書 評
林 寛之
(福井大学医学部附属病院 救急科・総合診療部)
「それで何を食べたらいいのですか?」
生活習慣病の多くは食べ過ぎて発症する疾患が多い.食べなければ治るのに,何度説明しても「…で,何を食べたらいいのですか?」と食べることに執着する患者さんがいかに多いことか.昔は米国心臓病学会の推奨する低脂肪の食事がよいと言われたものの,ことごとく地中海食(高脂質高蛋白低糖質)に撃破されるエビデンスが目白押しだ.てんかんだって認知症だって質のよい脂肪を摂取することがいいんだ.トロント大学腎臓病専門医であるJason Fungの書いた「The Obesity Code」や「The Diabetes Code」にあるketogenic dietのエビデンスの充実度には圧倒された.人間には栄養が必要だが,その摂り方を間違えると,エネルギーが余って病気になる,つまり贅沢病になるというわけだ.
人の身体は食べるもので形作られると言い,キャリアは経験からできているとはうまくいったものだ.誰かに押さえつけられて無理矢理食べさせられているわけでもないのに,食べ過ぎて病気になるなんて…世の中には美味しいものがありすぎるのが悪いんだ!そういえば,栗山先生もグルメで日本酒が超強かったような…知らんけど,わからんけど.
病気になると代謝が亢進し,満足に栄養も摂れない.重症であればあるほど栄養が必要なのはわかるけど,栄養ってなかなかとっつきにくく,学校ではあまり習わない.本書は「基本のキ」を丁寧に解説して初学者が理解しやすい構成になっている.世の中には実にいろんな剤形や種類の栄養剤などがあり,その使い分けも理解できるのがありがたい.さすがエアロビのインストラクター資格を取得した栗山先生のしなやかさと優しさとスマートさが現れている.もともと栄養学を修めた栗山先生だからこそ書き上げることができた本だとつくづく思う.「第4章 病態別栄養療法のキホン」は上級医でも結構役に立ち,うならせられる内容だ.研修医のみならず,医学生や上級医,メディカルスタッフも手にとりやすい構成になっているので,ぜひ一読をお勧めする.本書を読んだら,患者さんの栄養食の味見をしたくなるかも!?