赤ふん坊やの「拝啓 首長さんに会ってきました☆」 〜地域志向アプローチのヒントを探すぶらり旅〜

《沖縄県 北中城村》
比嘉孝則村長

《地域の概要》沖縄県・北中城村
写真は,大型ショッピングセンターや医療スポットが立ち並ぶライカム地区.
《地域の概要》沖縄県・北中城村
人 口:
17,950人(高齢化率23%)
面 積:
11.54 km2(人口密度1,555 人/km2
地域の特性:
沖縄本島中部の東海岸に位置し,中城湾に面する,日本で最も人口密度の高い村.世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」に属する中城城跡や,重要文化財の中村家住宅といった文化財から,イオンモール沖縄ライカムといった商業施設まで,幅広い文化に触れることができる.女性長寿日本一に何度も輝く,長寿村.
沖縄県北中城村の比嘉孝則村長は,村民の強みや特徴を深く理解し,村民が主役になれるまちづくりを追求しているんだ! 女性長寿日本一の秘訣を感じたよ! そんな村長の考え・思いはどこから出てきているのか? お話を聞いてきました!

自然,文化,歴史と開発がマッチした村へ

赤ふん坊や比嘉村長,こんにちは! 北中城村って,素晴らしい史跡あり,大きなショッピングモールもあり,昔と今が融合したような村だね! 昭和生まれの永遠の6歳のボクも,昔と今が融合したようなもんだよね♪ そして,北中城村といえば,女性長寿日本一! 比嘉村長はやっぱり,そんな長寿の村で世界一の長寿をめざして,村長になったんでしょ?

比嘉長寿はめざしたいけど,世界一はめざしてないなあ……(汗).私は北中城村役場職員として,まちづくりや財政,合併問題などにかかわってきましたので,村のさまざまな側面を理解してきました.2005〜2015年の3期連続女性長寿日本一であることも誇りに思い,さらにそれを向上させたいと思ってきました.そんな「長寿だけでなく,村民の幸福,つまり住民福祉に資したい」という思いが募り,村長に立候補したというわけです.

坊やなるほど,3期連続女性長寿日本一をさらに向上させて…3期連続女性長寿宇宙一にしたかったんですね!!

比嘉いや,そっちじゃなく……(汗)

坊やじゃあ,村長は北中城村をどんな村にしたいと思ってるの?

比嘉北中城村は広くはないですが約1.8万人の村民がいて,人口密度日本一の村になっています.人口は微増しています.これは,大型ショッピングモールのある地区を中心に開発が進められているからです.一方,中城城跡など,文化財も豊富に存在していますし,広域景観整備にも取り組んでいます.緑豊富な田園地区・文化的地区から,開発が進む市街地区までありますが,残すべきものは残し,創るべきものは創り,全体にマッチしたまちづくりを進めたいですね.

坊やマッチ・・・したまち・・づくりをするって!! こりゃ一本取られましたわい☆

比嘉……町じゃなくて村,だけどね…….

ソーシャル・キャピタルを高める女性の活動を行政も支援

坊やそれで北中城村は,健康・保健・福祉分野では,どんなことに取り組んでいるの?

比嘉北中城村といえば女性長寿日本一ですが,その要因を探ってみると,女性会や老人クラブなど,とにかく女性が力強いことがあげられると思います.結婚されて外部からいらっしゃっても,地域を引っ張っていく力強さを備えていらっしゃる.畑をされたりサークル活動をされたりと,活動性の高い方が多いです.また,青年会や子ども会などもさかんで,村の女性を支えていると感じます.そんなソーシャル・キャピタルを高めようという動きを行政もさまざまな形で支援しており,課同士のコラボレーションを図って健康×まちづくりの取り組みを実現したり,学校教育や社会教育の現場で地域のつながりを向上させたり,介護者養成講座を実施したり,観光協会等の有志と村役場で健康サポートチームを結成してショッピングモール周遊のハートロードを設置したりしています.村役場職員の意識も高く,直営の地域包括支援センターから機動力高くさまざまな保健事業を展開していますし,自主的な勉強会開催や国保連合会のセミナー参加等,積極的に研鑽しています.

坊やハート型のハートロード,素敵ですね~! ! 今度はふんどし型のふんどしロード,つくりませんか?

比嘉か,考えておきます……(汗)

健康長寿の人が主役になれるまちづくりを

坊やでは,北中城村はこれからどんな課題に取り組んでいきますか?

比嘉そうですね,今後日本はますます高齢化が進むことになりますが,原点に立ち戻って,高齢になってももう一度花を咲かせていただきたいと心から願っています.九州沖縄地区の幸福度や住み続けたいまちランキングで上位の本村で,健康長寿の人が主役になれるまちづくりをますます推進していきたいですね.課題として地域組織の弱体化があげられるかもしれませんが,分散してしまった組織が1つにまとまったり,かかわり合えたりする支援をしていきたいと思っています.

坊や原点回帰,大事ですよね.日本の下着もふんどしに原点回帰すべきと思いませんか?

比嘉い,いいんじゃないでしょうか……(汗)

気軽に相談できる安心の医療を

取材の記念に,比嘉村長と.高齢女性にモテそうな,優しい村長さんでした♡
取材の記念に,比嘉村長と.高齢女性にモテそうな,優しい村長さんでした♡

坊やでは,村長が総合診療医にしてほしい,こうあってほしいと思うことを教えてください!!

比嘉以前,「かかりつけ医」についての本を読んだことがあります.気軽に相談できて安心を届ける役割は,総合診療医の重要な役割の1つですよね.北中城村でも,3つの病院と診療所,企業,村役場が連携して,気軽に相談できる医療を提供してくださっています.全国でこのような機能が総合診療医によって果たされることを願ってやみません.

坊やでは最後に,全国の読者の皆さんへ,メッセージをお願いします!

比嘉北中城村は,米軍基地の影響もあって,日本初(沖縄本土復帰前)のドライブインなど,アメリカ文化を受け入れてきました.移住者も多く,外を受け入れる風習が浸透していると感じます.学問や文化にも熱心で,教育立村をめざしています.沖縄にいらっしゃるなら,ぜひとも北中城にお越しください,お待ちしております!

坊やボクもアメリカではSumo Wrestlerと間違えられるんです,だから受け入れてくださいね♪

比嘉ちょっと言ってる意味がわからないです…….

坊や比嘉村長,今日はお忙しいなかありがとうございました! ボクの「拝啓・首長さんに会ってきました☆〜地域志向アプローチのヒントを探すぶらり旅〜」は,過去の回もすべて,ウェブGノートでどなたでもご覧いただけるようになっています,また機会を見つけて取材を続けたいと思います! 次はあなたのまちにお邪魔するかも!? では,またお会いしましょう~☆☆☆

女性から男性へとつながりのチカラを発展させ,まち全体を健康に.
赤ふんウォッチ
北中城村女性会の様子.

実際に,村の女性の会合にお邪魔してみました☆ 北中城村女性会は,村の女性ならではの視点や得意分野を活かして,中学高校の制服リユース事業や,文化的・運動的教室を開催する「ちゅららん学級」,交通安全登校見守り活動,その他村の事業への各種協力活動など,幅広く活動されている団体です.すごいパワーに圧倒されちゃいました! 皆さん本当に楽しそうで,新しいことにもどんどん挑戦されていました.今年度はSDGs服福交換会を予定しているんだって! ボクも参加して,素敵なふんどし見つけようかな♪

コラム 赤ふん坊やマネージャーの今回の地域志向アプローチのタネ 「女性主体に醸成するソーシャル・キャピタル」

今回お邪魔した北中城村では,女性の皆さんが楽しく活発に地域活動を展開していらっしゃいました.地域活動がさかんなことや社会参加が多いことは,ソーシャル・キャピタル(社会関係資本:地域社会におけるつながり,交流,社会参加,信頼関係等がもたらす効果.本連載第1回参照)が優れているといえ,このことが北中城村の健康指標の向上に寄与している可能性は十分に考えられます.

一般的に,ソーシャル・キャピタルの指標,特に「友人・知人との交流」は,男性よりも女性の方が優れているとされ,それは筆者が福井県高浜町で定期的に実施している高齢者を対象とした調査でもわかっています.男性より女性の方が平均寿命・健康寿命ともに優れていますので,夫は妻に支えてもらいやすいですが,妻は夫に先立たれていると頼れません.介護保険も女性の利用が非常に多いことも考えると,女性のソーシャル・キャピタル向上は効率的な方法ともいえるでしょう.

とはいえ,男性の健康こそどうしよう,というのがわれわれ総合診療医の悩みでもあります.そこもソーシャル・キャピタルの出番でして,筆者の調査でも,女性は「買いものができるIADLを保てている人」や「店が近くにある人」が毎日野菜を食べられている一方,男性はIADLや店の近さは関係なく,「独居でない人」や「助けてくれる人がある人」が毎日野菜を食べられていました1).女性の活動を発展させ,女性から男性を誘ってもらえるつながりに進化させていくことで,男性もつながりのチカラの恩恵を得ることができそうです.皆さんのまちでも,女性から男性へと,ソーシャル・キャピタルが向上することを祈ります.

文 献
  1. 井階友貴:Social Capital:予防としての地域づくり.「スーパー総合医 予防医療のすべて」(岡田唯男/専門編集,長尾和宏/シリーズ総編集,垂井清一郎/監),p344-347,中山書店,2018
比嘉孝則(Takanori Higa)
比嘉孝則村長

沖縄県北中城村・村長
昭和57年に北中城村役場に赴任,企画開発課,生涯学習課,福祉課,総務課,企画振興課等を歴任し,令和2年12月北中城村長就任.地域のコミュニティ意識の希薄化が危惧されるなか,地域の教育力や地域の福祉力をどう高めていくか腐心しています.地域の各種団体の元気が自治会の活性化につながり,自治会の元気が村の活性化につながると思っています.地域の元気が村勢発展のバロメーターです!

井階友貴(Tomoki Ikai)

福井大学医学部地域プライマリケア講座 教授(高浜町国民健康保険和田診療所/JCHO若狭高浜病院)
福井県高浜町マスコットキャラクター「赤ふん坊や」健康部門マネージャー.着ぐ○み片手に地域主体の健康まちづくりに奮闘する,マスコミも認める(!?)“まちづくり系医師”.