この数年,耐性菌という言葉をテレビやインターネットのニュースで見かける機会が多くなりました.「耐性菌」,名前の通り抗菌薬が効かない細菌の総称です.この耐性菌が近年増加していることが世界的な問題となっており,英国グループの試算によれば,このまま耐性菌が増加すると仮定すれば2050年には耐性菌による死亡が悪性腫瘍を超え,なんと1,000万人にも達するそうです.想像ができますか? 私たちが今,抗菌薬で治療している肺炎や腎盂腎炎も,このままでは耐性菌のせいで治療ができなくなってしまうかもしれないのです.
(中略)
より広い視野で感染症の世界を捉えることができれば,われわれは患者さんの診断・治療を行っている一方で,世界の危機をも救っているのだ! という気持ちで感染症診療にあたることができるようになるはずです.そうは言っても,“Think globally, Act locally”という言葉が示すように,われわれ臨床医にとって大事なことは患者さん1人1人を丁寧に診ていくことです.一例一例,抗菌薬を大事に使いながら患者さんを治療し,そして世界を耐性菌から守っていきましょう.
本特集は「抗菌薬をどう適正に使うか」というよりは「抗菌薬を使わないことによる抗菌薬適正使用」に重点を置きました.「抗菌薬の使い方」については今や良書がたくさんありますのでそちらをぜひご参照ください.それと同時に本特集の全国の第一線で活躍されている感染症医の解説による「抗菌薬を使わなくてもよい状況」についてお読みいただき,今日からの診療に活かしていただければと思います.
最後にもう一度言います.世界を耐性菌から救うのはわれわれなんですッ!!
「とりあえず抗菌薬…」出していませんか?深刻な耐性菌の問題から,「どの症例に処方すべき?」「この状況では抗菌薬は不要?」など具体例まで網羅!ChoosingWiselyの観点から,抗菌薬の適正使用を考えよう
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