今、総合診療医には、専門医制度の導入と相まって、大きな追い風が吹いています。その原動力となっているのは、社会のニーズです。日本の医療を考える際、一番大きい課題は急速に進む高齢化で、いわゆる2025 年問題です。これに対応するためには、高齢者がたくさんの健康問題を抱えながら地域で暮らしていける社会を築いていかなければならない。そのときには、地域で、暮らしのなかで医療を支える、つまり「地域医療」を実践できる医師の存在が必要不可欠であり、総合診療医が非常に重要な役割を担うことが期待されています。
よく総合診療と言うと、鑑別診断とか、外来での振り分けというふうに語られることが多いのですが、本来持つべき能力は守備範囲の広さであり、病院を越えて広がっていくものです。診療所だけでなく、病院だけでなく、どこででも患者さんや地域に合わせて幅広く目配りができる、そして必要な場合に臓器別専門医とうまく連携がとれる、そういう医師が求められています。そしてその守備範囲の広さは、医療をも越えて、保健予防、福祉の領域にも広がっていきます。様々な多職種との連携が必要ですから、リーダーシップやコミュニケーションの能力が求められます。それから、社会の動き、介護などの制度のこともちゃんと理解している必要があります。そして、これらの領域について常に知識をアップデートしていく姿勢も求められています。
このような幅広い領域をバランスよく修得できてこそ初めて、ちゃんとした総合診療が提供できると思っています。その学習とアップデートのためのツールとして、この『Gノート』を役立てていただきたいと思います。本誌が、地域で総合診療を実践する多くの方にご活用いただけることを願っています。
※レジデントノート2014年3月号に前野先生のインタビュー「新しい専門医制度と総合診療専門医」を掲載しています.よろしければこちらもご覧ください.