Gノート別冊:Common Diseaseの診療ガイドライン〜総合診療における診断・治療の要点と現場での実際の考え方
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Gノート別冊

Common Diseaseの診療ガイドライン

総合診療における診断・治療の要点と現場での実際の考え方

  • 横林賢一,渡邉隆将,齋木啓子/編
  • 2017年03月21日発行
  • B5判
  • 319ページ
  • ISBN 978-4-7581-1809-5
  • 5,060(本体4,600円+税)
  • 在庫:あり
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一般内科,総合診療でよく出合う疾患について,各ガイドラインの要点と,ガイドラインと現場とのギャップを埋める国内外のエビデンスを1冊に.実際の現場ではどう考えるか,どこまで診るか,がサッと調べられます.

目次

序【横林賢一,渡邉隆将,齋木啓子】

本書の見かた

診療ガイドライン一覧

巻頭カラー

呼吸器疾患

01 急性上気道炎(かぜ)【岸田直樹】

02 インフルエンザ【菊地由花,河原章浩】

03 喘息【田原正夫】

04 COPD【菅家智史】

循環器疾患

05 高血圧【永田拓也】

06 慢性心不全【加藤雅也】

07 心房細動【紺谷 真】

消化器疾患

08 ヘリコバクター・ピロリ感染症【小林知貴,長澤佳郎】

09 B型慢性肝炎【忍 哲也】

10 C型慢性肝炎【忍 哲也】

内分泌・代謝疾患

11 脂質異常症【瀬野尾智哉】

12 糖尿病【黒澤聡子,片桐秀樹】

13 甲状腺機能低下症【五島裕庸,北村友一,川島篤志】

14 甲状腺機能亢進症【金子 惇】

15 高尿酸血症・痛風【藤原昌平】

筋骨格系疾患

16 腰痛【白石吉彦】

17 変形性膝関節症【池尻好聰】

18 骨粗鬆症【池尻好聰】

19 関節リウマチ【遠藤功二】

精神・神経疾患

20 頭痛【茂木恒俊,横須賀公三】

21 うつ病【森屋淳子】

22 不安障害【木村一紀,井出広幸】

23 慢性期の脳卒中【臺野 巧】

24 睡眠障害【横林賢一】

25 アルコール関連問題【山梨啓友,前田隆浩】

26 認知症【山口 潔】

アレルギー疾患

27 アレルギー性鼻炎【加藤洋平】

28 アトピー性皮膚炎【岩本修一,横林ひとみ】

29 蕁麻疹【瀬尾卓司,横林ひとみ】

その他

30 急性中耳炎【杉山由加里】

31 慢性腎臓病【孫 大輔】

32 (鉄欠乏性)貧血【本村和久】

33 熱中症【佐々木隆徳】

診療ガイドラインの質を見極める【南郷栄秀】

書評・感想
  • この意欲的な書籍で取り扱われている疾患群は,プライマリ・ケア外来において総合診療医あるいは家庭医が日常的に取り組んでいる健康問題群である.

    自分の診療レベルは本当に標準的なものなのか? という疑問は,すべてのジェネラリストが常に直面するものである.しかし「標準」は何か? を示す診療ガイドライン(以下ガイドライン)も,新たにあらわれるさまざまな臨床研究の結果定期的に更新されるものであるし,そもそもガイドラインそのもののあり方も継続的に問われている.近年重視されているGRADEシステムに準拠したものから,あいかわらずのエキスパートオピニオンのみで構成されるものまで,その質には相当な幅がある.また,多くの日本のガイドラインが有料であることも問題視されている.しかし,ガイドラインが,総合診療医が自ら作成していかねばならないナレッジベース(知識基盤)の重要な構成要素であることは間違いない.そして,この書籍の構成はまさに総合診療医のナレッジベースのあり方を具体的に示している点で,単なるガイドラインの解説書にとどまらない内容をもっていると言えるだろう.

    プライマリ・ケア外来における主要疾患の現時点でのガイドラインの要点が簡潔にまとめられていること自体きわめて有用であるが,さらにビヨンド・ザ・ガイドラインという項目で,著者が診療のコンテキストのなかで重視している独自の「考え」や「経験」を記述しているところが面白い.

    標準的な診療を行えばすべてがうまくいくということは当然なく,予想外のことや驚きに出合うのが臨床現場である.こうした予想外のことや驚きを振り返ることによって,自分なりの実践の理論(theory in practice)を蓄積していくことが現場のエキスパートとしての成長を保証する.こうしたエキスパート像をドナルド・ショーンは省察的実践家と呼んだが,これは生涯学習として,ガイドラインを考慮に入れることに加えて,個々の臨床経験自体を重視することが重要であることを示している.

    また,Gabbayら1)が英国家庭医の診療に関するエスノグラフィー研究で提示したように,家庭医の診療はガイドラインに沿って診療をしているのではなく,ガイドラインを包含しつつも,診療のコンテキスト,地域性,同僚とのつながりなどにより構成される「マインドライン(mindline)」に沿って診療をされているといわれている.本書は,そうした現実の総合診療医のプライマリ・ケア外来診療の様相を具体的に記述しようとする試みにもみえる.

    本書を編集した3名の若手医師は,CFMD家庭医療学レジデンシープログラムの第一期生である.彼らと一緒に日本における家庭医療の新しい研修を作り上げることを目指して苦闘していた日々を懐かしく思い出す.そして今,彼らがこうした意欲的なプロダクトを世に問うたことを誇りに思う.ぜひ多くのプライマリ・ケアに従事する臨床家に読んでほしい.そして,読者がこの本をきっかけに,自分ならではのナレッジベース,そして診療マインドラインを作っていってほしいと強く願う.

    参考文献:1)Gabbay J & le May A:Evidence based guidelines or collectively constructed "mindlines?" Ethnographic study of knowledge management in primary care. BMJ, 329:1013, 2004

    藤沼康樹〔医療福祉生協連家庭医療学開発センター(CFMD)〕

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