1.肺がん 2)非小細胞肺がん
Ramucirumab + DTX 療法
川澄賢司
基本事項
【適 応】
切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん 二次治療以降
【奏効率】REVEL 試験1)

【副作用】REVEL 試験1)

レジメンチェックポイント
- ① 前投薬の確認: Infusion reaction を軽減させるため,Ramucirumab 投与前に,抗ヒスタミン薬(d-クロルフェニラミンなど)の前投与を考慮すること.
- ② 投与量の確認
<次コースの投与開始基準2)>
参考:国内第Ⅱ相ランダム化比較試験(JVCG 試験)
< Ramucirumab:減量,休薬,中止基準3)>
<Ramucirumab:上記以外の減量,中止基準2)>
参考:国内第Ⅱ相ランダム化比較試験(JVCG 試験)
<DTX:肝障害時の投与基準>
T-Bil > ULN で投与中止.AST,ALT > 1.5 × ULN かつ ALP > 2.5 × ULN で投与中止(米国添付文書より)
<DTX>
投与当日の好中球数が2,000/mm3 未満であれば投与の延期を考慮する.
- ③ 投与速度の確認(Ramucirumab)
初回はおよそ60 分かけて点滴静注し,2 回目以降は忍容性が良好であれば30 分まで投与時間が短縮可能である.Grade 1,2 のInfusion reaction が発現した場合は,投与速度を50 %減速し,次回以降も初回発現時同様,50 %減速にて投与する.Grade 3,4 の場合は投与を直ちに中止し,再投与しない. - ④ アルコール過敏症の確認:DTX(タキソテール®)の添付溶解液にはエタノールが含まれているので,アルコールに過敏な患者に投与する場合は,添付溶解液を使用せずに生理食塩液または5 %ブドウ糖液で溶解すること.アルコールで希釈された製剤では,アルコールを抜くことはできないため注意する.なお現在はプレミックス製剤でも,アルコールを含有しない製剤も発売されている(p.160 参照).
- ⑤ 相互作用(DTX):アゾール系抗真菌薬(ミコナゾールなど)やエリスロマイシン,クラリスロマイシン,シクロスポリン,ミダゾラムの併用によりCYP3A4 を阻害,またはDTX との競合により,DTX の血中濃度が上昇し副作用が強くあらわれることが考えられる.
★ DTX 製剤について
現在本邦においては,アルコールを含む添付溶解液にて希釈後使用する製剤と,すでにアルコールなどで希釈された製剤,およびアルコールを含有しない液体製剤などが販売されており,濃度,アルコール含有量が異なるため注意が必要である.
副作用対策と服薬指導のポイント
① 発熱性好中球減少症(FN):DTX 単独療法と比較して,Ramucirumab 併用療法では好中球減少症の頻度が高まるため,患者には感染予防(手洗い,うがい,マスクの着用など)の励行を指導する必要がある.日本人ではFN の頻度が34%と高いこともあり,FNリスクなどを考慮してG-CSF製剤の一次予防投与も考慮する.
② Infusion reaction(Ramucirumab):悪寒,潮紅,低血圧,呼吸困難,気管支痙攣などがあらわれることがある.Infusion reaction 軽減のため,Ramucirumab 投与前には抗ヒスタミン薬の投与を考慮する.Grade1 または2の症状が続く場合には,抗ヒスタミン薬に加えて解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)および副腎皮質ホルモンの前投与も考慮する.Ramucirumab投与後は患者の状態を十分に観察する.皮膚異常(蕁麻疹),顔面潮紅,呼吸困難感,動悸などが出現した場合はすぐに申し出るよう伝える.
③ アルコールに関する問診(DTX):自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること.
④ アレルギー症状(DTX):皮膚の異常(蕁麻疹),顔面潮紅,息苦しさ,動悸などが出現した場合はすぐに申し出ることを伝える.
★ DTX の溶解補助剤のポリソルベート80 による過敏症およびショック.
⑤ 高血圧(Ramucirumab):自宅で血圧測定および記録を行うよう指導する.高血圧による嘔気や頭痛,呼吸苦,胸痛,めまいなどの症状が認められた場合,または収縮期血圧180 mmHg以上,拡張期血圧110mmHg以上の場合には速やかに連絡するよう伝える.降圧薬は積極的適応,禁忌もしくは慎重投与,薬物相互作用を考慮し,個々の患者の臨床状況に応じて選択する.
⑥ 血栓・塞栓症(Ramucirumab):意識消失やめまい,胸痛,息切れ,手足のむくみ,ろれつが回らないなどの症状が認められた場合は速やかに連絡するよう伝える.
⑦ 脱毛(DTX):高頻度で出現し,治療開始から1~3週間で抜け始めることが多い.治療終了後には個人差はあるが回復する.
⑧ 浮腫(DTX):浮腫などの体液貯留が高頻度にみられ,総投与量が350~400mg/m2を超えると発現頻度が上がるため,足のむくみなどの症状が出れば申し出るように伝える.浮腫の発症は毛細血管漏出症候群によるもので,発症後はデキサメタゾンなどを投与する.
⑨ 出血(Ramucirumab):鼻血や歯肉出血,喀血,血尿などの出血症状が認められることがある.15分以上止まらない場合は連絡するよう伝える.
⑩ 創傷治癒障害(Ramucirumab):手術前後少なくとも4週間はRamucirumabの投与を避ける.
⑪ 尿蛋白(Ramucirumab):ネフローゼ症候群,蛋白尿があらわれることがあるので,投与期間中は尿蛋白を定期的に検査し,定性検査で2+以上の場合には,定量検査の実施を検討する.24時間蓄尿による定量検査が困難な場合,随時尿による尿中の「蛋白/クレアチニン比(UPC比)」が用いられる場合がある3).UPC比2.0未満の場合は,1日尿蛋白量が2g未満と推定されている.
文献
- Garon EB, et al:Ramucirumab plus docetaxel versus placebo plus docetaxel for second-line treatment of stage Ⅳ non-small-cell lung cancer after disease progression on platinum-based therapy( REVEL):a multicentre, double-blind, randomised phase 3 trial. Lancet, 384:665-673, 2014
- サイラムザ® 適正使用ガイド 化学療法既治療の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌<ドセタキセル併用投与>
- サイラムザ® 点滴静注液 添付文書