赤ふん坊やの「拝啓 首長さんに会ってきました☆」 〜地域志向アプローチのヒントを探すぶらり旅〜

《静岡県 森町》
太田康雄町長

《地域の概要》静岡県・森町
写真は新東名高速道路が通る森町の風景
《地域の概要》静岡県・森町
人 口:
18,507 人(高齢化率32.6%)
面 積:
134 km2(人口密度138 人/km2
地域の特性:
静岡県西部に位置する町.遠州の小京都と呼ばれるように歴史が深く,「急須でお茶を飲む町」を推進するほか,トウモロコシ―稲作―レタスの三毛作化・ブランド化をするなど,恵まれた気候を存分に生かしたまちづくりを進めている.
静岡県森町の太田康雄町長は,人口2万人弱の自治体立の病院の難しい運営に関連して,地域のさまざまな主体とともに,“連携”をキーワードに,住み続けられるまち,住んでいて安心のまちを推進していらっしゃる町長さんです! ヘルスケア以外の分野と合わせて,「住む人も訪れる人も『心和らぐ町』」をめざしているんだって!! そんな町長さんの思いはどこから出てきているのか? お話を聞いてきました!

いずれは町のために働きたい

赤ふん坊や太田町長,こんにちは! 森町って,新東名高速道路沿いのアクセスのいいところだけど,自然も多くて,とっても落ち着く町だね! そして,さすが静岡! ! お茶畑が広がってるね~☆ 町長はやっぱり,至上のお茶を追求し続けた結果,いろいろあって町長になったんでしょ?

太田いろいろありすぎでしょ(汗) .私は地元森町で生まれ育ったんですが,父も町長をしておりましたので,町政が非常に身近にあって,昔からいずれは町のために働きたいなと思っていました.サラリーマンをしていましたが,約15年前に町の合併の話が出たときに,町のために働くのは今ではないかと感じ,町議になりました.その後,2016年3月より,前町長勇退時に町長選に出馬し,現在に至ります.

坊やへ~,親子2代で町長!! 脈々と受け継がれるものって,いいよね~……ふんどしとか♪

太田坊やのお父さんも,ふんどし穿いてるの? というか,お父さんって,どんな人?

坊やほほう……これが自慢のお茶ですな.どれどれ……う~ん,すばらしいお点前で!!

太田……坊や,ごまかしたでしょ(笑)

坊や町長はこの町をどんな町にしたいと思ってるの?

太田森町の歴史は長く,「遠州の小京都」ともいわれ,町には国の無形文化財である舞楽が3つも伝わっていて,人が住みついて久しいところです.それだけ,恵まれた豊かな土地であり,また,郷土愛の強い人も多いということでしょう.受け継がれてきた自然や心の豊かさを,新東名高速の開通を機に,全国に知ってほしい,全国から訪れてほしいと考えています.住む人も訪れる人も心和らぐ町,心を洗われる町をめざしたいですね.

坊や了解,ボクもPRするね! 皆さん!! 森町に来れば,心もふんどしも洗われますよ~☆

太田……何か,余計なのが……(汗)

病院を中心に,医療・介護体制のあるべき姿を追求

坊や森町は今,医療や健康に関して,どんなことに取り組んでるの?

太田当町では,人口2万人弱の自治体には珍しく,単独で公立病院を設けています.在宅療養支援病院である,この森町病院を中心として,町内外の医療・介護体制のあるべき姿を追求し続けています.町外とは,中東遠二次医療圏内の高度急性期病院との病病連携,町内では,家庭医療クリニックの設置等による病診連携や,在宅療養にかかわる訪問看護などのサービスの多職種連携,そして「森町病院友の会」による地域住民との連携があります.病院の理解・支援と,住民自らの健康増進を目的に掲げる有志団体「森町病院友の会」の誕生と活動のおかげで,多職種カンファレンスなどの病院行事への住民の積極的な参加が実現しています.この規模の自治体で公立病院を維持するのは非常に大変なのですが,幸い議会も町民も理解を示してくださいますし,森町病院の中村昌樹院長も積極的に連携を推進してくださっているので,非常に心強いです.私は町長だった父を自宅で看取ったのですが,その際に,医師,看護師はじめ,在宅療養にかかわる多くの専門職の支えのありがたみと重要性を,身をもって感じました.病院も人も,すべて森町の自慢です! 坊やのお父さんはまだご健在ですよね?

坊やう~ん,おいしいお茶を飲むと,一句読みたくなりますなぁ……「キャラクター 設定むやみに 踏み込むな」(赤ふん 怒りの一句)

太田あ……ご,ごめん(汗)

日常生活へと戻りやすい健康づくり

坊やでは,森町はこれからどんな課題に取り組んでいきますか?

太田そうですね,在宅療養を推進するなかで,在宅の日常生活へと戻りやすい健康づくりの重要性をひしひしと感じましたので,健診受診率の向上など,予防にももっと力を入れていきたいと思っています.高齢者が多いためか,介護保険給付費も高いので,介護予防にも力を入れて,お年寄りの“お達者度”を上げたいと思っています.坊やのご家族は,みんなお達者ですか?

坊やこれはこれは,町の名産・次郎柿をふんだんに使った,次郎柿ようかんではないですか! どれどれ,う~ん,お茶との相性が抜群ですなぁ……「日が暮れる 今日は夜道に 気をつけて」(赤ふん 闇討ちの一句)

太田ご,ごめんごめん……そんなつもりじゃないのに(汗)

地域に根差した医療をめざして

取材の記念に太田町長と.あんまり覚えてないけど,ちょっとヤケドさせちゃったみたい!?
取材の記念に太田町長と.あんまり覚えてないけど,ちょっとヤケドさせちゃったみたい!?

坊やでは,町長が総合診療医にしてほしい,こうあってほしいと思うことを教えてください!!

太田そうですね,患者の,家族全員の,かかりつけ医となるべき総合診療医の先生には,とにかく困ったときに相談できる医師であってほしいと思います.当町で育成している家庭医が,都会もそうでしょうが地方でより強く求められてくることは,私自身患者家族としてかかわって,我が事として痛感した次第です.ぜひ,地域に根差した医療をめざしてほしいと思います.

坊やでは最後に,全国の読者の皆さんへ,メッセージをお願いします!

太田わが町は本当に,住んでいい町ですし,住んでいる人もいいです.高速道路ができて交通の面もよくなったので,まずはぜひ遊びに来てほしいですし,気に入っていただければ住んでほしいと思います.都会での心の疲れを癒しに,「心和らぐ町・森町」へ,ぜひお越しください! 坊やも,ぜひご家族と……アチチ!!!

坊やあ,ごめんなさーい,湯呑みをもつ手が滑っちゃって……太田町長,今日は忙しいなかありがとう! 次回は,京都府・宮津市の城﨑雅文市長にお話を聞いてきます! お楽しみに~☆☆☆

連携の主体と範囲,目的,対象を見直して,向かうべき方向性をスッキリはっきり一本化.
赤ふんウォッチ
森町病院(左)と家庭医療クリニック(右)の概観.道を挟んで向かいにあります☆

実際に,森町の医療・介護連携の中心となっている病院の様子を見てきました! 病院のいわゆる地域連携室に,病病・病診連携,入退院支援,医療福祉相談が一本化されていたよ.病棟の1つを地域包括ケア病棟にして,病院の隣には家庭医療クリニックを併設して,在宅で過ごす患者さんや家族を支援する体制が整っていました! 森町病院院長の中村先生は,外科医として病院に赴任して,いかに病院での急性期医療を充実させるかを最初は考えていたけど,地域にとってよい医療を考えるうえで,医療圏内の連携や在宅医療の推進を考えずに進めないと気づき,今ではフットワークの軽い連携にまい進してるんだって! ボクも,いかにふんどし人口を維持するかばかりを考えてたな~と,反省……してないけど☆

コラム 赤ふん坊やマネージャーの今回の地域志向アプローチのタネ 地域における連携・協働

地域医療の現場における連携は,さまざまなフェーズをもっています.院内の多職種連携,病診連携,住民や行政との連携,他分野との連携……それぞれ,対象も違えば,何をめざすのか,どのような関係性を築くのかも違います.何をもって「連携できた」「協働できた」と言えるのでしょうか?

このことを考えるにあたって参考になるのが,連携・協働の評価における3つの視点です().1つ目は,「患者および患者家族が評価する協調性」.例えば,Care Transitions Measure(CTM)というスケール1)では,入退院,服薬などに関して,受けた指導やケアを当事者が評価するものとなっています.2つ目は,「ケア提供者が評価する協調性」.例えば,Collaboration and Satisfaction about Care Decisions(CSACD)というスケール2)では,治療方針の意思決定の際に医療専門職が分担,協力,協調できたかに関して,ケアの提供者が評価するものとなっています.3つ目は,「ケアシステム提供者が評価する協調性」.例えば,Medical Home Improvement(MHI)というスケール3)では,役割分担,家族との関係などに関して,ケアをコーディネートする立場から評価するものとなっています.

森町の連携でも,病病連携,病診連携,地域包括ケアにおける多職種連携,住民や行政との連携と,さまざまな連携が併存したように,連携が進むほど,多くの主体がかかわります.森町のようにうまくいっている地域だといいですが,そうでない場合は,連携の目的や方向性が不鮮明になることがありますので,そんなときはこの3つの視点で連携の意味を再考すると,うまく整理できることもあると思います!

図 ケアシステムの評価視点による分類
文 献
  1. Coleman EA, et al:The association between care co-ordination and emergency department use in older managed care enrollees. Int J Integr Care, 2:1-11, 2002
  2. Baggs JG:Development of an instrument to measure collaboration and satisfaction about care decisions. J Adv Nurs, 20:176-182, 1994
  3. Cooley WC, et al:The Medical Home Index: development and validation of a new practice-level measure of implementation of the Medical Home model. Ambul Pediatr, 3:173-180, 2003
太田康雄(Yasuo Ota)
太田康雄町長

静岡県森町・町長
昭和34年4月森町に生まれ,地元の町立森小学校,町立森中学校,静岡県立掛川西高等学校を卒業.明治大学商学部を卒業し,磐田信用金庫に勤務する.平成17年4月森町議会議員,平成28年3月より森町長.

井階友貴(Tomoki Ikai)

福井大学医学部地域プライマリケア講座 教授(高浜町国民健康保険和田診療所/JCHO若狭高浜病院) 福井県高浜町マスコットキャラクター「赤ふん坊や」健康部門マネージャー.着ぐ○み片手に地域主体の健康まちづくりに奮闘する,マスコミも認める(!?)“まちづくり系医師”.