現代生命科学

  • 東京大学生命科学教科書編集委員会/編
  • 2015年02月25日発行
  • B5判
  • 191ページ
  • ISBN 978-4-7581-2053-1
  • 3,080(本体2,800円+税)
  • 在庫:なし
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“生命はどう設計されているか”“がんとはどんな現象か”“生命や生物の不思議をどう理解するか”等よくある問いかけを軸とした章構成で、生命科学リテラシーが身に付く。カラー図表と味わい深い本文の新時代テキスト

目次

第Ⅰ部 現代生命科学の基礎

第1章 生命科学と現代社会のかかわり

1 生物とは何か
  • (1) 細胞と呼ばれる構造体からできている
  • (2) 遺伝物質DNAによって自己を複製する
  • (3) 環境からの刺激に応答する
  • (4) 環境からATPを合成し,そのエネルギーを用いて生活・成長する
2 地質時代と生物の変遷
3 生物の系統と系統樹
4 ヒトの起源と進化
5 細胞を構成する分子
  • タンパク質
  • 脂質
  • 核酸
6 生命科学の誕生
7 自然科学とは何か
8 21世紀の生命科学
Column
  • 化石人類と現生人類
  • デニソワ人の謎
  • 進化と苦味受容
  • 検証すべき仮説?
  • ツタンカーメンの母親は誰だったか
  • 生物多様性と微生物
  • ウイルスは生物か?

第2章 生命はどのように設計されているか

1 細胞の発見
2 細胞の大きさと多様性
3 細胞の成り立ちと細胞内小器官
  • 真核細胞と原核細胞
  • 細胞内小器官の概要
  • 小胞(膜)輸送系
  • 酸化的代謝系
  • 独自のDNAを含む細胞内小器官
  • 細胞骨格
4 遺伝情報の伝達
  • 遺伝子と染色体
  • DNAの発見と二重らせん構造
  • 正確な遺伝子複製のしくみ
5 現代遺伝学
  • 転写,翻訳 ― DNA,RNA,タンパク質
  • 遺伝子という言葉,ゲノムという概念
  • ヒトゲノムとは
  • 真核生物の遺伝子構造の特徴
  • スプライシングによる遺伝子の多様性
  • 細胞構造と遺伝子発現
Column
  • 細胞内輸送の異常
  • 植物になり損ねたマラリア原虫
  • ミトコンドリアDNAの変異によって起こる病気
  • ミトコンドリアDNAの母性遺伝
  • メンデルの法則と単一遺伝子疾患
  • 人工生命の作製は可能?

第3章 ゲノム情報はどのように発現するのか

1 ゲノム 生物種を規定する配列情報
2 個人差と種差
  • 個人差とゲノム
  • 遺伝子多型
  • 種差とゲノム
3 ゲノムからみた生殖 性はなぜ存在するか
  • 父と母―さまざまな性の形態
  • 性の起源
  • 生殖細胞と減数分裂
4 遺伝と環境のかかわり
  • 体質と遺伝子の関係
  • 生活環境が及ぼす影響
5 遺伝子の発現を調節するもの
  • 生体高分子の相互作用を介した遺伝子転写調節のしくみ
  • DNAやタンパク質に対する化学修飾
6 エピゲノム ゲノムに対する後天的修飾
  • 染色体DNAの構造が遺伝子発現調節に関与する
  • エピゲノムに寄与する化学修飾
  • 細胞は記憶する:エピゲノム情報の維持
  • エピゲノム情報が初期化されるとき
Column
  • ヒトの遺伝子はいくつあるのか?
  • 知る権利,知らないでいる権利
  • 化学修飾あれこれ
  • 三毛猫のまだら模様を決めるX染色体の不活性化
  • ヒストンコード
  • ゲノムの化学修飾が病気につながる例

第Ⅱ部 生命科学研究で明らかになった生命のしくみ

第4章 複雑な体はどのようにしてつくられるか

1 発生の初期過程 卵割と三胚葉形成
2 体の基本形の構築 体軸形成と神経誘導
3 細胞分化と器官形成
4 動物の発生と進化
5 生殖細胞の形成と哺乳類の発生
  • ヒトの生殖細胞と発生
6 成長と老化
7 細胞分化の全能性・多能性・多分化能と幹細胞
8 再生医療
Column
  • ホメオティック遺伝子の役割
  • 植物の発生―花器官形成のしくみ
  • 線虫の細胞系譜
  • 細胞の寿命を決めるテロメアとエピゲノム修飾

第5章 脳はどこまでわかったか

1 ヒトの脳の構造
2 大脳皮質
3 神経細胞
4 神経伝達
  • 受容体とリガンド
5 記憶と長期増強
6 脳機能の計測
  • fMRI
  • PET
  • X線CT
  • その他の方法
7 認知症
Column
  • 植物状態からの脳機能の回復
  • ガルの骨相学
  • 言語と遺伝子
  • 「臨界期」にご注意
  • 運動が脳に及ぼす影響
  • NMDA受容体と記憶力の関係
  • うつ病はなぜ起こるのか?
  • 頭のよくなる薬?
  • 脳のGPSシステム

第6章 がんとはどのような現象か

1 がんとは
2 細胞増殖および細胞死
  • 細胞増殖の抑制の異常
  • 細胞増殖因子の機能とその異常
  • 細胞増殖因子からのシグナル伝達とその異常
  • 細胞間の対話と細胞増殖
  • アポトーシスとその異常
3 発がんとがん遺伝子,がん抑制遺伝子
  • 遺伝子の傷
  • がん遺伝子,がん抑制遺伝子
  • 多段階発がんモデル
4 がんの診断と病理学
  • がん細胞であることの判断
  • 腫瘍組織
  • がん細胞の不均一性
5 がんの治療
  • 手術
  • 放射線治療
  • 化学療法
  • ホルモン療法
  • 分子標的治療薬療法
6 がんの進行と転移
  • がんの進行
  • がん転移
Column
  • がんと癌とガンのニュアンス違い
  • 細胞のシグナル伝達
  • タバコによる発がん
  • がんの遺伝子診断
  • がん幹細胞
  • Bench to bedside(B2B)
  • たねと土の仮説

第7章 私たちの食と健康の関係

1 食べるとは
2 消化と吸収
3 消化管の共生微生物
4 酵素
5 生物エネルギーとATP
6 ヒトの代謝の基本経路
7 エネルギーのバランス
8 エネルギーバランスのしくみ
9 食と健康をめぐる最近の話題
  • 肥満:エネルギーバランスの乱れ
  • メタボリックシンドローム
  • 食の安全
Column
  • なぜ消化器は消化されないか?
  • 蓄積するのはなぜ脂肪か?
  • 食品中のDNAの行方
  • いろいろな発酵と食品
  • 食欲と睡眠の関係
  • 脂肪細胞
  • 肥満の指標BMIと太りすぎ,やせすぎ
  • BSE問題
  • 食の安全と食の安心
  • 農薬の必要性と危険性の度合い

第8章 ヒトは病原体にどのように備えるか

1 人類と感染症の戦い
2 微生物と感染
  • 感染とは
  • 細菌の感染
  • 真菌の感染
  • ウイルスの感染
  • 感染から症状発生へ至るしくみ
3 免疫とは何か
  • 免疫系の成り立ち
  • 免疫を担う細胞と組織
4 免疫応答のしくみ
  • 免疫系が感染源の攻撃を感知して応答するしくみ
  • 体液性免疫と細胞性免疫
  • アレルギー
  • 免疫応答の制御と自己免疫
Column
  • 抗生物質と耐性菌
  • 結核
  • 新型インフルエンザ
  • HIVの生き残り戦略
  • うがい・手洗い・咳エチケット
  • ヒト白血球抗原(HLA)と拒絶反応
  • 抗体
  • 花粉症とアレルギー
  • 自己免疫疾患と感染症の間にあるもの

第9章 環境と生物はどのようにかかわるか

1 環境と適応
  • 極限環境
  • 進化と適応放散
  • 人間がつくる環境への適応
  • 適応進化と中立進化
2 恒常性と環境応答
  • 恒常性の維持
  • 環境応答の原理
  • 恒常性を打破する環境応答
3 有性生殖と環境適応
  • 有性生殖と無性生殖
  • 多様性を生み出すしくみ
4 生物と環境の相互作用:光合成
  • 地球環境と光合成
  • 土壌の形成
  • 個体群とヒトの特殊性
  • 生物群集と食物連鎖
5 生態系の構造と動態
  • 生態系のエネルギー流
  • 生態系の物質循環
6 生物多様性と地球環境の保全
  • 生態系のバランス
  • 日本の里山
Column
  • ダーウィンと適応放散
  • 植物のダイナミックな環境応答―気孔の開閉
  • 有性生殖は本当に環境適応に有効か?
  • 光は植物にとって有害,O2は生物にとって有害?
  • なぜ陸上植物は緑色か?
  • 大気中のCO2濃度の上昇と地球温暖化
  • 地球温暖化―「不都合な真実」とIPCCによるノーベル平和賞受賞後の騒動
  • 特異な生態系とその構築原理―サンゴ礁と腸内

第Ⅲ部 生命科学技術の進歩と社会との関係

第10章 生命科学技術はここまで進んだ

1 古い歴史をもつバイオ技術
  • 発酵という伝統の食文化
  • 酵素を取り出すという発想
2 バイオ技術としての新しい医薬品生産
3 品種改良の歴史
  • 古い歴史をもつ農作用や家畜の選抜
  • 新しいバイオ技術で生まれた遺伝子組換え生物
  • ゲノム編集技術を用いた新しい育種の可能性
4 微量のDNAを増幅させるPCR技術
5 研究手法の進展
6 生命活動の計測と補助
Column
  • 分子標的治療薬—イマチニブを例に
  • ゲノム時代における遺伝子資源の重要性
  • アグロバクテリウムによる遺伝子組換え植物作製
  • 最初の遺伝子組換え食品
  • 狙った遺伝子配列に切断を入れるゲノム編集技術の例
  • 日本の食糧事情と遺伝子組換え食品
  • PCRを用いた病原体検出,個人特定
  • 農業工学—バイオエタノール
  • 放射線とDNA損傷

第11章 生命倫理はどこに向かいつつあるのか

1 生命倫理とは
  • 医療専門職の医療倫理とパターナリズム
  • 生命倫理の興起と発展
  • 生命倫理成立の背景
2 生命倫理の原則
3 臨床研究と倫理委員会
4 生命倫理と宗教
  • 文化的多様性と生命倫理
5 人体の商品化,環境破壊と国際協約
Column
  • 優生学の歴史と現在
  • ニュールンベルク綱領とヘルシンキ宣言
  • インフォームド・コンセント
  • 脳死と臓器移植
  • 日本のIRBと倫理指針
  • 生殖補助医療と倫理
  • 倫理的・法的・社会的問題(ELSI)
  • ES細胞と宗教
  • 生命科学研究と知的所有権
  • 生命倫理と人権に関する世界宣言
  • 動物実験の意義と倫理原則

第12章 生命や生物の不思議をどのように理解するか

1 科学的に見た生命の不思議
  • (1) ゲノムの情報量
  • (2) 精密で合目的的な機械としての生物体
  • (3) 生物が示す柔軟な順応能力
  • (4) 多細胞生物の複雑な体の構築
  • (5) 脳とこころの関係
  • (6) 生物の起源と進化
  • (7) 生命の謎を説明する「力」
2 生命・生物の理解についての理論の発展
  • 目的論と機械論
  • 還元論と全体論
  • 自然発生説論争の二面性
  • ブレイクスルーとなる負のエントロピー概念
  • 分子レベルのサイバネティクス:偶然から必然が生まれる
  • 複雑系科学からのアプローチ:散逸構造と自己組織化
3 現代諸科学による生命理解
  • 生物と生命:動的な考え方
  • 生命の駆動力としての自由エネルギー
  • オミックスとシステム生物学
  • 合成生物学と制御システム
  • 生命の起源と化学進化・生物進化・人工生命
  • 物質科学に根ざした生命の動的な理解に向けて
4 結論:最初の問に対する現在あり得る解答
Column
  • パスツールの白鳥の首型フラスコ
  • エントロピーと生命
  • DNA結合タンパク質による遺伝子発現制御
  • モノーが考えた代謝制御回路―ミクロなサイバネティクスの例
  • 細胞周期の簡単なシミュレーション
  • 異なる動物の遺伝子制御ネットワークの比較
書評・感想
  • 一般人の指向を強く意識して、人間や社会との関わりを軸として良く練られた内容を持つ本書は、現代の生物学全般を学ぶための優れた教科書です。授業時間内に話し合える話題をいくつも含み、双方向の授業を実現できます。コラムの内容もすばらしく飽きさせません。私はこれまで「文系のための生命科学 初版/第2版」を、理科系教職大学院の修士生と、非生物専門の全学対象の学部1年生の生物学の教科書として、活用させていただきました。この度、最先端の話題を盛り込むと共に、持ち運びに便利なサイズにもなったことから、一般向けの自学書としても、各界のリーダーである全ての分野の方の基盤的教養として、ぜひとも読んでいただきたいものとして強く推薦したいと思います。

    小野道之(筑波大学准教授)

  • 生命科学の歴史、応用例、そして問題点まで網羅しており、生命工学の基礎を学ぶ工学部・情報学部・バイオ化学部等、全学部の学生を対象にした教科書として最適である。

    私立大学基礎教育部門教授

  • 読者に興味の持てるテーマ設定であり、内容も詳しくわかりやすい。

    私立大学看護学部教授

  • 細胞の発見から、最新のテクノロジー、はたまた生命倫理まで幅広い分野をギュッと凝縮した本書は、生物学の入門には最適だと思われます。

    私立大学農学部准教授

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