「読影手順は?」「どこに異常があるの?」「所見の正しい表現は?」など読影の基本の悩みを解決!手順と解剖をふまえた簡潔・丁寧な解説で,所見と鑑別が面白いほどわかる!症例問題で理解度チェックもできる!
−後略−
研修医の方々が胸部画像の医学書を手に取ると,最初の数十ページで挫折してしまうか,うたた寝してしまうかのどちらかです.その理由を考えてみましたが,おそらくどの書籍もマニアックで能書きが長いからだと思います.私みたいに呼吸器内科にどっぷり漬かっている人間にとってはそういう堅苦しい辞典みたいな医学書の方が満足するわけですが,初学者が胸部画像の最初の1冊としてそういう本を選んでしまうと本棚のインテリアになってしまいます.ヘタすりゃホコリをかぶってインテリア以下の存在になることだって….胸部X線の歴史や胸部CT検査の原理なんて,今の時代インターネットで検索すればすぐにわかります.私たちが知りたいのは,決して検索することができない,実臨床に直結する臨床医の読影ノウハウなのです.
この本は,放射線科医ではなく呼吸器内科医が1人で書き上げたものです.読み進めていくと,少なくとも初学者や臨床医がすっ飛ばしても問題ないだろうというポイントをうまく削ぎ落としていることに気づきました.そして次第に,なぜ私が研修医のときにこの本がなかったのか,ジェラシーすら感じはじめました.
例えば,「読影をしているとき,私は目線をこのように動かしている」といったメッセージが書かれています.いいですか,「こういう順序で読影しましょう」ではダメなのです.「私はこういう目線の動きで読影している」.この書き方こそがこの本の長所を端的に表しています.教育上手な医師というのは,まず最初に初学者の目線に立って考えることができる.これができる医師は非常に少ない.この本を読む限り,中島先生は間違いなく初学者の目線に立てるタイプの指導医です.若者たちが何を疑問に感じており何を知りたいのか,熟知している雰囲気が文章にまざまざと表れているのです.もちろん,筆者ご本人は謙遜されるでしょうが.
初学者向けということは,指導医や呼吸器専門医レベルの医師にはこの本は不要でしょうか?いいえ,この本に書かれている教育法をそのまま指導に応用してください.いつの日か,あなたも名指導医と呼ばれる日が来るかもしれませんよ.
倉原 優(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター 内科)
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