実験ノート・筆記具の選び方から,記入・保管・廃棄のしかたまで,これ一冊で重要ポイントが丸わかり!改訂により,大学におけるノート管理の記述を強化&米国特許法の先願主義移行にも対応.山中伸弥博士推薦の一冊
目次
1章 ラボノートとは【隅藏康一】
1.ラボノートとは
2.なぜラボノートを使用するべきか
- ラボノートの必要性:研究のプライオリティの証明
- ラボノートの必要性:研究の公正性の証明
- ラボノートの必要性:研究室におけるナレッジ・マネジメント
- 研究環境の変化によるラボノートの重要性の高まり
3.特許制度の概要
- 概論
- 先願主義と先発明主義
- 新規性喪失の例外
- 出願人と発明者
- 職務発明
- 誰が特許権をもつか
2章 ラボノートの現状【小野寺 徳郎/菅原哲雄】
1.欧米におけるラボノート
2.日本におけるラボノート
- ラボノートの採用動向
- 採用されている分野の傾向
- アンケートからみたラボノートの現状
- 証人署名と証拠能力の高さ
3.電子ラボノートについて
3章 ラボノートの書き方【岡﨑康司/安河内 正文】
1.ラボノートを書く前に ~道具選びのポイント~
2.ラボノートの書き方 ~何をどう書くのか~
- 表紙・背表紙に書くこと
- 巻頭ページに書くこと
- 研究のページに書くこと
- 記載する際のその他の注意点
3.記録後に注意すべき点
- 上司,指導教官のチェック
- 使い終わったノートとノートの保管
- 証拠能力を高める方法
4章 ラボノートの管理方法【石川 浩/飯野 顕】
1.ラボノート管理が必要なわけ
- 管理規定が証拠能力を高める
- 相互引用による補完的証明
- ノートは誰のものか
- ラボノート使用者の範囲はどうするか
- 電子ラボノート(コンピュータデータ)との共存
2.ラボノート管理規定
- ラボノート管理規定とは(規定の目的)
- ラボノート管理規定で定めておくべきこと
- 誰がラボノート管理規定を策定し運用するか
3.ラボノート管理部門の役割
- ラボノートの選定
- ラボノート管理台帳の作成
- ラボノート本体の管理
- ラボノート使用者の登録:署名の登録
- ラボノート使用状況の管理と定期検査
- ラボノート記載内容の目録化
- ラボノート関連教育
4.証人の役割
5.研究室の管理者(上司)の役割
- 好ましい研究室管理規範
- ノート記載の検査・指導
- 研究室管理者がチェックすること
6.大学におけるラボノートの管理
- 大学と民間企業との違い
- 現行の規定を見直す
- 研究室における管理の実際
- 個人で管理する場合
- 知的財産教育
- 研究室訪問
- おわりに
5章 ラボノートQ&A【菅原哲雄】
ラボノート導入に関する疑問
- 特許が関係しないのに必要なのか
- 個人で使用してても意味はあるのか
- 大学ノートはなぜ駄目?
- ノートにプライバシーはあるのか など
ラボノート使用に関する疑問
- 持ち出しはどこまでOK ?
- 証人の署名をもらうのは困難ですが…
- 複数テーマを抱えている場合ノートは分けるべき?
- メモはOK ?
- データはすべて貼るべき? など
トラブルに関する疑問
- 破ってしまった
- 誤記載はどう訂正する?
- データを紛失してしまった など
COLUMN
- 署名は誰がすればいいか
- ラボノートとプライバシー
- iPS 細胞の特許をめぐって
- 職務発明に対する相当の対価
- サインは大事
- 発明者とは
- 日米の特許法改正がもたらすもの
- ルーズリーフ形式は不適切か
『6章ラボノートQ&A』より抜粋
- Q ラボノートとはどのようなものでしょうか?また,何のために使うのでしょうか?
- A ラボノートとは,Laboratory Notebookの略であり,研究過程やアイデアなどを逐次記録するためのノートのことです.先発明主義を現時点で採用する米国では,発明日や発明者の立証に使えるため一般的に利用されています.
実験の進捗を記録することで,研究データの改ざんなどの不正行為がないことの証明や,発明の時期と発明者(共同発明者)の特定など,米国の先発明主義への対応(適用される時期)のみならず,日本においても先使用権の立証の際に重要な役割を果たします.その他,教育面での役割など,多くの機能を果たします(1章参照).
研究者の方々に,研究データを適切に記録するためにも自らの権利を守るためにもラボノートを用いることをお勧めします.
- Q 市販のラボノートは高いので大学ノートにしていたのですが,ラボノートとの違いは何ですか?
- A 証拠能力を担保するために必要な保存性や利便性などが違うと考えられます.
■保存性
発明者や発明日認定の証拠として活用することを想定すれば,30年間の保存期間が必要となります(4章p.104参照).したがって,劣化しにくい永久保存紙が使用されたノートをラボノートとして使用する必要があります.また,保存中の遺失・改変を防止するため,糸綴じ製本されたノートである必要があります.紙質は,実験室へ持ち込むことが想定されるため,耐薬品性,耐水性が求められます(3章p.55参照).
大学ノートでは,長期間の保存によりページが分離してしまうなどの可能性があり,ページが分離した時点で証拠能力としての機能が失われることとなります.
■利便性
市販されているラボノート以外のノートを使用する場合,表紙,もしくは巻頭部には,ノート番号,タイトル,署名,発行日などの欄を,記録部には,見出し,ページ番号,日付,研究タイトル欄,記載者署名・日付欄,証人署名・日付欄などを設ける必要があります(3章-2参照).また,証人が署名する際,事実であると確認した,などとその目的を記載する必要があり運用が煩雑になります(4章-4参照).
- Q 使い勝手がよいので鉛筆やルーズリーフを使っていますが問題ありませんか?
- A 筆記用具は,原則としてデータの改ざんを疑われないように鉛筆などの消せるものは避け,ボールペンや万年筆など耐光性,耐水性のインクのものを使用します(3章p.56参照).最近は,消せる特殊なインクが存在するので注意が必要です.
ラボノートの形式については,ルーズリーフでも必要十分な記載内容があり,第三者による証明や補完資料などにより証拠となりえます.しかし,ページの挿入などの改変を疑われることがあるため厳格な運用が必要になります(4章p.97コラム参照).したがって,大学等でラボノートを導入する際は,ルーズリーフなどのバインダー式のノートは避け,糸などで背を綴じ込んだノートの使用をお勧めします(3章p.55参照).綴じ込み式のノートでも,使用した順に連続のページ番号を付け,改変を疑われないようにする必要があります.市販されているラボノートには,あらかじめページ番号を記載しているものやノートの側面にパターンを印字したものがあります.
- Q 電子化された実験データを証拠とするには,どうしたらいいでしょうか?
- A 実験データを管理するコンピュータには,パスワードなどをかけることにより部外者からのデータへのアクセスを制限することでデータの改ざんが防げます.電子透かしをすれば,より厳密に保管できます.重要なデータは,電子公証および,タイムスタンプ(3章p.84参照)を押すことにより作成者,時間が特定され証拠となります.
ラボノートへの記入事項としては,データの保存場所とデータを特定してラボノートに記載しておくことです(3章p.68,4章p.88参照).また,印刷できる量であれば,ラボノートに直接貼り付け,貼り付けた紙とラボノートとにわたり割り印のような形で署名し保存することで,証拠とすることが可能でしょう.
- Q データを貼る場合は,セロハンテープでもいいでしょうか?
- A 改ざんができないような剥がせないテープであれば,問題ないと考えられます.また,保管期間に,テープが劣化などしてデータが剥がれるようなことがあってはならないので耐久性も必要です.劣化に耐えうるテープも存在するようなので,テープの選択に注意が必要です.
しかし,データなどを貼る場合は,改ざんができないように,糊で貼ることをお勧めします(3章p.67参照).また,糊にも貼り付けたデータが剥がれやすいものがあり,剥がれにくい糊を選択すべきです.
- Q ラボノートを家に持ち帰ってもいいのですか?
- A 一般的に,ラボノートを証拠として使う可能性が想定される研究者にとってデータ改ざんなどの防止のためラボノートは持ち帰らないことが望まれます(4章-3参照).研究終了後は,机の上にラボノートを出したままにせず,鍵の付いた棚などに保管し,入出庫の管理を厳格にすることが望まれます.現実的な運用面から考えて,鍵の付いた机の引き出しなどに保管し,持ち出さないようにすることができると考えられます.
- Q 研究を引き継いだときは,ラボノートを新しく変えるべきですか?
- A 所属機関の規則や運営方針によるところが大きいと考えられますが,ラボノートの管理面などからみて新しいラボノートへ記載する方がよいと考えられます.ラボノート使用者が退職などでいなくなる場合,残余ページが空白にならないよう注意が必要です.具体的なやり方として,「以下のページに記載がない」旨の記入の後,空きページに〆印と記載者の署名をし,ラボノート管理者へ届け出ることが望まれます(3章p.74,4章p.101参照).
- Q ラボノートにプライバシーはありますか?
- A 研究室のリーダーは所属機関の長から監督義務を任されているため,研究の進捗や研究データの改ざんなどの不正な行為をしていないかなど,研究の指揮監督をする目的でラボノートを見る必要が生じると考えられます.また,ラボノートは,原則として機関に帰属するものと考えられ,個人のものではないので,プライバシーがあるという性格のものではありません(1章p.21コラム,4章参照).
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