小噺その8:審査した申請書の採択状況

 情報が公開されているので秘密でもなんでもないが,私自身科研費の審査を何度かやったことがある.第1段の書面審査は,申請書が手元に送られてきてから1カ月以内に,100件近い採点をしなければならないので,結構大変だ.応募者は必死の思いで申請書を作成したはずだから,その思いに応えるためにも自分としては毎回真剣に取り組んだつもりだ.さて私の採点結果と採択された課題との間に,どのような違いがあっただろうか? 表はある年度の結果だ(このときはまだ,旧審査方式だった).

点数 私が付けた点数 採択された人数 採択率(%)
5 7 6 85.7
4 17 10 58.8
3 40 2 5
2 18 0 0
1 11 0 0
合計 93 18 19.4
表 ある年度の私が付けた審査点数と採択率結果

 いかがだろうか.この表を見る限りは,自分の付けた点数と採択された課題とは結構いい相関関係にあるように思う.5点を付けたものは1名を除いて採択されているし,2点以下の者では採択された者がいない.だが,本当にそうだろうか?

 注意しなければならないのは,4〜8名の審査委員の合計点数(もちろん補正はしている)で採択がほぼ決まるので,1名の審査委員の点数の影響が大きいということだ.例えば,ある課題に私が2点を付けると,それだけで合計点数が低くなり,採択の可能性も少なくなってしまう.その結果が,表の採択率に表れているのかもしれない.

 このように科研費の審査は非常に責任が重いのだ.審査のときには心して真剣に申請書と向かい合わなければならない.

 さて,審査委員には後日,どの申請課題が採択されたか連絡があり,自分の採点結果と比較してきちんとフィードバックできるようになっている.よいしくみだと思う.

科研費小噺 〜十人十色の体験記〜:目次

児島 将康

(久留米大学客員教授,ジーラント株式会社代表取締役)

書籍「科研費獲得の方法とコツ」「科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック」著者.毎年の科研費公募シーズン前後に20件近くの科研費セミナーで講演し,理系・文系を問わず申請書の添削指導を行っている.令和6年4月より研究者を支援するジーラント株式会社(https://g-rant.org/)を立ち上げ,活動している.

科研費に関する書籍・ウェビナーや制度の変更点など,科研費申請に役立つ情報を発信しております.
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