赤ふん坊やの「拝啓 首長さんに会ってきました☆」 〜地域志向アプローチのヒントを探すぶらり旅〜

《大阪府 大東市》
東坂浩一市長

《地域の概要》大阪府・大東市
写真は,大東市で活躍した三好長慶公にちなんだイベント,三好長慶公武者行列in大東の様子.
《地域の概要》大阪府・大東市
人 口:
119,550 人(高齢化率27%)
面 積:
18.27 km2(人口密度6,543 人/km2
地域の特性:
西は大阪市に隣接し,東は山間部を有する,大都市と自然の併存するまち.平安時代から東高野街道など大阪と奈良を結ぶ交通の要所として発展.戦乱の舞台となった後は,商都大阪の重要な後背地となる.現在も大阪都心部と関西学術研究都市の中間という好立地を活かし,府東部のものづくり産業の集積地として発展を続ける.
大阪府大東市の東坂浩一市長は,公的サービスに民間のノウハウを取り込むことで,住民サービスの質を向上させているんだ! 日本ではじめて基幹型地域包括支援センターを株式会社に委託して,さまざまな効果を得ているんだって! そんな市長の考え・思いはどこから出てきているのか? お話を聞いてきました!

自分で感じたまちづくりを実現させたい

赤ふん坊や東坂市長,こんにちは! 大東市って,大阪市の隣でとっても利便性の高い,あたたかい雰囲気のまちだね! 昔から,天下の台所・大阪を支えてきたんだなあ……☆ 市長はやっぱり,安田記念講堂や赤門で有名な,日本を代表する大学で学びたくて,大東市長になったんでしょ?……って,それを言うなら東大・・でんがな! !

東坂自己完結,やめてもらっていいですか? (汗)私は地元大東市で建設会社を営んでおりました.当時より,大東青年会議所等の地域活動として,地域の課題を見つけて具体的な解決のための提案を行政に申し出,対応をお願いすることがありました.しかし,当然ながら行政にも行政なりの事情ややり方があり,その意見がすんなりと聞き入れられることはそれほど多くなく,もどかしい思いをしてきました.そのようなやりとりのなかで,自分がやらないとまちは変わらない,自分で感じたまちづくりを実現させたい,という思いがどんどん膨らんでいき,平成24年に48歳で市長になったんです.

坊やまちへの思いがどんどん膨らんだんだね! ボクの体も,どんどん膨らんで……って,誰が着ぐ○みやねん! !

東坂何も言ってないし……(汗)

坊やじゃあ,市長は大東市をどんな市にしたいと思ってるの?

東坂大東市は,自律性の高いまちで,防災・防犯活動や地域活性化活動など,住民自治が非常にアクティブなんです.それはもう,おせっかいなくらいに(笑).私はそれを誇らしいと思っていますし,“自分たちのまちは自分たちでつくる”の精神のもと,住民自治や地域活動をさらにきわめたいとも思っています.加えて,公的サービスに民間のノウハウを取り込むことで,住民サービスの質を一段と向上させたいとも考えています.前述の住民性だからこそ,これは成功すると確信しています.

坊やなるほど,その防犯活動で,ふんどし一丁の怪しいやつを捕まえて……って,誰が変○やねん!!

東坂大阪だからって,無理に寄せなくていいんだよ……(汗)

これからの時代の需要を的確に捉えた仕事を

坊やそれで大東市は,健康や医療のために,どんなことに取り組んでいるの?

東坂大東市では,基幹型地域包括支援センターを日本ではじめて株式会社に委託し,その会社に4つの関連法人を置き,機動力高く,また臨機応変に地域包括ケアを推進してもらっています.株式会社や関連法人で働く医療介護関係の専門職の職員は皆,意欲的で能力が高く,これからの時代の需要を的確に捉えた仕事をしてくれています.有名なところでは,先ほどの住民自治をふんだんに生かした介護予防体操「大東元気でまっせ体操」拡散の取り組みです.地域のつながりを生かした主体的な住民活動として多くの市民の皆さんに取り組んでいただき,その他の取り組みも功を奏して,平成28年度から令和元年度の4年間で介護給付費を12億円減少させることに成功し,全国・世界から注目されています.

坊やへぇ~,スゴい効果だね~! ボクもこれからの時代の需要を的確に捉えて,ふんどしの市場を12億円拡大したいと思います! !

東坂く,くれぐれも的確にね……(汗)

高齢者が社会とつながっている期間を延伸

坊やでは,大東市はこれからどんな課題に取り組んでいきますか?

東坂そうですね,類を見ない高齢化を目前に,高齢者が少しでも長く社会とつながり続ける必要性を感じています.これまでも高齢者のパートタイムワークの創出に取り組んできましたが,高齢者が社会とつながっている期間を延伸することが,今まさに強く求められているのです.これはひいては高齢者の健康寿命の延伸につながるはず.高齢者がますます社会に出やすいよう,道路の整備などの都市計画や,そのための財源確保,公民連携にも取り組んでいきたいですね.公民連携を推進すれば,住民サービスにおいて「質は高く,コストは低く」が実現し,“あれかこれか”の取捨選択ではなく,“あれもこれも”の一挙両得が可能となるでしょう.

坊や「質は高く,コストは低く」……すばらしい言葉だね! ふんどし市場拡大の際に参考にさせていただきます☆

東坂いろいろ心配だなぁ……(汗)

敷居の低さと専門性の高さを両立

取材の記念に,東坂市長と.市民と行政職員への愛にあふれた方でした♡
取材の記念に,東坂市長と.市民と行政職員への愛にあふれた方でした♡

坊やでは,市長が総合診療医にしてほしい,こうあってほしいと思うことを教えてください!!

東坂そうですね,医療機関によって,どれくらい気軽に受診・相談できるかという“敷居の低さ”が違うと思いますが,総合診療医の皆様には,ぜひ敷居の低いかかりつけ医であってほしいと願います.と同時に,医療には専門性の高さも求められますので,専門医療機関と適切に連携していただいて,敷居の低さと専門性の高さを両立させてほしいですね.それと,まちづくりはひとづくりだと考えていまして,ひとづくりは健康長寿が基礎になると思いますので,安心安全のまちのために行政とも連携していただけると心強いです!

坊やでは最後に,全国の読者の皆さんへ,メッセージをお願いします!

東坂大東市は,大阪市に隣接しながらも自然豊かな山間部をもつ,利便性と環境に恵まれたまちですし,また,飯盛城など歴史的背景の深いまちでもあります.機会があればぜひ大東へお越しください,まちを支えるナカマとして,全力で歓迎いたします!

坊や市長,それは,大東市・・・は自然豊かな大都市・・・ってことですね♡ お後がよろしいようで☆

東坂最後まで全力でありがとうございます (汗)

坊や東坂市長,今日はお忙しいなかありがとうございました! 次回は,兵庫県・養父市の広瀬栄市長にお話を聞いてきます! お楽しみに~☆☆☆

自分のまちの地域包括支援センターを正しく理解し,得意分野や特長を生かした連携・協働で地域課題を解決しよう.
赤ふんウォッチ
市民の通いの場での「大東元気でまっせ体操」の様子

実際に,基幹型地域包括支援センターを委託されている会社の皆さんの取り組みを拝見してきました☆ 大東公民連携まちづくり事業株式会社〈コーミン〉とその関連法人では,オリジナルの介護予防体操「大東元気でまっせ体操」を用い,市民の皆さんが地元で主体的に通いの場を創出できるよう支援してるんだって.これまでに市内122カ所の行政区で同体操を元にしたコミュニティが運営されているそうです! この日も,会社の専門職の方が講師を務め,市民の皆さんと体操に励んでいらっしゃいました.体操のほかにも通いの場を提供してるんだって! どれもとっても楽しそう……ボクも通っちゃおうかなぁ♪

コラム 赤ふん坊やマネージャーの今回の地域志向アプローチのタネ 地域包括支援センターの運営

今回紹介した大東市では,基幹型の地域包括支援センターを株式会社に委託し,関連法人とともに5つの地域包括支援センターを運営されていました1).地域医療や総合診療の現場や,地域課題を解決しようとする地域志向アプローチの現場に非常に親和性の高い「地域包括支援センター」,皆さんはどれほどかかわっていらっしゃいますか?

そもそも地域包括支援センターとは,介護保険法で定められた,地域住民の保健・福祉・医療の向上,虐待防止,介護予防マネジメントなどを総合的に行う機関であり,どの保険者(自治体)にも設置がされています.その業務は主に,高齢者等の総合相談,権利擁護(虐待防止等),ケアマネジメント支援(介護支援事業所のバックアップ),介護予防支援,地域ケア会議推進です.原則どのセンターにも社会福祉士,保健師,主任ケアマネジャーが配置されています.目安として人口2~3万人に1カ所設置されています.サブセンター(派出所)やブランチ(窓口)の設置も認められています.平成27年度からは,複数の地域包括支援センター間の総合調整等の機能をもつ「基幹型地域包括支援センター」や,認知症支援等の特定の機能を強化し,他のセンターの業務をバックアップする「機能強化型地域包括支援センター」の設置が検討されるようになっています.

地域包括支援センターの運営には大きく2つあり,自治体が役所役場等で直接運営する「直営」と,社会福祉法人やNPO法人等に委託して運営する「委託」があります.全国的には,直営が約2割,委託が約8割で,人口の少ない自治体ほど直営が多い傾向があるようです.直営と委託,それぞれどのようなメリットがあるのでしょうか.

【直営のメリット】

  • 役所役場職員が運営するため,自治体の施策の周知や徹底が容易である
  • 役所役場であることで,住民の安心・信頼が得られやすい
  • 役所役場という公正・中立性を確保できる
  • 役所役場内多分野連携により困難事例にも対応しやすい
  • 役所役場職員の権利により,権利擁護や虐待対応がスムーズ

【委託のメリット】

  • 業務量等に応じた柔軟な人事異動が可能
  • 定期人事異動がないので,専門職の技術向上や地域との連携が容易
  • 部署における承認手続きや予算の使途指定の関係で,役所役場に比べて物品の調達が比較的容易
  • 緊急時以外の夜間・休日対応が実現しやすい
  • 役所役場よりも社会人採用等に融通が利くため,実務経験を積んだ専門職の確保が容易

地域課題を解決しようとする際に重要なパートナーとなる地域包括支援センター.あなたの地域のセンターがどのような特長をもっているのか,正しく理解し協働することで,きっと良質な地域志向アプローチに近づくことができるでしょう.

東坂浩一(Koichi Higashisaka)
東坂浩一市長

大阪府大東市・市長
昭和60年関西学院大学経済学部卒業後,OSKA STEEL Co. Ltd.(米国マサチューセッツ州ウースター)を経て平成元年(株)三住建設入社,その傍ら青年会議所活動にもかかわり,平成11年~(社)大東青年会議所理事長,平成12年(社)日本青年会議所近畿地区大阪ブロック副会長を歴任.平成19年4月~平成22年3月 大東市立谷川中学校PTA会長を務める.平成21年1月より同社代表取締役社長.平成24年5月大東市長就任,現在3期目.学生時代より自分の能力や才能の無さを痛感し,能力のない者が戦うための武器は粘りと努力しかないと悟り,座右の銘は“一心不乱”.

井階友貴(Tomoki Ikai)

福井大学医学部地域プライマリケア講座 教授(高浜町国民健康保険和田診療所/JCHO若狭高浜病院) 福井県高浜町マスコットキャラクター「赤ふん坊や」健康部門マネージャー.着ぐ○み片手に地域主体の健康まちづくりに奮闘する,マスコミも認める(!?)“まちづくり系医師”.