工学や物理学におけるロバストネス・トレードオフ
こうがくやぶつりがくにおけるろばすとねすとれーどおふ
ロバストネス・トレードオフは,制御工学や複雑系物理の分野で活発に研究されている.UCSBのCalsonとCALTECHのDoyleは,この現象について,森林火災などの単純化した物理モデルでその概念を示し,HOT(highly optimized tolerance)とよんでいる.このモデルでは,森林火災における防火帯の数(ロバストネス)と木の本数(利益)の間にトレードオフが成立している.ロバストネスの向上は他の部分での脆弱性の増大につながり,全体でのロバストネスは一定であるというコンセプトは,制御工学のBode Integral Formulaにも示されている.これは,増幅器の負帰還というシステム制御の一側面の現象であるが,代謝工学でも同様に,システムの状態空間の近傍でのシステム・パラメータの変動に対して,感受性が保存されるなど,多くのシステムでトレードオフの存在が認識されている.このようなトレードオフは,ある目的に最適化されたシステムでは,不可避的に出現する現象なのではないかと考えている.しかし,ロバストネスの数理は,発展途上でありこれから多くのことが明らかになるであろう.(実験医学2013年1月号より)
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