すべての臨床医が知っておきたいリウマチ・膠原病の診かた〜これならわかる!主要徴候から導く鑑別診断のポイント

すべての臨床医が知っておきたいリウマチ・膠原病の診かた

これならわかる!主要徴候から導く鑑別診断のポイント

  • 橋本 求,神野定男/著
  • 2024年10月18日発行
  • A5判
  • 416ページ
  • ISBN 978-4-7581-2419-5
  • 5,500(本体5,000円+税)
  • 在庫:あり
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第1部 「関節炎」を鑑別しよう

3)各関節炎グループの鑑別
②関節炎の性状

腫れ方から捉える関節炎の性状

関節炎の性状とは,関節を診察したときの「腫れ方」です.例えば,関節腫脹がやわらかい腫れなのか硬い腫れなのか,熱感があるのかないのか,などの所見によって,炎症性関節炎と非炎症性関節炎を分類することができます.

また,炎症性関節炎のなかでも,関節の中で主に炎症が起きている部位,具体的には滑膜炎,腱付着部炎,結合組織炎,滑液包炎のいずれかにより,それぞれ関節の腫れ方が異なります.本稿では,図1のように,それぞれの疾患で炎症が最も起きている部位,すなわち「炎症の主座」を意識した,関節炎の評価のしかたについて解説します.

それでは,次から示す図2〜7のような関節炎の腫れ方を認めた場合に,7つの関節炎グループのなかのどのグループが当てはまるかについて,順にみていきましょう.

関節リウマチ(RA)

図2の腫れ方は,RAに特徴的な腫れ方です.RAにおける炎症の主座は関節滑膜にあり,強い炎症を伴いながら滑膜組織が増殖します.したがって,RAでは関節局所が紡錘形に腫れることが多いです.RAの腫れた関節の柔らかさは,「パンの耳を触っているような」と形容されることが多いです.この写真では,第3指のPIP関節局所が腫れています.MCP関節が腫れたときには,隣り合うMCP関節との間のくぼみが見えなくなり,手背全体が腫れたように見えることもあります.

RAは炎症性関節炎であるため,患者は安静にしていても関節痛があります.この安静時疼痛の有無は,RAとOAの関節炎の性状の重要な鑑別点です.安静時疼痛の最たるものとして,RAでは朝のこわばりがあります.OAでも数分から数十分程度の朝のこわばりを伴うことがありますが,RAの朝のこわばりは最低1時間は続きます

  • RAは滑膜炎! だから関節局所が腫脹する.

変形性関節症(OA)

図3の腫れ方は,OAに特徴的です.OAでは,関節負荷がかかった部位で軟骨が摩耗し,骨と骨とが慢性的に接触をくり返すことにより,骨棘が横に飛び出してきます.OAの腫れた関節は,この骨棘によるものです.したがって,OAによる関節腫脹は硬い骨性の腫脹と呼ばれます.この触り心地だけでも十分にOAと診断することができます.骨棘による硬い骨の張り出しは,DIP関節のものをへバーデン結節(図3a),PIP関節のものをブシャール結節(図3b)と呼びます.

非炎症性関節炎ですので,RAのような柔らかい滑膜の腫れは触知されません.また,痛みは安静時には起こらず,労作の負荷がかかったときにのみ起きるということもOAの特徴になります.

なお,次稿において説明しますが,関節炎の部位特徴からもOAと診断することができます.RAでは,PIP,MCP,手関節に関節炎が起きますが,OAではDIP,PIP,CMC関節に関節炎が起きます.図3では,DIPとPIP関節に腫れが生じていますのでOAが疑われます.

  • OAは骨棘! だから腫脹はあっても硬い.
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