科研費の審査委員がどのように申請書を評価しているのか,ほとんどの人にはわからないだろう.私自身も,知り合いから立ち話程度に聞くくらいしか他の審査委員の評価方法がわからない.以下は匿名の審査委員経験者から寄せられた申請書に対してのアドバイスである.
審査委員といえども,申請者と全く同じ専門領域である可能性は少ないため(ある意味申請者よりもその分野の素人の可能性あり!),丁寧に研究の重要性をアピールしよう.税金を投入する意味のある研究であることをアピールしよう.それには国語力が必要になる.具体的には,
1)目的を明確に書こう
2)研究目的や研究計画の学術的背景を引用論文をあげてきちんと書こう
書かれている背景が学術的根拠の薄いものであったり,申請者の思い込みである場合がかなりある.また,「○○○のニューロンでの作用はよく知られているが,グリア細胞での作用は調べられていない」という研究背景では,研究計画の重要性が審査委員には伝わってこないので,当然評価は低くなる.
3)応募者の研究遂行能力欄
以前の研究テーマと異なるテーマで申請する際には,応募課題に関連するものに限らず,以前の研究テーマでの研究業績を書くこと.そうでないと,申請者に研究計画遂行能力があるのかどうか,審査委員が判断できない.何も書いていないと,研究計画遂行能力がないと判断されてしまう.
4)申請書の形式に沿って書こう
審査委員が申請者と研究分野がかなり異なる場合には,審査委員が申請書(きちんと書かれていても)を理解できないことがある.その場合,審査委員によっては,形式的な審査をする可能性がある.例えば,申請書には,箇条書きで記載する項目を説明しているところがあるが,箇条書きの1つを無視しただけで,非採択判定する審査委員もいる.それゆえ,申請書の形式に沿って書いた方が無難である.
5)申請書は平易な文章で書こう
本書で散々述べられている通りである.
もちろん,私とは違った観点から審査する方もいるはずです.なぜなら私が総合評点で2を付けた申請者が採択されている場合も少なからずあるからです(4を付けた申請者が不採択のこともあり).
もう面倒になって業績だけで決めてしまう審査委員,いそうですよねー.ということを考えれば,研究遂行能力欄の充実は必須です.審査した申請書で気づいた点は,
1)自立性の欠如
①テーマが明らかに元ボスの焼き直しで発展性に欠ける.
②計画通り行かない場合は「元ボスに助言を仰ぐ」と堂々と書く.恥ずかしいぞ!
③共同研究者が多すぎ(何でも他人に頼む申請者.で,あなたならではの得意領域は何?).
2)実験方法と計画に具体性がない
①実験方法が平凡で独自の工夫に欠ける.
②計画内容と人員が明らかに対応しない.1人でそれをすべてできるのだろうか? 実験補助を雇用するとか学生人数を具体的に記述するべき.
③うまくいかない場合の対処法がない.
3)何でも外注
院生がこんなにもいるのに,こんな程度のことさえ外注?
4)国民の税金を使っていることを意識していない
国民に還元する方法の箇所が空白.もしくは特許のことだけとか,学会や論文発表のことしか書いていない.
5)そのテーマに関する世界の情勢を自分の都合のよいように書いてしまっている
真面目な審査委員は,PubMedで調べながら審査しているので,わかってしまうのだ.
6)1の自立性とも関連するが,申請者の核となる成果が非常に少ない
つまり,共同研究ばかりで申請者はいわば部品のような役割しかしていない.