最近は,診断推論・臨床推論の考え方を取り入れた診断学の教科書が増え,筆者の医学生・研修医時代に比べ,診療所や病院の一般(総合)外来における外来研修の学習環境は格段に充実したと言えよう.もちろん,外来研修は診断だけが論点ではなく,特に後期研修では,患者の文脈や地域を念頭にマネージメント能力を修得することが求められる.一方,卒前教育や初期研修においては,まず診断を主眼に症例を捉えることが基本であろう.その点,医学生・研修医の方々に接して思うことは,適切な鑑別診断の想起と絞り込みが不十分なことである.
そもそも,診療所や病院の一般外来においては,鑑別診断として想起していない診断名を診断することは,原則,困難である.ベテランの医師は,鑑別診断をひとつひとつ分析的にあげるというよりも,直感的に多くの臨床パターンを思い浮かべつつ,流れるように診断をしている(ヒューリスティック).つまり,診療所や病院の一般外来における診断では,主訴に加え病歴や症状を+α情報として考慮し,頻度あるいは緊急性・重要度の高い組み合わせで捉えることができる,経験知ともいうべき能力をもつことが重要であると考えられる.筆者は,経験で培われると考えられるこの能力を,医学生・研修医が効率よく修得するための1つの鍵は,「主訴に加えて何を+αで捉えるか」を明確にすることであると考えている.そこで今回,主訴に+αの情報を加え診断に活かすことを主眼に,「主訴+αで捉える診断学」という特集を企画した.
鑑別診断の想起のために知っておきたい「主訴と+α情報の組合せ」と,次の一手となる診察のコツを,症例とともに具体的に解説します.先行症状や家族歴,薬剤歴など手がかりとなる情報の集め方・活かし方が満載!
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