日本における年間の新規結核患者は約2万人発生しており，先進国のなかでも高い数字です．日本において結核は，いまだ日常に遭遇しうる疾患なのです．

患者さんは微熱が続く，咳が続く，体重が減る，血痰が出る，リンパが腫れる，胸部異常陰影が見つかったなど多彩な症状で受診します．そのほとんどで，「私は結核（が心配です）です」とは受診しません．結核の患者さんは，日常的に結核専門病院でないみなさんの医療機関に受診しているのです．つまり，初期臨床研修であっても，結核を疑い，診断するところまでは，専門家でなくてもできなくてはいけない必須のスキルになります．

このスキルを身につけることで，結核を早期に疑い診断できれば，患者さんの予後のみならず，周囲や自身の結核の感染リスクを下げる手段となるのです．結核なんてうちには来ない，結核かもと言われたら診療しないというような姿勢の方が危険です．

初期研修医や非専門医にこそ，結核を疑い，診断し，対応できるようになってほしい．そのような願いから，本特集が企画され，結核を日常的に鑑別診断に浮かべながら格闘している非結核専門病院の総合内科医，呼吸器内科医，感染症内科医により執筆されました．

（中略）

実際に非結核専門病院である皆さんの医療機関に患者さんが受診したとき，どのような場合に結核を疑い，診断し，確定診断されるまでどのように対応するのかを理解してもらうことが本特集の第一の目的です．