乳幼児健診で健診結果を伝えるのは健診結果のクロージングの部分に相当します.ほとんどの家族は,何と診断されるか多少の不安感は持っているものです.近年は,予防接種を2カ月でデビューというキャンペーンが効果を奏していて,保護者は,新生児期,新生児訪問,1カ月児健診,予防接種時と乳児期早期に,医師をはじめ医療職に複数回は遭遇しています.なかには,気にしていることがあるのに,尋ねることもせず指摘されないから異常ではないと自分に言い聞かせている保護者もいます.提示した症例の母親も「うちの子は痣が多いとは思っていた.今まで何も言われなかったので,普通の範囲だと思っていた」のだそうです.…
原 朋邦(はらこどもクリニック)
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見開きで健診の流れがパッとつかめる月齢・年齢ごとの説明に加え,健診で必ず確認したい事項を発育・発達の状況や症状・疾患ごとに詳しく解説.診察のコツや保護者への話し方が,目的や意図から理解できる一冊!
◆成書であり聖書
小児科医が一番小児科医らしく輝くのが乳幼児健診です.
乳幼児健診には相当高度なスキルが必要です.特に難しいのは時間制限があるにも関わらず,一見問題がなさそうなところから問題点を抽出しないといけないこと,そして保護者の心配に答え,子育てを励まさないといけないことだと考えてきました.
しかし現実には,健診の現場ではあまりの人数とタスクの多さに比較しての自分の腕のなさに「あきらめ」が生じ,私が見逃しても残りの健診で見つけてくれるかもと「あきらめている」若い小児科レジデント(かつての私)も多いように感じます.一方でそのタスクと実力のギャップに打ちのめされて凹んでいるのに,誰も教えてくれない,良い参考書に巡り合えていない,と嘆いている真面目な若手医師もいます.
そんな彼らに本書は福音となるでしょう.原先生,児玉先生,中村先生編集の本書には,第1章で時期別のエッセンスが「見開き一枚」で書かれています.私が乳幼児健診に行くときはその時期の健診の該当部分をコピーして持って行きます.第2,3章は重要な症候学が知る人ぞ知るエキスパートによって記述されています.私は気になった症候があれば,捜し物をする振りをして,バックヤードに入ってこそこそとその部分を読むでしょう.そして第4章のコミュニケーションの実践法,これは小児科入局後最初のオリエンテーションで声に出して読ませたい文章です.これは乳幼児健診参考書という枠を超えた智慧の章です.
そして最大の私のお気に入りは原先生のコーヒーブレイクです.短い文章ながら,ユーモアありそして説得力もあります.素晴らしい言説です.購入を迷っている方はまず「トントン先生のコーヒーブレイク」を読んでみてください.
事程左様に,本書は乳幼児健診をするすべての方への成書であります.
また,上述のあきらめがち君,凹みさんを救ってくれるいわば乳幼児健診のバイブル(聖書)と言えるでしょう.迷える子羊たちよ! このバイブルを手に取り,乳幼児健診という天国のように楽しく美しい世界にどっぷりつかってみましょう.きっと健康な子どもたちから癒され,心に平和愛溢れる医師人生を送ることができますよ.知らんけど.
笠井正志(権威主義ではない医師代表@兵庫県立こども病院 感染症内科)
『レジデントノート2021年6月号』より転載
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