国際学会の前にCDで英語耳が鍛えられる初の実践本!基本単語・フレーズ集・発表例・ライブ講演の4Step構成で効果的なリスニング力UPをサポートします.ノーベル賞受賞者の生の講演も収録!
【Point】tobが癌抑制遺伝子であり,かつ骨形成のSmadシグナル伝達経路に関与していることを証明するための,さまざまな分子生物学的テクニックを用いた実験結果が紹介されています.研究の組立て方という点からも参考になる発表例.
【Point】マーカーとなるルシフェラーゼ遺伝子をトランスフェクションしてゲノムに取り込ませた初代培養細胞と成熟した卵子から核を除いた除核卵子を融合してin vitro発生を行わせ,in vitro再構築胚を形成し,その発生効率を検討しています.
【Point】Koehler博士の英語は典型的(スタンダード)なアメリカンイングリッシュで聞き取りやすい講演です.感染症の病態や原因となる病原体の同定と解析結果についての発表.
【Point】Schmerr博士の英語もアメリカンイングリッシュです.この講演では,血液のサンプルから異常プリオンを検出するための新手法について話しています.
【Point】ユビキチンによるタンパク質分解メカニズム解明へのストーリーが力強く語られています.博士の研究者としての信念やメッセージも込められた,情熱の伝わるプレゼンテーション.
海外で日本人の英語の講演を聴いてしばしば思うことは,「もう少し英語が何とかならないか」ということである.
多くの場合,単語の発音からしてなっていない.基本となる母音を,日本語のアイウエオのどれかに当てはめてしか発音できないのが一番大きな原因である.例えば,lowとlawをきちんと区別して発音している学生が何割いるだろうか.これは,逆にヒアリングについてもいえるだろう.日本国が英語を全く使わずに生きていけるというアジアには稀有な幸せな国であることからくるとしても,西欧優位の科学の世界では全く困ることなのだ.
英語学は翻訳学であるという長い伝統の国の中で科学者がハンディキャップをもたないで世界で活躍するためにはどうすればよいか.英語教育全体を論じている暇はない.今,ここに科学者となり諸外国の科学者と討論せねばならぬ若者がいるのである.彼らを如何に急速にbilingualoid(これは私の造語)に教育できるか.これに正面から取り組んだのが本書である.
トリックはCD-ROMによって実際の発音や講演・討論などを聴きながら,英語の綴りと発音(そしてもちろん,意味)の関係を知ることができるところにある.まず,生命科学で使う基本的な単語(例えば,アミノ酸)の正しい発音が示されるが,Step1では常に2種の基本的な発音記号が正しい母音の使い方を保証している.それから,Step2でよく使われるイディオム,フレーズと展開し,講演者や司会,または質問に常用される決まり文句がくる.そして,Step3に実際の国際学会での発表例がある.このように進んでくることによって,speakingもhearingも比較的障害なく進歩するように仕組まれている.仕上げとしてノーベル賞受賞者を含む超一流の学者の講演が付いており(Step4),これらを聴きながら理解し,内容の進展についていくのが理想であろう.
このごろ,“聞き流すだけ”などという怪しげな英会話習得法の広告が出ているが,私はこれには全く反対である.子供達は生きていく必要を懸けて,集中して大人の会話を聴き,発音を覚えていくのである.決して,聞き流したりなどしてはいないのだ.本書もしっかり発音記号を覚えること等,その気になって各節毎,短時間でも集中して聴き,発音してみることが必要であろう.その積み重ねは意外と早く会話能力を獲得することに繋がるのではあるまいか.方法が科学的に構築されているが故に,多くの人に試してもらい,「よかった」という声が聞けるのを楽しみにしている.
(評者)埼玉医科大学ゲノム医学研究センター 所長 村松正實
本書は英語耳を養うことを目標とした本です.平均的な日本人の英語力は概ね,読む>書く>聞く>話す,でしょう.これが学校教育の弊害によるものであることに疑問の余地はありません.大学入試センター試験に英語のリスニングが取り入れられるなど,改善の動きはみられますが,とうの昔に中学・高校を卒業したわれわれには縁遠い話です.
「リスニングの能力を高めるには,ネイティブスピーカーが話す通常スピードの英語をたくさん聞くのが一番の近道」とは,誰しも思っているところでしょう.そのためのテープ教材 (今ではCDですね)が世の中にはたくさん出回っていますし,CNNやハリウッド映画を題材とすることもでき,やる気さえあれば勉強法はいくらでもありそうです.しかし使われる語彙や表現は状況によってまったく異なるものです.「研究発表で使われる英語」を聞きこなすには実際に英語で行なわれる研究発表をたくさん聞くよりほかになく,学ぶ機会は意外と限られているのです.本書はこれに代わる機会を提供する画期的な教材です.
「英語をたくさん聞けばいい」というのには実は落とし穴があります.英語を単に聞き流すだけでは,聞き取れない部分はいつまで経っても分からない,という状況に陥りがちなのです.そうならないためには,書き下し文が用意された英語を聞き,頭の中で言葉と音声との対応をきっちり付けることが大切です.その意味で本書は,実際の研究発表にも勝る,この上ない学習教材と言えるでしょう.(東京工業大学大学院生命理工学研究科 助手 山口雄輝)
(評者)東京工業大学大学院生命理工学研究科 助手 山口雄輝
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