研究は1人ですべてできることが理想的だが,現在ではそれはほとんど不可能で,共同研究者が不可欠である.他の研究者をメンバーに加えるには,きちんとした理由が必要だ.それは研究計画の一部において,その研究者がもっているテクニックやメソッドが不可欠な場合だ.ただし,あくまでも申請者の研究計画をサポートするためのもので,共同研究者の研究が主になっては困る.
もっとも科研費の申請においては必ずしも共同研究者を加える必要はない.また,若手研究は申請者1人で行う研究である.
これまで科研費における研究組織は「研究代表者」,「研究分担者」,「連携研究者」および「研究協力者」から構成されていたが,平成30年1月26日開催の科学技術・学術審議会学術分科会研究費部会における審議の結果,「連携研究者」は「研究協力者」に統合されることになった.このため,研究組織は,「研究代表者」,「研究分担者」および「研究協力者」から構成される(表1).研究分担者はe-Radに「科研費の応募資格あり」として研究者情報が登録されている研究者であることが必要だが,研究協力者はe-Radに登録されていなくてもよい.
研究者の区別 | 科研費の応募資格 | 分担金 | 研究代表者との交替 |
---|---|---|---|
研究代表者 | 必要 | ─ | ─ |
研究分担者 | 必要 | あり | できない |
研究協力者 | いらない | なし | できない |
また研究分担者には申請書の「1 研究目的,研究方法など」において「具体的な役割」を,「2 応募者の研究遂行能力及び研究環境」において「(1)これまでの研究活動」「(2)研究環境」の記載が求められる.
研究分担者は,研究代表者と同一の研究機関に所属する研究分担者であっても,分担金の配分を受けなければならない.研究協力者は分担金なしである.
研究協力者は「科研費の応募資格あり」の研究者以外に,ポスドク,大学院生,リサーチアシスタント(RA),日本学術振興会特別研究員(DCは研究協力者になれる.および受入研究機関において科研費の応募要件を満たさないPD・RPDも研究協力者になれる),海外の研究機関に所属する研究者(海外の共同研究者),科学研究費補助金取扱規程第2条にもとづく指定を受けていない企業の研究者,その他技術者や知財専門家等の研究支援を行う者などがなることができる.同じラボのメンバーを研究チームに入れるときには,研究協力者でよいと思う.研究分担者にすると,少額でも必ず研究費を配分しなければならず,事務手続きが煩雑になる.
科研費の申請にあたっては,あらかじめ研究分担者となることについて電子申請システムを通じて承諾を得る必要がある.
まず,研究代表者が電子申請システムの「応募情報入力」画面の「研究組織」欄に,研究組織に研究分担者として加えたい研究者を入力,研究分担者となることを依頼する.研究分担者は依頼を受けた場合,承諾する内容を確認して,「承諾」または「不承諾」を選択する.依頼を受けた研究者が研究分担者となることを承諾した後,研究分担者が所属する研究機関からも承諾等を得る.所属する研究機関の承諾も電子申請システムを通じて簡単に行われる.研究分担者が所属する研究機関が承諾等を行わない場合,研究代表者は研究計画調書を研究機関に提出(送信)することができないので,提出期限に間に合うように,手続きには注意が必要だ.
なお研究代表者が研究計画を遂行できなくなったときでも,研究分担者は(研究協力者も)研究代表者と交代することができない.その時点で研究計画は終了である.
さて,研究分担者や研究協力者の人選によって,どの程度採択に影響があるだろうか? 基盤研究(S)や基盤研究(A)などの大型のものでは,メンバー構成が研究計画に沿ったものであることが必要になるだろうが,基盤研究(C)や若手研究では単独で応募してもまったく問題はない.かえって自分より有名な研究者をメンバーに入れると,「これは誰の研究なのか?」と逆効果になることがある.特に申請者の業績(この場合,もちろん発表論文)が少ないので,研究分担者の業績で業績欄を埋めようとしても,審査委員は案外この部分を見ているものだ.
そのため,研究分担者や研究協力者を入れるときには,無理せず自分に合ったレベルの研究者にお願いしよう.また研究分担者の発表論文を記入するときにも,せめて『申請者:研究分担者=2:1』の割合にするのが妥当だと思う.
※本コーナーは『科研費獲得の方法とコツ 改訂第8版』(2022年7月発行)から一部抜粋・改変し,掲載したものです.記載内容は発行時点における最新の情報に基づき,正確を期するよう,最善の努力を払っております.しかし,本記事をご覧になる時点において記載内容が予告なく変更されている場合もございますのでご了承ください.