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記事収録書籍

レジデントノート2016年6月号 Vol.18 No.4

基本がわかる!胸部X線診断

よくみる疾患の所見はもちろん、読影プレゼンのコツもつかめる!

喜舎場朝雄/編

定価:2,200円(本体2,000円+税)

胸部X線

特集にあたって

喜舎場朝雄

特集の意図 〜胸部単純写真の役割

呼吸器疾患の対象は感染症から悪性腫瘍まで多岐にわたる.病歴聴取にはじまり,身体診察,血液検査,画像,生理学的検査,病理と鑑別疾患を思い浮かべながらどのような検査が必要で診断に至るために検査結果をどう解釈するかが治療管理において求められる.このなかで胸部単純写真の診断における役割はきわめて大きい.しかしながら胸部単純写真について系統的に学ぶ機会が乏しかったり,救急室でのポータブル写真の濫用などで正常写真の解釈そのものが曖昧になる傾向がある.そこで本特集では総論2項目,各論8項目の計10項目の構成で特に研修医を対象とした企画をした.

総論のねらい 〜基本の読み方とプレゼンテーション

まず,総論では胸部画像診断専門医に胸部単純写真の基本事項を,所見の正しい定義の理解と使用が進むように解説いただいた.医学用語において定義をきちんと踏まえて日常診療に活かしていくことはどの領域でも重要で,これを出発点として胸部画像診断の適切な活用につなげてほしいという意図ではじめにもってきた〔胸部X線写真の基本的な読み方と所見の定義〕.本特集の読み方として順番に熟読していくことをすすめる.次に胸部画像読影のプレゼンテーションのコツの稿をもうけた〔胸部X線の読影のプレゼンテーションのしかた〕.初期研修医の先生方はカンファレンスでの症例の一般的なプレゼンテーションには慣れているといえるが,胸部単純写真の基本的な読影や臨床情報とからめた発表のしかた,上級医への実践的なプレゼンテーションの方法などについて教わる機会が,日常の多忙な研修生活のなかでほとんど得られないと思われる.本項目では具体的に読影の形式,重要所見の述べ方,全体の流れなどを意識しながら詳細に解説してもらっている.明日からのカンファレンスに即活かせるような,どの教科書にも記載がない実践的な内容になっている.

各論のねらい 〜疾患ごとの画像所見の特徴

肺炎,うっ血性心不全・無気肺,肺結核

各論は全部で8項目の構成とした.まず,呼吸器感染症は呼吸器内科に限らずすべての科で担当する可能性があるcommon diseaseであり,今後のわが国の人口の高齢化に伴いますます頻度が上がることが予想される.わが国では世界に類をみない独自の診断基準を用いて,肺炎球菌に代表される定型肺炎と若年者のマイコプラズマ肺炎をトップとする非定型肺炎に分類するアプローチをもっている.このことを踏まえて代表的な呼吸器感染症について複数の症例を呈示することで,よくある呼吸器感染症の胸部画像所見に多面的に触れて体感してもらうことにした〔市中肺炎の画像所見〕.

次には日常で高齢患者でよく遭遇するうっ血性心不全や無気肺の画像所見について,患者背景や臨床情報などを盛り込みながら,呼吸器感染症といかに区別して診断していくかについて掘り下げて解説してもらっている〔肺炎の鑑別ポイント〕.その後に医師として忘れてはならない肺結核を取りあげた.陳旧性か活動性かを区別する重要な画像所見の特徴,臨床経過,結核の病態を踏まえた胸部単純写真での画像所見の意義などについて実症例を紹介して頭に深く刻んでもらう構成とした〔肺結核の画像所見〕.肺結核の迅速な診断は公衆衛生上でもきわめて重要であり,若手の先生には本特集を通じて適切な診断ができるように意識してほしい.

悪性腫瘍の画像所見

次に悪性腫瘍の画像所見の項目をもうけた〔悪性腫瘍の画像所見〕.健診で指摘される異常陰影についてどのような陰影の特徴がより肺がんなどの悪性疾患を示唆するかなどについて解説していただいた.さらに慢性の呼吸器疾患がある場合の新たな異常陰影の指摘には比較読影が必須であるが,COPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)や間質性肺炎などがある場合の異常陰影でどのような特徴が肺がんを疑うのかについて,ポイントを示してもらった.これも若手の先生方を日常大いに悩ませる問題でありぜひ,エッセンスをつかんでほしい.

びまん性肺疾患

びまん性肺疾患は多くの若手医師に苦手意識があると思われる.そこで,胸部単純写真でどのような陰影がどこに分布しているとびまん性肺疾患を考えるかについて代表的な疾患をとりあげて,びまん性肺疾患のエキスパートから図解入りでわかりやすく解説してもらっている〔びまん性肺疾患を疑う所見〕.本項目でびまん性肺疾患を代表する間質性肺炎を疑うポイント,followするにあたり留意する点などを学んでほしい.

膠原病関連の間質性肺炎,肉芽腫性疾患,免疫抑制患者の画像所見

膠原病に合併した肺病変の画像所見」では,膠原病のなかで高頻度で間質性肺炎の合併も多い疾患に関して,臨床からの立場も踏まえて胸部単純写真で気づく重要な所見について解説してもらった.どのようなときに胸部CTを撮影するかについても触れてもらっている.肉芽腫性疾患に関しては健診で指摘されやすいサルコイドーシスと,臨床症状と胸部画像所見が乖離しやすい過敏性肺炎をとりあげ,単純写真でどこまで読み取れるかを丹念に解説していただいた〔肉芽腫性疾患の画像所見〕.最後の稿では血液疾患や肺移植後といった免疫抑制状態患者の胸部異常陰影でどのような病態を考えるか,具体例をあげながら重要所見の解説をしていただいた〔免疫抑制患者の画像所見〕.

このように呼吸器疾患ではあらゆる分野で胸部単純写真の役割が重要であることが認識される.正常所見とは何かを常に意識して,自らが疑う疾患が画像にどのような所見として反映されるかの道筋を本特集が示し読者の日常診療に即,応用できることを願う.

喜舎場朝雄(Tomoo Kishaba)
沖縄県立中部病院 呼吸器内科
本企画では日常で最も撮影される胸部単純写真の意義と日常診療にいかに応用していくかを意識しました.
私は現在,特にびまん性肺疾患について興味をもっており,内科医師の力量が問われ魅力的な領域です.
これからも若手の先生方に呼吸器内科の診療の面白さを多角的に伝えられるように自らも日々成長したいと思っています.

※本サービスに記載の診断法・治療法,ならびに著者プロフィール・所属機関等の情報は,レジデントノート2016年6月号の発行時点のものとなります.引用している診療ガイドライン等の改訂については,ガイドライン発行元学会等の最新情報を確認していただく必要があります.