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集団的浸潤

しゅうだんてきしんじゅん

複数の腫瘍細胞が一群を形成したまま浸潤する,集団的浸潤の現象自体は,病理医によって以前から記述されていた.しかしそのメカニズムはほとんどわかっていなかった.Gaggioliらは,扁平上皮がん(SCC)の腫瘍細胞は,浸潤性を獲得しても上皮マーカーを失わないことから,そのメカニズム解析に用いた.細胞外基質を用いた三次元培養系で,表面に置かれたSCC細胞は,単独では浸潤しない.しかし,腫瘍由来の線維芽細胞とともに培養した場合には浸潤能を獲得した.ここで各々の細胞の動きを観察したところ,浸潤しつつある一群のSCC細胞は常に線維芽細胞を先頭にしていることが明らかにされた.すなわち,集団的浸潤のメカニズムを明らかにすることにより,これまでEMTの関与した腫瘍細胞のみによって論じられてきた腫瘍浸潤の過程に,EMTの直接関与が認められず,線維芽細胞が深く関与した機構が示唆されたわけである.(実験医学増刊275より)

分子標的薬開発への新たなる挑戦

有力な分子標的薬の創薬物語と新薬開発動向から次世代創薬テクノロジーまで

岡野栄之,岩坪 威,佐谷秀行/編

解説は発行当時の掲載内容に基づくものです

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