臨場感たっぷりの会話形式で,一流指導医の教育回診が体験できる!問診と身体所見から,まるで推理小説を解くかのように疾患を絞り込んでいくプロセスは一見の価値あり!鑑別などの重要ポイントも一目でわかります!
臨床研修の「お手本版」,医師の育て方
医師になる若者の多くは臨床を目指す.「医師免許をもつ」ということの社会的に第一義的な意義はそこにあるからである.だが医学部で,そして従来の大部分の医学部卒業生が臨床研修を受けていた大学病院で十分な臨床教育がされていただろうか?指導に責任のある医師たちの臨床能力,臨床教育能力は,卒業とともに医師となる若者を社会に送り出すに適切だっただろうか.そこに医学部教育の今日的課題がある.
社会,疾病構造等が急速に変化し,ヒト,モノ,情報が世界中に動くこのグローバル時代,医師の育成も,医療制度も従来とは違った社会のニーズに合わなければなるまい.これらの背景を受けて,医師育成の制度改革の第一歩として卒後臨床研修が必修となった.医学部での臨床教育改革を待っていればどれだけ時間がかかるかわからないという側面もあっただろう.しかし,卒後臨床研修が必修となったとたんに,卒業生の大学病院離れが進み,なぜか沖縄県立中部病院,そしてそこからスピンオフした群星沖縄病院群の臨床研修が注目を集め,多くの研修希望者が殺到する.決して名前の「ブランド」ではないのである.
実は沖縄県立中部病院の臨床研修は知る人ぞ知る,「グローバル時代」にふさわしい臨床研修の王道を目指す若者たちの集まるメッカだったのである.大学人は知っていたとしても,認めていなかった,認めたくなかったのである.そこからは多くのすばらしい医師が育ってきた,その人たちがまたすぐれた後継者を育ててきた.医師育成の好循環のお手本だったのである.歴代の多くの医師の薫陶を受けて育った医師たちが,次の世代を育てる,その延長上に,この本の主人公,宮城征四郎先生がおられる.
臨床教育は実践であり,座学ではないのです.いくら本を読んでいても現場では何もできません.多くの患者さんに接し,多くの先輩,同僚,スタッフたちに囲まれ,時にしかられ,時にはげまされ,充実した時間を共有しながら医師として日々に向上していく自分を感じ取れる環境.仕事も,勉強もつらい,だけど楽しい.いつのまにか,自他共に認める,認められる,自分の力に自信ができてくる楽しさは,医師になるうえでのとても大事な時間なのです.
テニスがうまくなるには,100冊の本を読み,100つのビデオ教則本を見て,たくさんの名勝負のビデオを見たり,試合を見に行っても,ちっともうまくなりません.わかりますね?臨床もそうなのです.学生のときからいくら教科書を読んでいても決していい医師にはなれません.そうです.現場に出る,良き指導医と責任をもって多くの患者さんを担当し,自分で診療しなければ,臨床はいつまでも身につかないのです.技術ではありません,検査でもありません.患者さんに接し,訴えを聞き,問いかけ,「作業仮説」を構築しながら,それらの「仮説」に従って診察する.そして「仮説」の検証に検査をする.そこでまた本を読み,患者さんを指導医と診て,次を考え対応する.これらの連続から,すばやく救急にも対応できるすばらしい臨床医ができてくるのです.この連続,積み重ねこそが臨床,そして患者さんが次から次へと投げかけてくる謎と謎解きの連続が醍醐味なのです.まず,頭を働かせよう,そして考えよう,それから手を動かそう.
テニスのラケットを持ち,球を打ち,ラリーをしてみる,コーチを受ける,そこで本を読む,ビデオを見る,またプレーする.これこそがテニスをすること,うまくなる道ではないですか?臨床も全く同じなのです.さあ,そのつもりで宮城先生との回診を読みながら,一つ一つのステップを想像して,そこで考えてみてください.何が感じられますか? いつもの診療と同じですか? 何か違いますか? あなたの指導の先生と比べてどうでしょうか? あなたの学生や研修医への指導と同じですか?
本書から感じ取れる宮城先生の教育回診のすばらしい点は何か.研修医とのフラットな人間関係ではないか.「医師としての仲間」としての双方向の問いかけと対話を通して人を育てたいという情熱,「若者を育てたい」という暖かさを感じないか?決して「タテの人間関係」ではないのある.これが良き医療人を育て,医療の質を向上させていく基本であることを無意識にでも,感じられているに違いない.それは自分が若いときに受けてきた,自分を育ててくれた人たちへの「恩返し」という意識であり,自分が引き受けた「財産」を,自分を通じて引き継いでほしいという,先生自身の内的な向上心に違いない.ところどころに提示される参考書も,きわめて適切,知る人ぞ知るものであり,すばらしい.
さて,この15例の宮城先生との「回診」,どんな感じがしますか? 楽しそうですか? 感覚的にわかりますか,私の言っていることが?テニスをしてみなければ,テニスの楽しさはわからないのですよ.楽しく,一緒に成長する,これがどの分野でも,人を育てる,自分も向上を続ける,上達の秘訣です.そして「達人」が生まれるのです.
さあ,恥ずかしがらずに明日からでもやってみよう,真似してみよう.どれだけできるか,できるようになるか,みんなでやってみよう.すべては真似から始まるのです.本書で物足りなければ,ほかにも宮城先生の指導を受けてみる材料はあります.できれば体験してみよう,宮城先生から,もし宮城先生に直接お会いできなければ,先生の教え子からでも.
さあ,どのケースからでもいいから,ステップごとに,できるだけ想像力豊かに「現場感覚」をもって読んでみよう.皆さんにこの「お手本版」を読んで欲しいのです.
黒川 清(くろかわ きよし):米国内科専門医,腎臓専門医,米国内科学会マスター,日本とCalifornia州医師免許,米国内科学会日本支部長. 元UCLA医学部内科教授,東京大学第一内科教授,東海大学医学部長,日本学術会議会長等を歴任.ホームページ:http://www.kiyoshikurokawa.com
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