近年,免疫チェックポイント阻害剤の台頭により,腫瘍免疫療法に注目が集まってきている.一方で,本免疫療法はすべてのがん患者に対し恩恵をもたらしているわけではない.その理由の一つに,たとえ腫瘍免疫担当細胞が活性化したとしても,腫瘍内に進入できず,その効果が発揮できない状態であることが問題視されている.腫瘍免疫が機能するかどうかを判断する方法として,がん細胞の遺伝子変異やメタボリックな状態,末梢リンパ球数,リンパ球遊走因子の発現などを指標にするImmunogramという方法が報告されてきている.そのなかでも,腫瘍内に形成される,「血管の質」ということをパラメーターにすべきであることが最近特に指摘されるようになってきた.腫瘍内に形成されるべき,腫瘍免疫を活性化させる「血管の質」とは何か?本特集では,「血管と免疫」をキーワードに,基礎医学的および臨床医学的両側面から,血管生物学と腫瘍免疫学の融合した学問の必要性を考えてみたい.
高倉伸幸(大阪大学微生物病研究所情報伝達分野)
特集の概論を読む
なぜ,がん免疫療法の効果には個人差があるのか?謎を解く鍵として「腫瘍血管の質」が注目されています.血管生物学と腫瘍免疫学の融合から,血管正常化で免疫療法の効果を高める臨床戦略まで,その最前線をご紹介.
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