病態がみえる 検査値の本当の読み方〜ルーチン検査の見かたが変わる、病態把握と診断・治療に活かす7つの視点

病態がみえる 検査値の本当の読み方

ルーチン検査の見かたが変わる、病態把握と診断・治療に活かす7つの視点

  • 本田孝行/監,松本 剛/編
  • 2024年03月25日発行
  • B5判
  • 280ページ
  • ISBN 978-4-7581-2416-4
  • 4,400(本体4,000円+税)
  • 在庫:あり
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書 評

適切な検査データ解釈を行うと,症例の病態を立体的に把握できる!

菊池春人
(済生会横浜市東部病院 臨床検査科)

“この本はRCPCの本ではない!” このように書くと,「あ,そうだったんだ」と思われる方も多いのではないだろうか.RCPCにおいてルーチン検査を系統的に解釈する方法として「信州大学方式」というのを知っている方もいると思うので,書籍のタイトル,信州大の本田孝行先生監修,松本 剛先生編集ということから本書は一見「RCPCの本」のようにも見える.しかし,本書は(主に)検査データの解釈方法を学ぶものではあるもののRCPCという形ではない(筆者がざっと探したなかでは,RCPCという単語は2カ所しか見つけられなかった).なお,本誌「臨床検査」でEssential RCPCのシリーズ,姉妹誌「検査と技術」にはRCPCのシリーズが掲載されていたので,"RCPC"になじみのある方も多いかと思うが,簡単に説明すると,RCPCはReversed Clinico-Pathological Conferenceの略で,やり方にはいろいろとバリエーションがあるものの,基本的には症状や診察所見などの情報は最低限として,臨床検査データ(のみ)をもとに症例の病態をディスカッションしながら推定していく,という臨床検査のデータ読み方のトレーニング方法である.

ここで本書の章立てを示すと,「第0章 ルーチン検査とは」「第1章 ルーチン検査の読み方」「第2章 治療による検査値の変動」「第3章ケーススタディ」となっており,その合間に「臨床検査豆知識」「Column」が補足されている.本書がRCPCと異なる大きな点は第3章のケーススタディが,一般的な診療カンファレンスでの症例提示のように,主訴,既往,処方薬,生活歴,現病歴,身体所見が示されていることである.この後に初診時(入院時)のルーチン検査の結果が提示され,それを信州大学方式によって系統的に解釈している.さらに,その他の検査,診断と治療とつづき,入院後の検査データについての解釈が記載される,という形式である.本誌の読者に本書をお勧めしたいポイントの1つはこの「ケーススタディ」である.どうしても臨床検査を専門としている人間は検査「だけ」で病態を把握できると思ってしまいがちであるが,実際の診療においては,身体所見などの臨床的な背景を踏まえたうえで検査データを解釈することで,はじめて症例の病態が適切に解釈される.つまり,本書により臨床検査は病態把握を2Dから3Dへと立体的に把握できるようにするものだ,という位置づけを感じていただけるのではないかと考えているのがお勧めする理由である.

もう1つのお勧めポイントは第2章の「治療による検査値の変動」でこのような切り口はこれまであまり多くなかったように思われる.臨床検査技師の卒前教育のなかではあまり治療については教わってきていないこともあり,治療方法,治療経過のなかで注目する検査項目,および改善/増悪を示す検査値変動は非常に参考になるのではないかと考える.

本書は主に研修医を対象にしていると思われるが,前述のように臨床検査技師の皆さんにもとても参考になるもので,日常目にしている検査データの背景がより深く理解でき,さらには検査側から臨床医をサポートすることを可能にするための土台が学べるものだと思われる.ぜひご一読をお勧めする.

『臨床検査68巻9号』掲載

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病態がみえる 検査値の本当の読み方〜ルーチン検査の見かたが変わる、病態把握と診断・治療に活かす7つの視点

病態がみえる 検査値の本当の読み方

ルーチン検査の見かたが変わる、病態把握と診断・治療に活かす7つの視点

  • 本田孝行/監,松本 剛/編
  • 4,400(本体4,000円+税)
  • 在庫:あり