なくてはならない,自立できる町へ
赤ふん坊ややってきました北海道♪ 村瀨町長,こんにちは! 広尾町って,十勝平野の南端にある海沿いの町だから,限りなく続く牧場も,雄大な太平洋もある,いいとこどりの町だね! 町長はやっぱり,仕事よりも牛とのびのび過ごしたい一心で,十勝は広尾町に来たんでしょ?
村瀨ちゃんと町長として頑張ってます!(゚Д゚)私は十勝の中心地・帯広の出身で,昭和45(1970)年に広尾町役場に入職してから,ずっと役場で町に仕えてきました.総務課長,助役を経て,平成20年より町長として町にかかわっています.私が町長になったときは,町村合併の話が落ち着いたときで,広尾町は周辺自治体との合併を選ばず,自立していくことになったところでした.自立していくためにはどうすればいいのかを考えたとき,町民が行政に頼るのではなく,町民の姿勢を「何でもやってくれる」から「自分たちがやる」へと変えるまちづくりが必要と考えて,これまで取り組んでいます.坊やも言ってくれたように,広尾は「十勝」という農業・酪農のブランド地域にありながら,歴史的に港・漁業の町でもあります.農業王国十勝唯一の海の玄関「十勝港」は,重要港湾に指定され,年間輸出入額は100億円以上です.恵まれた資源を生かしながら,広尾が「なくてはならない町」になって自立できるよう,猪突猛進で頑張っています.
坊やなるほど~,牛だけに,猪突モ~進ね!! こりゃ一本取られましたわい☆(>∀<)
村瀨話,聞いてた…?(汗)
坊やじゃあ,町長はこの町をどんな町にしたいと思ってるの?
村瀨北海道は本当に広大で,過疎の自治体も非常に多く,広尾も例に漏れずに過疎の町です.住み続けられる町であるためには,産業や仕事はもちろんのこと,医療や福祉,子育てなどの生活の保障が非常に重要です.広尾町はサンタクロースの故郷ノルウェーが認めた,国外初・日本で唯一のサンタランドの町でもあります.サンタクロースの理念が,「愛と平和」「感謝と奉仕」「夢・希望」なんです.これって,医療や福祉,子育てそのものですよね.暮らしに直結する保証は行政が担うべきだし,しっかりとさせることでもっと魅力的な町にもなれると思っています.
坊やモ~っと魅力的に…! また出た~☆☆☆
村瀨無理矢理でしょ(^_^;
広尾町の人間としての暮らしを妨げない
坊や広尾町は,医療や健康に関して,どんなことに取り組んでるの?
村瀨社会保障の充実のために,国保病院を独法化して帯広市内の病院との連携・地域医療機能を強化したり,多職種連携を組織化して入退院のルールづくりなどに専門職が参加して積極的に取り組んだりしていますが,地域主体の介護予防事業が進んでいると感じています.いきいき百歳体操サポーターや介護予防ボランティアをのべ250名以上養成し,住民主体にサロンなどで介護予防の取り組みを推進しています.住民参加の基盤ができたのは,もちろん行政職員の力も大きいですが,もともと広尾町にはボランティアの土壌があり,やりがいを感じながらボランティアに打ち込んでいただいていることも大きな成功要因です.歩いて通える場所にサロンをつくっていること,顔なじみの集まりを推進していること,そして,漁業は生涯の仕事として高齢になってもなるべく長く続けていただくこと.このような,広尾町の人間としての暮らしを妨げないことが,要介護認定率低下(図参照)の要因なのかもしれません.
坊やなるほど,「モ~介護は不要!!」ってことですね☆ ぎゃふん!!
村瀨言いたいだけでしょ…(涙)
地域包括ケアを,まちづくりの柱に
坊やでは,広尾町はこれからどんな課題に取り組んでいきますか?
村瀨そうですね,2019年4月から国保病院を独法化して総合診療科を設立しているのですが,それもこれも,包括的なケアを推進し,当たり前の生活を地域でできるだけ継続してもらうためのものなんです.地域医療機能を確保し,退院後のケアを整える.それも,人手が多くない地域で行う必要がある.そんなフィールドに必要なのは総合診療医であると考え,都市部の病院や大学と連携しながら,総合診療医の育成に乗り出しています.地域包括ケアを,もう1つのまちづくりの柱にしたいんです.
坊や……(ニヤニヤ)
村瀨はいはい,「モ~1つ」って言いましたよ!(諦)
「いつでも相談できる病院」を突き詰める
坊やでは,町長が総合診療医にしてほしい,こうあってほしいと思うことを教えてください!!
村瀨そうですね,「かかりつけ」というとどちらかというと診療所のイメージが強いかもしれませんが,当町のように町のシンボルとなっている病院がかかりつけ機能を担うべきであるという状況も存在します.地域に根ざしたかかりつけ病院として,いつでも相談できる病院を突き詰めてくださることを,切に願っています.
坊やでは最後に,全国の読者の皆さんへ,メッセージをお願いします!
村瀨総合診療医の皆さんには,地域包括ケアの中心的役割を担ってほしいと期待しています.住民の安心や転出者の減少にも大きな影響を与えるでしょう.広尾町には,病院に総合診療科を設ける,大学とも連携した十勝地域医療研究所を設けるなど,皆さんの活躍されるフィールドを十二分に用意してございます.海と山の美味しいものが両方ありますし,サーフィンや釣りなど,楽しみも多くございます.ですので……
坊やモ~広尾に来るっきゃない!! ってことですね!!? 決まりました,決め台詞~☆
村瀨皆さん,広尾町は,牛だけじゃないですからね……(T-T)
坊や村瀨町長,今日はお忙しいなかありがとうございました! 次回は,大分県・杵築市の永松悟市長にお話を聞いてきます! お楽しみに~☆☆☆
実際に,暮らしに溶け込んでいるという漁業の様子を見てきました☆ 確かに高齢の方も現役で船に乗ったり作業に取り組んだりしていました.話を聞くと,若い者にも年寄りにも,年に見合った仕事があるのだとか.シシャモの他にも,昆布をとって干している方や,道具の手入れをしている方,卸しや販売にかかわる方,お話をしに集まっている方などがいて,確かに生活のなかに漁業が当たり前のようにありました.シシャモの水揚げ日本一や,重要港湾をもつ日本唯一の町村という誇りも,漁業に携わる方や町民皆さんを元気づけている,そんな気がしました.何気ない日常が介護予防だなんて,ステキだなあ….きっと,何気なくはいている赤ふんも,介護予防なんだろうねぇ! !
日本の非常に重大な案件となっている,高齢化の急激な進行などによる介護需要の急増.その対策として「介護予防の推進」が叫ばれて久しく,全国各地でさまざまな取り組みが実行されています.今回お邪魔した広尾町でも,住民主体に介護予防の取り組みが展開されていました.図に示すとおり,広尾町では要介護認定率が漸減したという成果を出されています.一般に「要介護認定率」や「介護給付費」を介護予防事業の評価指標として用いることは多いように感じますが,一方で,「啓発により住民が介護保険を使い渋っただけでは?」という議論も絶えません.では果たして,全国で取り組まれている介護予防事業は何を以て「効果があった」と考えればよいのでしょうか.
平成28年度厚生労働省・地域支援事業の実施状況および評価指標等に関する調査研究事業報告書1)によると,介護予防事業の最終アウトカム項目としては,① 健康寿命の延伸,② 住み慣れた地域・居宅での自立した生活の維持・継続,③ 生きがいと尊厳の保持・向上の3つを提言しており,それぞれの評価の視点と具体的な評価指標を提案しています(表).要介護認定率はこのうち,① 健康寿命の延伸の指標としてあげられており,一般的に評価指標の検証は,経時的変化を同一規模自治体/都道府県内自治体/全国平均などとの比較のなかで考察するとされており,広尾町の評価がそれに則っていることがわかります.
しかしこれらの指標,ご覧のとおり本当に幅広く,すべてを改善させるのはなかなか困難なことのように思います.逆に言うと,各市町村・地域の状況を熟考し,それぞれの地域にふさわしい評価指標を選択して対策をとっていくことが望まれるのでしょう.地域のメンバーが対等な関係を築きながら,何が問題で,どのようなことに取り組んで,どの指標を改善させるのかを話し合えることが理想的と感じます.皆さんの地域にふさわしい指標は,何ですか?
北海道広尾町・町長
昭和26年8月17日,北海道帯広市生まれ.
北海道帯広農業高等学校卒業後,昭和45年,広尾町役場奉職.港湾課長,企画情報課長,総務課長を経て,平成16年から助役(現在の副町長).平成20年4月に広尾町長に初当選し,現在3期目を務める.平成31年4月,広尾町国民健康保険病院を北海道内の公立病院では初となる地方独立行政法人へ移行させ,町民が安心して暮らし続けていくことができるよう地域医療の再構築に取り組んでいる.