所見から，考えられる鑑別診断を挙げ（「スナップ診断」），そこから確定診断にたどり着くために必要なプロセス，具体的にはOCT/OCTA所見の詳細に観察し解釈を深める方法とともに，OCT/OCTA以外の検査所見とを総合的に判断するというプロセスが「確定診断の進め方」にわかりやすくまとめてある．さらに，治療経過やその症例に対する振り返りまでが記されており，日常診療での思考手順を学習しながら，読者の診察のスキルアップに繋がるような構成となっている．同じような患者を診察した際に，スムーズに確定診断にたどり着き，適切な治療ができるだろう．

症例提示の後には，各疾患を掘り下げて，知識を深めるための「疾患をもっとよく知ろう！」というパートが準備されている．疾患概念や病態の理解に役立つパートであり，豊富な画像を提示しながら，正常と異常所見を見分けるための読み方と目のつけどころについて最新の知見も交えながら解説されており，診断力アップに直結するだろう．さらに，鑑別診断や治療法に関する情報に加え，コンサルテーションや患者に対する説明にまで踏み込み，日常診療ですぐに役立つ情報として提供されている．

著者が一人で執筆したということもあり，本書ははじめからおわりまで一貫性が保たれており，読者にとっても内容が頭に入りやすいという特徴も感じられた．Chapter 1から順番に読み進め，少しずつレベルアップするという使い方もできるし，目の前の患者の最終診断にたどり着くための実践的なガイド本としても使用できる．専門医を取得する前の若手の眼科医から専門医のみなさんまで，日常診療できっと役に立つ一冊となるだろう．OCTならびにOCTAの教科書として，ぜひ診察室に置いていただくことをおすすめする．

『レジデントノート2024年1月号』より転載