実験医学 2013年12月号 Vol.31 No.19

感染症 “死の病原体”に前線で挑むサイエンス

  • 嘉糠洋陸/企画
  • 2013年11月20日発行
  • B5判
  • 137ページ
  • ISBN 978-4-7581-0122-6
  • 2,200(本体2,000円+税)
  • 在庫:なし
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《企画者のことば》

新型インフルエンザや中東呼吸器症候群(MERS),重症熱性血小板減少症候群(SFTS)のように,致死性の高い病原体による感染症の勃発《アウトブレイク》は,グローバル化が進んだこの世界においてもはや珍しい事象ではなくなった.それら感染症に対するワクチンや治療薬の開発が進められる一方で,生命科学の観点から興味深い知見も続々と提供されている.本特集では,新興・再興感染症の原因となる高病原性病原体について,幅広い角度からの専門家が一堂に会し,「死の病原体の最前線」を概説する.

日々のニュースを騒がせ,常にヒトに隣り合わせている脅威「感染症」.その最前線に立つ研究者たちに,疫学から感染メカニズム,予防・治療法まで注目のトピックを,研究への情熱を含め熱く紹介いただきました.

目次

特集

感染症 “死の病原体”に前線で挑むサイエンス
企画/嘉糠洋陸
序にかえて−感染症,あるいは死について【嘉糠洋陸】
新型インフルエンザや中東呼吸器症候群(MERS),重症熱性血小板減少症候群(SFTS)のように,致死性の高い病原体による感染症の勃発《アウトブレイク》は,グローバル化が進んだこの世界においてもはや珍しい事象ではなくなった.それら感染症に対するワクチンや治療薬の開発が進められる一方で,生命科学の観点から興味深い知見も続々と提供されている.本特集では,新興・再興感染症の原因となる高病原性病原体について,幅広い角度からの専門家が一堂に会し,「死の病原体の最前線」を概説する.
鳥インフルエンザウイルスパンデミックの恐怖【渡辺登喜子/河岡義裕】
2013年春,中国においてヒトへの感染例が報告されたH7N9鳥インフルエンザウイルス(以後,“H7N9ウイルス”とよぶ)は,わずか4カ月の間に135人ものヒトに感染し,44人の犠牲者を出した.中国の患者から分離されたH7N9ウイルスの性状解析を行った結果,本ウイルスが哺乳類に適応しつつあることが示された.もしもH7N9ウイルスが,ウイルス遺伝子の交雑やアミノ酸変異によって,これまでよりさらにヒトに感染しやすく,またヒト−ヒト間で効率よく伝播する能力を獲得すれば,H7N9ウイルスが世界的大流行(パンデミック)を起こす危険性がある.本稿では,最新のH7N9研究から得られた知見について紹介する.
ダニ媒介性新興感染症SFTS【下島昌幸/西條政幸】
重症熱性血小板減少症候群SFTSは新種のブニヤウイルス(SFTSウイルス)による感染症で,致死率は約12%,主にマダニによって媒介される.これまで中国でのみ報告があったが,今年に入り日本および韓国でも本感染症が発生したことが確認された.日本国内では8月末までにすでに合計約40名が罹患している.本感染症の発見経緯や診断法,今後の課題などについて述べる.
フィロウイルスの生態【梶原将大/小川寛人/高田礼人】
エボラおよびマールブルグウイルスはヒトを含む霊長類に重篤な出血熱をひき起こす.フィロウイルスが発見されてから約半世紀が経とうとしているが,その自然宿主,分布域およびヒトへの伝播経路など依然として不明な点が多い.しかし近年,コウモリからの感染性ウイルスの分離,ヨーロッパにおける新規フィロウイルスの発見など,フィロウイルスの生態に関する新しい知見が得られてきた.本稿では,それら最新の情報とともに,われわれがコウモリや野生霊長類を対象に行っている研究についても紹介したい.
巧みな寄生戦略をもつマラリア原虫への挑戦【石野智子】
マラリアは現在でも,とりわけ貧困な地域の乳幼児を中心に多くの死者を出す脅威的な感染症の1つであり,世界が一丸となって解決すべき問題である.世界中で研究が行われているものの未だ実用化に至った予防ワクチンはない.本稿では,きわめて洗練されたマラリア原虫の寄生戦略と,そのベールを外すために研究者たちが重ねてきた挑戦を記載する.さらに,マラリア撲滅につながる防御法開発に向けて,期待されている2つのステージについての現状を紹介する.
バンパイアが運ぶ感染症【青沼宏佳】
感染症には,吸血節足動物が病原体を運ぶものがある.このような節足動物を「ベクター」という.節足動物媒介感染症は,これらの生き物がいなければ感染は拡がらない.では,ベクターとはどのような生き物なのだろうか?ベクターはどのようにして病原体を運ぶのだろうか?そして,どうすればこれらのベクターによる感染症拡大を阻止できるのだろうか?本稿では,ヒトと感染症を結びつけているベクターに焦点を当てる.
ワクチンアジュバント:パンデミックにいかに備えるか【青枝大貴/石井 健】
近年の自然免疫学研究の進展によってワクチンアジュバントの作用機序が徐々に明らかとなってきている.しかしながら,現在臨床使用されているアジュバントの作用機序には未だ不明な部分が多く,ワクチン接種後に報告される健康被害についての原因究明は困難である.今後もサーバリックスに使用されているAS04をはじめとして新しいアジュバントの導入は増加すると考えられるが,より安全で効果の高いワクチンの開発および審査には産学官の連携によるワクチン/アジュバントの科学的研究が不可欠である.
特別寄稿−Be the First One to Know【進藤奈邦子】

Update Review

血管・リンパ管の形成におけるTGF-βファミリーシグナルの役割【渡部徹郎】

トピックス

カレントトピックス
Sirt1は視床下部において哺乳類の老化を遅延し寿命を延長させる【佐藤亜希子/今井眞一郎】
神経活動の遺伝学的な制御とコマンドニューロン【吉原基二郎】
肥満に伴う腸内細菌叢の変化が肝がんの発症を促進する【吉本 真/大谷直子/原 英二】
実験用マウス系統の起源【高田豊行/城石俊彦】

連載

創発生物学への誘い−神秘のベールに隠された生命らしさに挑む
自己組織化の3つのメカニズム:自己集合,自己パターン形成,自己駆動型形態形成【笹井芳樹】
クローズアップ実験法
培養上清中のエクソソームの単離法とRNA抽出法のコツ【小坂展慶/落谷孝広】
帰ってきたプロフェッショナル根性論
【最終回】脳内のデータベースを充実させる【島岡 要/大隅典子】
教えて!エコ実験−工夫&節約のメリハリ研究術
エコプラスミド実験 その2【村田茂穂】
ラボレポート −独立編−
3本の矢:研究費,研究員,そして研究 −The Johns Hopkins University School of Medicine【井上尊生】
Opinion −研究の現場から
対話の向こうに見えるもの【岡部祥太】

関連情報

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  • 【本書名】実験医学:感染症 “死の病原体”に前線で挑むサイエンス
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