細胞が秩序立った生命現象を営むには，遺伝子情報に基づいてつくられたタンパク質おのおのが，機能すべき場所へと正確に輸送されることが必須です．本書では，近年さまざまな解析方法を駆使して急速に解明が進む細胞内輸送研究について，その分子機構から高次生命現象とのかかわり，さらには関連疾患までの最新の研究成果と今後の展望を研究の第一線で活躍する研究者たちが解説しています．今号から用語解説も加わり，幅広い研究分野の方にわかりやすい構成となっています．

■目次詳細を表示する

概論：細胞内輸送研究-細胞と個体形成の秩序を知る【今本尚子】

オルガネラがもつ輸送装置と輸送経路には個別の特徴がある
単細胞生物と多細胞生物を考える
オルガネラの枠組みを構築する膜構造が細胞に秩序を提供する

第1章核-細胞質間輸送の制御機構

1. 核-細胞質間輸送の分子機構と輸送経路の多様性【今本尚子，小池牧子，古田満衣子】

低分子量GTPase Ranで制御されるインポーチン，エキスポーチン輸送経路の基本
インポーチンβ様輸送担体の多様性とシグナル構造の多様性
核膜孔複合体の構造と機能

2. 核-細胞質間タンパク質輸送と細胞機能【米田悦啓】

遺伝子発現調節と核-細胞質間輸送
インポーチンαと個体発生
細胞機能とコファクター

3. RNAの核外輸送と品質管理【馬渕直人，大野睦人】

輸送因子importinβファミリーとRanサイクル
UsnRNAの核外輸送
tRNAの核外輸送
rRNAの核外輸送
mRNAの核外輸送

4. ユビキチンファミリーSUMOとタンパク質輸送【斉藤寿仁，内村康寛，藤田英明】

SUMOを輸送・分別・局在化シグナル・タグとして考える
SUMO化による核タンパク質の輸送・分別・局在化制御
SUMO化による細胞質および膜タンパク質の選別輸送・局在化制御
SUMO化は繰り返される？

5. Ran GTPaseの多様な機能-Meiotic Driveシステムへの関与【草野亜弓】

キイロショウジョウバエのSegregation Distorter（SD）
変異型RanGAPにコードされるSd座とRan GTPaseサイクル
Sd-RanGAPの核内異所局在と核内RanGAP活性
Segregation distortionと核・細胞質間輸送
Rspの関与

6. 核膜孔への連繋による染色体の機能的区分【石井浩二郎】

バウンダリーエレメント：染色体の境界を形成するDNAシス因子
ヘテロクロマチンを遮断する境界のしくみ
部位特異的にヘテロクロマチンを遮断するバウンダリー活性の発見
クロマチン境界が染色体の核膜孔連繋によって発生する
染色体と核膜孔のかかわり

第2章細胞小器官へのターゲティングと膜透過

1. ミトコンドリア外膜タンパク質のミトコンドリアへの標的化と膜への挿入【三原勝芳】

ミトコンドリア輸送シグナル
外膜輸送系
外膜タンパク質の標的化と膜への組込み

2. ミトコンドリアをめぐるタンパク質フラックス【遠藤斗志也，江崎雅俊，山本　林，吉久　徹】

ミトコンドリア行きシグナル
インポート受容体の基質のプロテオーム解析
新規トランスロケータ構成因子の検索

3. 葉緑体へのタンパク質輸送はどこまでわかったか-共通性と独自性【菊地真吾，朝倉由香里，中井正人】

葉緑体包膜におけるタンパク質膜透過
チラコイドへのタンパク質輸送

4. ペルオキシソーム形成の分子基盤【藤木幸夫，向井　悟，本庄雅則】

ペルオキシソームの生合成機構
ペルオキシソーム形成因子のクローニング
ペルオキシンの機能解析

5. 酵母ペルオキシソームの生合成と分解の分子機構【阪井康能】

PTSとペルオキシン
ペルオキシソーム分解を担うPaz4

6. 植物ペルオキシソームの機能分化と生合成機構【二藤和昌，林　誠，西村幹夫】

植物ペルオキシソームの機能分化と転換
植物ペルオキシソームのタンパク質輸送機構
ペルオキシソーム形成因子と未知ペルオキシソーム機能

7. 小胞体での膜タンパク質の構造形成機構【阪口雅郎】

トランスロコンと膜結合リボソーム
シグナル配列の配向決定と組込み
１型シグナルアンカーの組込み解析
マルチスパン膜タンパク質の組込み
他律的膜内配置という新しい考え方
フォールディングによる膜内セグメントの形成

第3章小胞輸送とその制御機構

1. ポストゴルジ・ネットワークにおける小胞輸送【中津　史，高津宏之，大野博司】

AP複合体
GGA
輸送シグナルとその認識

2. 小胞体における輸送小胞形成とタンパク質選別の分子機構【佐藤　健，中野明彦】

小胞体からの輸送小胞形成
積み荷タンパク質の選別
輸送小胞形成，積み荷選別におけるGTPaseの役割は？

3. 小胞融合の選択性と小胞繋留機構-ゴルジ体を中心として【中村暢宏，吉村信一郎，申　惠媛，中山和久】

古典的SNARE仮説の欠陥
SNARE複合体の形成と膜融合
SM（Sec1/Munc18）タンパク質
低分子量GTPase：Rabファミリータンパク質群
小胞繋留に働く複合体

4. 発生における小胞輸送の役割【後藤　聡】

パターン形成
細胞運命の決定
細胞の形態形成
翻訳後修飾

5. 高等植物における小胞輸送研究-多様な高次機能発現における普遍的分子装置の役割を探る【上田貴志】

重力屈性と液胞輸送経路
植物の体軸形成から小胞輸送へ

6. 細胞の極性形成における極性輸送のメカニズム【原田彰宏】

基本的なステップの分類（sorting，transport，tethering，fusion）とそこに関与している分子
直接経路と間接経路について
上皮細胞と神経細胞の比較
apical sorting signalとbasolateral sorting signal
raftについて
細胞分裂/接着と極性輸送の分子レベルでの関連

7. 多細胞生物における調節性分泌の制御と意義【泉　哲郎】

小胞膜輸送の基本機構とRab・SNAREサイクル
構成性分泌と調節性分泌
調節性分泌に必要なコンポーネント
Rab27aとそのエフェクタータンパク質の膵β細胞，メラノサイトでの機能
調節性分泌経路の分子基盤の複雑性・多様性

8. 高等生物の多彩な分化形質を支えるエンドソーム・リソソーム【和田　洋，孫　戈虹，二井將光】

エンドソーム・リソソーム系オルガネラ
破骨細胞の機能を支えるエンドソーム・リソソーム：骨を吸収するしくみ
肺でのガス交換と防御：露出した細胞表層を守るリソソーム関連オルガネラ

9. エンドサイトーシス経路における分子選別-輸送シグナルとしてのユビキチン【梅林恭平，吉森　保】

ユビキチン化とエンドサイトーシス

第4章細胞内輸送の異常と疾患

1. 核膜と病気【原口徳子，志見　剛，平岡　泰】

核膜の構造と核膜タンパク質
ラミン病
ラミンB受容体（LBR）の病気
核膜孔複合体の病気
核膜タンパク質の機能

2. ウイルス感染と核-細胞質間輸送【永田恭介，斎藤祥子，滝沢直己】

ウイルスの核内移行
RNAウイルスゲノムの核外輸送
ウイルス感染によって生じる宿主因子の核内外輸送機構の阻害

3. ミトコンドリアタンパク質輸送・アセンブリー障害とミトコンドリア病【大竹　明，森　正敬】

タンパク質輸送，アセンブリーおよび安定化に関与する因子の異常症
mRNA結合タンパク質異常症
ミトコンドリアDNAの安定化異常症
その他

4. ペルオキシソームの形成障害と分子病態【藤木幸夫，奥本寛治，田村茂彦】

ペルオキシソーム病と細胞表現型
ペルオキシソーム形成異常症病因遺伝子の解明
臨床型と温度感受性細胞表現型
その他のペルオキシソーム病病因遺伝子の探索

5. タンパク質の品質管理とその破綻【永田和宏】

５つの品質管理戦略
品質管理の破綻としての病気

6. シナプス可塑性を支える小胞輸送の制御機構【佐々木卓也，西村範行】

シナプス小胞輸送とその制御分子群
Rab3A系
Ca2＋センサータンパク質群とRab3A系
CAZタンパク質群とRab3A系

7. リソソーム関連疾患と低分子量GTP結合タンパク質Rab-Rab27AとミオシンⅤaの運命的出会い【黒田垂歩，福田光則】

リソソーム関連オルガネラ
リソソーム関連疾患
新規Rab27結合タンパク質：シナプトタグミン様タンパク質（Slp）およびSlac2
Rab27A，Slac2-a，ミオシンVa，アクチンによるメラノソーム輸送機構

購入方法・送料について

本書は全国の羊土社取扱書店にてご購入いただけます．店頭にて見当たらない場合は，下記情報を書店にお伝え下さい．

【本書名】実験医学増刊：細胞内輸送研究の最前線〜核ー細胞質間輸送，オルガネラ輸送，小胞輸送のメカニズムとその破綻による疾患の全容に迫る
【出版社名】羊土社

お近くに取扱書店が無い場合，特に海外でご覧になりたい場合，羊土社HPでのご注文および発送も承っておりますので，下記ご参照のうえ，注文をご検討ください．

羊土社HPでのご注文について

本書を羊土社HPにてご購入いただきますと，本体価格に加えて，送付先・お支払い方法などにより下記の費用がかかります．お手続き等詳細は書籍購入案内のページをご参照ください．

分類	項目		費用
国内	消費税		+540円
	送料		0円（5,000円以上，国内送料無料）
	手数料（代引きのみ）		+300円
海外	航空便送料	第1地帯（アジア、グアム、ミッドウェイ等）	+960円
		第2地帯（オセアニア、中近東、北米、中米）	+1230円
		第2地帯（ヨーロッパ）	+1230円
		第3地帯（アフリカ、南米）	+1610円
	EMS便送料	第1地帯（アジア、グアム、ミッドウェイ等）	+1680円
		第2地帯（オセアニア、中近東、北米、中米）	+2360円
		第2地帯（ヨーロッパ）	+2600円
		第3地帯（アフリカ、南米）	+3080円